金融リスク、米に再考迫る 米国債急落が引き金  相互関税、一部90日停止 発動13時間後
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250411&ng=DGKKZO87965050R10C25A4MM8000
【コメント】
  • 世界の金融市場が荒れています。一昨夜(日本時間)に史上最高の上げを記録した米国株式市場は、昨夜は再度大きな下げを記録しました。
  • トランプ大統領は、中国以外の追加関税実施を90日間延期しましたが、米国債が大きく売られているのが不安感を掻き立て株式市場の下落につながっています。米国債は世界で最も安全な資産という認識ですが、関税問題で米国景気が底割れするとの懸念で米国債の売りが始まっているようです。特に株式で大きな損失を被っている投資家が安全資産として持っている米国債で損失の穴埋めをするため競って売却していることも原因だそうです。中国も米国債の保有額は多く、報復の意味合いで米国債を売り浴びせる可能性も否定できません。
  • 米国の株/債券/ドルの全面安のリスクが高まっており、これが世界的な金融不安を増幅しています。
  • 株式と米国債から金(ゴールド)へ投資資金が移動している現象が見られます。長期的にドルに信任感が薄れていることにより金が買われてきましたが、ここに来て一挙に金が買われ始めているようです。
  • 債券市場の低下という最悪の事態を鑑み、トランプ大統領は追加関税実施を延期していますが遅かれ早かれ延期は企図されていたと思われます。トランプ大統領もバカではなく、特にべっセント財務長官は趙優秀な金融のプロですので、高関税政策が米国にどういう結果を招くのかは読み切っていたと思います。早々に各国とのネゴが終われば追加関税不安は払拭され、株/債券/ドルは正常化していくと思われます。ただし、米中の「やられたらやり返す」の終結が最大のポイントですので、当面混乱は続くと思われます。
  • 今日の日本市場は約1,000円程度の下げとなる可能性があります。(投資は自己責任で!)
【記事概要】
  • トランプ米政権は9日、発動したばかりの相互関税をわずか13時間で部分凍結した。背景にあったのは、株式や通貨に加えて安全資産とされた米国債まで売られる「トリプル安」の発生だ。市場は貿易戦争だけでなく、債券や通貨までもが各国の攻撃材料となる金融戦争を恐れている。
  • 米政権は相互関税のうち9日午前0時1分に積み増した分について、米国に交渉を持ちかけた国・地域に90日間の停止期間を設けると明らかにした。日本からの輸出品にかかる関税は一時的に24%から10%になる。
  • 「この24時間の出来事は、米国の関税政策によって我々が深刻な金融危機に向かっている可能性を示唆している」。
  • 9日午前0時1分に相互関税が発動される直前、深夜にもかかわらず米国債が急激に売られはじめた。米国債はもともと安全資産とされ、経済危機時には世界マネーが入り込み価格は上がる(金利は下落する)。実際、トランプ大統領が相互関税案を発表した先週は、米国債が大きく買われて国債利回りは下落していた。
  • 債券価格が急落した理由の一つは、株価下落で巨額損失を抱えたヘッジファンドが保有国債の換金売りに動いたためだ。米国債の価格急落は、民間銀行の保有債券にも含み損をもたらす。
  • 市場は貿易戦争が金融戦争へと波及することを恐れている。中国の米国債の保有量は海外勢でみると日本に次いで世界2位。中国はトランプ政権への報復措置として、米国債を売り浴びせることが不可能ではない。
  • 中国・人民元は対ドルで17年ぶりの安値となり、トランプ関税のショックを和らげるため中国当局が緩やかな人民元安を容認しているとの見方が強まる。ベッセント財務長官は9日、中国に対し「やってはいけないのは、通貨切り下げでこの状況を打開しようとすることだ」とし、金融戦争への警戒を隠さなかった。
  • 米国債市場は相互関税の部分凍結でも好転せず、9日の長期金利は4.3%前後と先週末より0.4%も高い水準のままだ。世界の金融市場はなお火種を抱えている。