統計改革、利上げの思わぬ援軍に 過小評価だったIT投資
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB026J80S5A400C2000000/
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【コメント】
- 今朝はトランプ関税関連は一時お休みします。来週は更に活況を呈すると予想されます!(笑)
- 今朝は、意外とアナログなGDPの算出方法の記事がありましたので紹介します。
- 2025年度からGDP算出の際にピックアップする法人を広げることが検討されているそうです。
- それに先駆け東大の教授が20年度のGDPを試算したところ、20年度のGDPは17.5兆円膨らむとのことです。小さな法人をこまめに加算した結果とのことです。
- 20年度のGDPが膨らんだからといっても、同一方法で19年度以前、あるいは21年度以降を再算出する必要があるため、GDP伸長率がどうなる子はわかりません。ただ20年度の統計が、ITや建設分野での上積みが大きいという結果を類推すると過去数年間はこの分野が好調であったことから、日本のGDP伸長率は上振れ改定となるのかもしれません。
- もしGDP伸長率が現在の統計値よりも大きければ、日銀の利上げが正当化されるという見立てもあるようです。
- 日本の数々の政策を決めるに際し参考となるGDPの算定方法が意外とアナログなことには正直驚きます。このIT化が進んでいる時代、もっとデジタルを駆使し網羅的に算定できると思うのですが、、、。
【記事概要】
- 働く人の賃金や労働時間を調べる毎月勤労統計で不正が見つかった2018年度の騒動は記憶に新しい。こうした事件も踏まえつつ、統計の精度を高める作業が少しずつ進んでいるのをご存じか。日本の経済活動の状況を示す国内総生産(GDP)については、統計で拾い上げる法人を25年末にも広げるという。
- 拾い上げる法人の数を増やせば、GDP統計上の投資額が上積みされるのは間違いなさそう。問題はその規模だ。かなり大きな上方修正になるのではないかという見方が専門家の間でささやかれている。
- 東大の肥後雅博教授がまとめた試算は驚きだ。25年末に予想される対象法人の拡大を織り込むと、改訂される20年のGDPは17.5兆円も膨らむらしい。GDP算定の基礎となる調査で小さな法人を対象に含める作業を反映した結果だ。
- 分野別に見ると、目立つのがソフトウエア投資の上振れ。20年のソフトウエア投資は9.1兆円の上方修正になり、従来の倍近くに達する。建設投資なども兆円単位の上積みが見込まれているそうだ。
- 個人宅やマンションの一室を拠点とする小さな法人は看板もない場合が多く、統計調査で実態を把握するのが難しいとされてきた。もっとも、IT(情報技術)業界では大手企業が受託した仕事を下請けに出し、小さな法人が実際の投資に動くケースが少なくない。
- こうした投資は従来のGDPではとらえ切れていなかったが、今回の統計改革で捕捉して積み上げてみたところ、相当な規模になったというわけだ。つまり、GDP統計は日本経済の実力を過小評価していたことになる。
- 日本経済の成長率の議論にもつながる。20年の名目GDPは539.6兆円で、15年(538兆円)からの伸び率は0.3%に過ぎないとされてきた。17.5兆円のかさ上げ分を単純に足すと20年の名目GDPは557.2兆円に膨らむ。15年からの伸び率は3.6%に届き、風景はかなり違ってくる。
- 成長率0.3%から3.6%へ3.3ポイントの上積みを単純に割り戻すと、年率0.6%程度の上昇要因になる。GDP改訂の作業では20年だけでなく、過去のGDPにも修正が入るかもしれない。改訂のやり方次第で0.6%には届かないとしても、成長率の一定の上振れは大いにあり得る。
- 注目すべきは金融政策への影響だ。植田総裁が重視する「中立金利」は経済の成長率と密接に関わる
- 日銀が現在0.5%の政策金利を2回に分けて1%程度まで引き上げる、というのが市場の標準的な見立て。GDP改訂で成長率が上方修正されるのに伴い「中立金利」の目線が上がれば、利上げの回数やターゲットと意識される金利水準が上向いても不思議はない。日銀の利上げ戦略にとって、思わぬ援軍の登場だ。
- もうひとつ、ソフトウエア投資の上方修正が私たちに投げかけるテーマは「日本経済の課題はどこにあるか」。IT投資の不足と経済活力の欠如を結びつける論調がよく見られたが、もはやIT投資が不足していたとは言いにくい。
- クローズアップすべき課題は、投資を活力につなげるメカニズムなのか、IT分野など業界構造のあり方なのか。それなりに投資しても活力を欠いているのだとしたら、社会の生産性を高めることに知恵を絞る番だ。