日本株、浮上の機会を生かせ
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250416&ng=DGKKZO88068790V10C25A4DTC000

【コメント】

  • 現状の日本株の割安さを唱える記事ですが、記事に書かれている本質は「この機を日本の新たな飛躍に」という内容です。
  • 米国は自由貿易体制を維持するために、財政と貿易の双子の赤字に耐えきれなくなってきていることがトランプ関税の原点です。世界の警察としての防衛費負担を中心とした財政赤字と、自由主義経済を活性化させ同盟国を成長させるための貿易赤字です。(実際は中国を利することになっていますが、、、)
  • これを抜本的に解消するために、トランプ大統領は高関税を設定し、米国内の製造業を活性化し、双子の赤字の解消を狙うということが今回の目標です。
  • 今日の別記事で、ホンダが米国工場での生産を三交代制などによりフル生産することや、エヌビディアが先端半導体を米国内で生産すると報じています。いずれも高関税に対応する施策です。
  • 日本は生産現場の知恵により海外に生産拠点を移す能力があり、過去の円高局面でも地産地消を進めた経験があります。
  • 現在日本は長期的な人口減少傾向にあり、潜在成長力に大きな不安を抱えています。この機会に、日本の生産の匠を使い米国に工場を移転することは、人口減少問題による労働力不足を軽減し日本の潜在成長力低下に歯止めをかけることになるかもしれません。
  • ただし、これが実践されていくと日本の製造現場は縮小し、そこで働く一部の日本人は別の産業に就くことになります。当事者にとっては大きな試練ですが、高齢化や食料自給率向上に資する介護事業や農業の活性化に繋がるかもしれません。
  • 世界経済の中でウエイトの大きい米国の政策により日本が振り回されている感は否めませんが、現状を前向きに捉え最良の選択をしていくことが日本に求められていると感じます。

 

【記事概要】

不意打ちのような高関税率発表の狙いは別で、同盟国を世界の枠組みを大転換させる試みに引き込むことにあるのだろう。2013年、当時のオバマ大統領が米国は世界の警察ではないと演説して以降も米国の双子の赤字は悪化し、新型コロナウイルス以降の財政拡張政策や金利上昇は状況を苦しくさせている。
冷戦終結後の自由貿易体制を維持する耐え難い負担感が今の米国を突き動かしていると感じる。新しい世界の枠組みではメリットを享受する国が相応の負担を担うべきで、高まる地政学リスクへの対応力も高めておく必要があると考えているのだろう。
日本は大転換を追加的な負担ではなく、新たな飛躍のための挑戦の機会だと捉えることはできないだろうか。1980年代の日米貿易摩擦で、米国は自動車への高関税で圧力をかけてきた。日本企業は米国での現地生産に踏み切り、世界的企業への飛躍を手にするきっかけとなった。
世界の消費は米国、欧州、中国や日本を含むアジアが大半を占める。地産地消を進めることで有事への対応力も高まっていく。分散する生産拠点の品質のブレをなくし、高め続けるには投資と新たな工夫(人工知能を活用してエンジニアのノウハウを瞬時に現場にフィードバックするなど)が求められるだろう。
日本企業には大転換を成長のきっかけとするために必要な生産現場の知恵があり、投資を支える充実した資金が企業や金融機関に蓄積されている。米国との連携強化は日本の問題であるエネルギーや食料の調達の不安を抑制し、安全保障面を含め地政学リスクへの対応力を高めるだろう。
日本株は不透明さが増しているが、バリュエーション(投資尺度)の割安さもあり、中長期的に浮上するチャンスに目を向けるタイミングなのかもしれない。