さまよう円相場 米関税の二面性読み切れず、投機マネーは臨戦態勢
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250326&ng=DGKKZO87586880V20C25A3DTC000
【コメント】
  • 今朝は、ドル円相場の見通しに関する記事が掲載されていました。
  • 現状の150円前後から、更に円安に進めば輸入物価の高騰で日本の消費者はますますインフレを強く実感することになります。一方で相対的に輸出が多い大企業の業績改善期待により、日経平均株価は再度40,000円をトライしに行くなど投資環境は改善するものと思われます。更に円高に振れれば円安の逆の現象が現れます。
  • 記事では、今後の日銀の利上げとFRB(米連邦準備理事会)の利下げにより日米金利差が縮小し相対的にドル安円高方向に向かうとしています。「脆弱な円高」と表現している理由は、全体感として日本企業の業績が悪化し株価低迷を招くことが予想されるからです。
  • この記事は日米金利差をベースに今後円高ドル安の方向に動くかもしれないとの論調ですが、多少の金利差縮小だけで円高ドル安の流れになるとは考えにくいのではないかと感じます。以前にもここで記載した通り、ドル円のキャッシュフローを見ると、デジタル赤字や、対外直接投資のリターンが日本国内に還流されない(海外の現地で再投資される)、新NISAの強い海外株投資熱などを鑑みるに、現状では資金が円に還流してくることは考えにくい(円高にはなりにくい)と思いますが、いかがでしょうか?(投資は自己責任で!)
【記事概要】
  • 円相場がさまよっている。25日の東京市場では一時、1ドル=151円近くまで円安・ドル高が進んだが、トランプ米政権が関税の強化に本腰を入れた2月初旬以降、方向感の定まらない値動きが続く。
  • トランプ米大統領は24日、日本の対米輸出に大きな影響を及ぼす輸入自動車への追加関税を「数日中に発表する」との考えを示した。ただ一方で、貿易相手国に同水準の関税を課す「相互関税」については、猶予措置を置く可能性も示唆した。市場は関税政策の緩和を材料視し、とりあえずドルの買い戻しを先行させたが、再び強硬姿勢に転じることへの警戒は薄れていない。
  • 市場がトランプ関税に対する判断に惑うのは、ドル買い、ドル売り双方の材料になり得るからだ。みずほ銀行の唐鎌大輔氏は「トランプ関税は短期的なインフレ圧力と中長期的なデフレ圧力の両面を持っている」とみる。輸入関税の強化で米国内の物価が上がりやすくなる一方、個人消費にブレーキをかける物価高は米景気停滞によるデフレ誘発リスクも抱えている。
  • しかもトランプ政策は二転三転することが少なくない。市場でも「相互関税の詳細を打ち出す見通しとされている4月2日を過ぎても、円相場の方向感は不透明なままかもしれない」(唐鎌氏)といった見方がくすぶる。
  • こうした市場の空気を敏感に映すのが、短期売買を手がける投機マネーの行動だ。みずほ銀行が米商品先物取引委員会(CFTC)のデータから算出したヘッジファンドなどの主要8通貨に対するドルの売買動向をみると、2月初旬まで300億ドルを超えていた買い持ちが3月半ばまでに解消し、小幅な売り持ちに転じた。投機マネーもドル買い、ドル売り双方に動ける臨戦態勢を整えた状態だ。
  • 市場の動揺を招いたトランプ関税は、すでに相互関税を各国一律に適用する強硬策から、国ごとに猶予措置を置く緩和策まで、手持ちの政策カードが市場にさらされており、サプライズ感も色あせつつある。1期目と同様に、投機マネーによる円相場への反応は次第に限定され、値動きも縮んでいく可能性が高い。
  • いまのところ市場は臨戦態勢を敷いたままだが、いずれ追加利上げを志向する日銀と利下げ再開をにらむFRBが導く日米金利差の縮小という、ファンダメンタルズに沿った「脆弱な円高」シナリオに収斂(しゅうれん)されていくのではないか。