関税交渉、重ならぬ国益  日本、包括見直し要求/米は「安保」 「早期合意」は一致
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250418&ng=DGKKZO88128480Y5A410C2MM8000
【コメント】
  • 昨日、赤沢経済財政・再生相がホワイトハウスで第一回の交渉を行いました。それに先立ちトランプ大統領との面談が行われ、トランプ大統領の交渉に対する意気込みが赤沢氏に伝えられたようです。
  • 赤沢氏は、トランプ氏との面会について「(自身は)格下も格下。直接話してくださったことに感謝している」と公式に語ったようです。発言は当然米国側にも伝わりますので、心中は別としてもまずは「大人の発言」をしたのだと思います。
  • 交渉のポイントは、安全保障費用負担問題が最重要テーマになっているとのことですが、少々の米軍駐留経費を日本が負担したからといって自動車や鉄鋼などの高関税が撤回されるとは思いません。
  • ホンダは米国販売の大部分を米国で製造するとの意思表明をしていますし、日本製鉄もまだ承認はされていませんがUS Steelに投資することにより米国での生産に乗り出そうとしています。
  • トランプ大統領の狙いは米国製造業の復権です。これによりトランプ大統領支持の米国内の労働者階級の生活底上げを図るとともに、対中軍事力強化を早急に成し遂げることです。ですので日本は日本の国益を守るためにも米国製造業復権に沿った動きをしていく必要があるのだと思います。
  • 関税交渉期限は90日後とされており、参議院選挙戦の最中になります。石破政権は「選挙で勝つ」ことを主眼とせず「将来の日本にとっての最適解」の観点で交渉を行っていただきたいと感じます。
【記事概要】
  • 自動車など分野別を含む関税の包括的な見直しを求める日本と、安全保障を含むディール(取引)を迫る米国との溝は深い。
  • 16日(日本時間17日)の初会合には赤沢亮正経済財政・再生相が訪米し出席した。(1)早期に合意し首脳間での発表を目指す(2)次回協議を4月中に実施する(3)閣僚レベルに加え事務レベルでも協議を継続する――の3点を確認した。
  • 赤沢氏は閣僚間の交渉に先立ち、トランプ氏とホワイトハウスでおよそ50分間面会した。トランプ氏は「日本との協議が最優先だ」と語ったという。赤沢氏は「日米双方の経済が強くなるような包括的な合意を早期に実現したい」との首相の意向を伝えた。交渉終了後、赤沢氏が記者団に明かした。
  • トランプ氏との面会について「(自身は)格下も格下。直接話してくださったことに感謝している」と発言した。
  • 赤沢氏は為替や安全保障への言及があったか問われ「この言い方をすると分かってしまうが、為替は出なかった」と述べた。事実上、安保に関する要求を突きつけられたことを認めた。
  • 各国より先んじて米国との交渉のテーブルについたとはいえ、早期合意は容易ではない。日本側は日本経済への影響が大きい自動車などへの追加関税を含めた合意を勝ち取ることが最優先となる。トランプ氏は初会合前、自身のSNSに「テーマは関税、駐留経費、そして『貿易の公正性』だ」と投稿しており、交渉材料は多岐にわたる。
  • 米国側はかねて自動車の安全基準といった非関税障壁が米国製の車の対日輸出を妨げていると問題視してきた。農産品分野のさらなる市場開放にも意欲を示す。
  • 米国は相互関税の上乗せ部分について90日間の一時停止を打ち出している。赤沢氏は「米国は90日間でディールせよとの考えだろう」と指摘する。期限となる7月は参院選の直前の時期に当たる。日本にとって農業分野などで譲歩しにくい状況になる。
  • ベッセント氏はトランプ政権発足前の2024年、日本の防衛費増額を評価した上で「円建てのため、円安進行でドル建てでは少し減ったかもしれない」と語った。円安・ドル高の是正を交渉カードとして持ち出す懸念もくすぶる。仮に為替条項の導入に発展すれば日銀の金融政策に波及する。緩和的な金融政策は通貨安誘導と批判されかねず、トランプ関税が経済を下押しした場合の機動力を失う。急激な円高を緩和するための為替介入にも動きづらくなる。