「AI国税」脱税指南を看破  不正申告企業に億単位の追徴も 経理書類を学習、精度高く
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250302&ng=DGKKZO87062170R00C25A3CM0000
【コメント】
  • 今朝の朝刊も、トランプ氏とゼレンスキー氏の口論のさらなる詳細の報道が多かったが、社会面に「AIを使用した脱税摘発」の記事が掲載されていたので紹介します。
  • 昔は、架空の領収書を切り出し架空経費を計上する脱税が主流であったようですが、最近はダミー企業の口座を駆使し取引実態を巧妙に取り繕う事例が多いそうです。
  • 国税当局は最近AIを駆使し、過去の申告や調査資料などを学習したAIが対象企業の経理書類をレビューし脱税の兆候を見極める調査手法が発達しているそうです。
  • 23年度には、約2,000億円の追徴課税が中小法人に対し行われたそうですが、その内約8割がAI判定によるものだったそうです。
  • 企業数が増加傾向にある一方国税は人手不足で、税務調査の効率化をはかるために導入したAIが相当な効果をあげているようです。
  • 確定申告の時期ですが、正しい申告が大切です!
【記事概要】
  • 税逃れを図る企業と国税当局の攻防が激しくなっている。架空の領収書を切り出し脱税を指南する「B勘屋」が令和の今も暗躍。国税当局は申告書類を網羅的に分析する人工知能(AI)を導入し調査の精度を上げた。現時点の軍配は国税のAIに上がり、不正な申告が相次ぎ露見している。手を染めた企業には億単位の追徴が待つ。
  • B勘屋は、企業の税逃れを手伝い報酬を得る業者らを指す隠語だ。国税当局内で、表向きは真正な経理帳簿を「A勘定」、脱税など不正に悪用するために作られた裏帳簿を「B勘定」と呼んでいたことが由来の一つとされる。
  • 最盛期はバブル期の1980年代。暴騰した土地の取引で多額の利益が生じ、税金対策として架空経費の計上を図る企業が増えた。「B勘屋は宛名を空欄にした領収書の束を抱え、不動産業者に売り歩いていた」。当時を知る関係者は証言する。
  • 1989年にはB勘屋を利用した不動産会社が、当時の史上最高額となる37億円の法人税を脱税した事件も発覚した。ニセ領収書への国税当局の監視は厳しくなり、B勘屋の姿も消えたかのようにみえた。
  • しかし近年の国税当局の税務調査により、手法を変遷させながらうごめいている一端が浮かび上がった。
  • 大きく変わったのは税逃れのスキームだ。バブル期は偽の領収書を振り出すだけで、資金移動を伴わない単純な偽装工作が主流だった。近年はダミー企業の口座を駆使するなどして、取引実態を巧妙に取り繕う事例が多い。
  • SNSが普及するが、調査を逃れるためか集客の手法はアナログな「人づて」のままという。勧誘の現場は、好況の経営者らが集まるサロンや異業種交流会などが中心。幅広い業種との取引が不自然ではない「コンサルタント」を名乗るB勘屋が多いとされる。
  • 巧妙化する税逃れに対して、国税当局が新たな「宝刀」として活用しているのがAIだ。22年度から主に中小法人の税務調査に導入過去の申告や調査資料などを学習したAIが経理書類を分析し、「申告漏れの可能性が高い納税者」を判定する。
  • 国税庁によると、導入した22事務年度(23年6月までの1年間)の中小法人への追徴税額は2113億円となり、この統計の公表が始まった10事務年度以降で最多となった。23事務年度も2110億円を追徴し、うち8割がAIが判定した対象からの追徴だった。
  • AIによる調査精度の向上は限られたマンパワーを補う要にもなる。法人数が増える一方、国税職員が実地調査する割合は下がった。実地調査件数を対象法人数で割った「実調率」は1970年ごろまで年10%を超えていたが近年は1~2%前後で推移する。
  • 国税関係者は「追徴による打撃だけでなく取引先に調査が及んで信頼も失い、そのまま事業をたたむケースもある」と語る。現代のB勘屋によるスキームも、AIであれば容易に看破できる可能性が高いという。
  • 近年の地価高騰はバブル期とも重なり、不動産業界を中心に脱税への誘惑が強まっているという見方がある。AIの目を欺く税逃れの手法が現れる可能性もある。国税幹部は「最新のスキームにも対抗できるよう、学習量を増やしてAIの能力を高めていく」と語った。