【コメント】
  • AIの加速度的な普及期待と共にデジタル化が子供の教育に及ぼす弊害の懸念を表明した記事です。
  • デジタル教科書を正式な教科書として認定する方向で検討がなされていますが、教育方法によっては思考力が深まらない人間ができてしまう恐れがあるということです。
  • デジタル先進国のスウェーデンの教育は現在「脱デジタル」に舵を切り、思考力の醸成に重きを置いていくとのことです。
  • 日本はこれまでも、思考力醸成というよりは知識の詰め込み教育に力点が置かれてきており、世界大学ランキングなどでみられるような日本の教育水準の低下に表れていると感じます。
  • 私も、ここ40年のパソコン利用の日常化により、漢字の判別はできますが筆記できない人間になってしまっています笑
【記事概要】
  • かつて英労働党のブレア氏が首相就任演説で「教育、教育、教育」と叫んだのは有名な話だが、「国家100年の計」を考えるとき、教育のあり方が最重要課題であることは言うまでもない。
  • 文部科学省の中央教育審議会の作業部会が、デジタル教科書を紙の教科書と同様に正式な教科書と位置づける中間報告をまとめた。このような教育のデジタル化で、日本の将来を担う深い思考力を持つ人材が育つのだろうか。
  • その中間報告によるとデジタル教科書推進の根拠は次の3点だ。(1)ICT(情報通信技術)が生活に欠かせない社会・経済インフラとなった(2)1人1台の端末保有が実現するなど学校のICT環境が飛躍的に向上した(3)「画像などの活用で学習内容がよくわかる」といったICT機器活用の効果に関するデータが蓄積されてきた――である。
  • 人工知能(AI)が、あっという間に日常生活に入り込んできたことに表れているように、社会のデジタル化は想定外のスピードで進んでいる。デジタル機器を使いこなす技術の習得は必要だろう。
  • ただ、便利だとか効率的だからといって教育現場でデジタル機器が優先されると、児童や生徒が活字を読んだり、手書きしたりする機会は確実に減る。
  • デジタル先進国といわれるスウェーデンは2022年の政権交代以降、紙の教科書に重点を置く「脱デジタル化」に転換した。思考力が深まらないなどデジタル化の弊害が分かったからだという。
  • AIの研究者である新井紀子教授(国立情報学研究所)は自身の研究を踏まえて、「深く考える力は読解力によって養われる」「教育のあり方を読書や音読による読解力を土台にプログラムすべきだ」と著書「AI VS 教科書が読めない子どもたち」で説いている。
  • 日本を代表する経済学者だった森嶋通夫教授(大阪大学、ロンドン大学)は、1990年代末に2050年の日本の姿を予測している。それによると「日本の学校教育は知識の詰め込み主義のもとで思考能力を欠いた人を養成している。こうした人々が社会の中枢を占める日本の将来は暗い」(「なぜ日本は没落するか」)。
  • 教育のデジタル化が進めば教授の懸念が一段と現実味を増す。