高額療養費、引き上げ見送り 首相表明 負担限度額、秋までに方針決定
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250308&ng=DGKKZO87213190Y5A300C2MM8000
医療制度改革に逆風 高額療養費引き上げ後退 議論拙速、膨らむ現役負担
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250308&ng=DGKKZO87212980X00C25A3EA2000
【コメント】
  • 8月に予定されていた高額医療費制度の負担限度額引き上げが参議院での反対により見送られることになりました。
  • 患者団体の意見を聞くことなく決めてしまったことに問題がありますが、そもそもがんなど長期間高額医療を必要としている患者の負担を軽々に上げてしまうことに問題があると感じます。
  • 任意の高額医療保険などに加入できる患者は救われ、加入する余力のない患者は置き去りにされる制度改革にはもっと議論を重ねる必要があります。
  • 将来に向け健康保険制度が成り立たなくなる可能性がありますが、高額医療費制度から手を付けるという順番そのものに問題があると感じます。まず保険適用から除く事項や効率化推進を行いコスト削減を実施する事項などを決め、高額医療費制度は最後の検討項目と感じます。
  • 参議院で予算案が否決されることはかなり前代未聞です。高額医療費制度の負担限度額引き上げ案を修正し衆議院へ差し戻した後、再度衆議院で予算案を審議/可決する必要があります。二院制が正常に機能している証左だと感じます。
  • 与野党ともに夏の参議院選挙対策で本件を修正したフシが見え隠れしますが、高額医療費制度だけでなくあらゆる法案に対し、国会議員は打算ではなく真摯に議論を重ねるべきと強く思います。
【記事概要】
  • 石破茂首相が7日、医療費の患者支払いを一定に抑える高額療養費制度の負担限度額の引き上げなどの実施を見送ると表明した。首相官邸で患者団体の代表らと面会後、記者団に語った。秋までに改めて方針を決める。
  • 議論開始から1カ月あまりで結論を出し、患者団体の意見を聞く機会がなかった検討プロセスについて「丁寧さを欠いたとの指摘を政府として重く受け止めなければならない」と話した。立民など野党は引き上げ凍結を求め、与党内にも慎重論がでていた。自民党の松山政司参院幹事長は7日、党本部に森山氏を訪ね「国民の理解が十分に得られていない。このままでは持たない」と伝えた。引き上げ凍結がなければ参院選で苦境に立つとの認識を伝達した。
  • 制度は医療費の1カ月あたりの患者負担に上限を設ける仕組みだ。3段階のうち最初の引き上げを8月に予定していた。長期治療が必要な患者の負担を軽減する「多数回該当」について限度額引き上げを見送る措置も決め、衆院で関連予算を増額修正した。
  • 引き上げの凍結に伴い、25年度予算案を参院で再修正する可能性がある。その場合、参院での可決後、衆院で改めて議決する手続きが必要になる。