【コメント】
- トランプ関税の狙う本質を手短に解説した記事です。
- トランプの狙いは、高関税政策による保護主義と誤解されているが、実は徹底した自由貿易の推進を提言しているとも理解できます。高関税で脅している真の狙いは、各国に関税・非関税障壁を撤廃せよと迫っり、合意すれば米国も同様に高関税を撤廃するということかもしれません。これにより真のフリートレードルールが適用され、自然に各国の強い分野の製品・サービスがグローバルに流通し、効率的で消費者にとって最適な環境が整うということです。
- これまで各国は自国内の産業保護のため比較的高い関税をかけてきたきらいがありますが、相対的に米国は低関税で米国民に消費を喚起してきた側面があります。これが可能だった一つの理由は、米ドルの信任の厚さです。各国は信任の厚い米国に安全にお金を貸し、そのお金で各国の製品を米国民に買わせ米国民を消費づけにしてきた構図があります。これにより、毎年多額の貿易赤字を生み出し、各国に対する借入増加(国債発行増加)で大きな財政赤字を招いています。これが米国が懸念している「双子の赤字」です。
- トランプ大統領はフリートレードルールを真の狙いにしているわけではないと思いますが、各国に関税・非関税障壁をなくさせ米国の輸出を増やすとともに、高関税という「脅し」により各国の産業を米国内に誘致し輸入を増やすことにより、貿易赤字のドラステックな縮減を短期間で図ろうとしているのだと思います。これが完遂されれば結果的にフリートレードルール(関税・非関税障壁がない世界)が出来上がるのだと思います。
- これにより米国内の産業競争力が強化され経済が活性化すれば税収増加につながり、同時にイーロンマスクが手掛ける政府機関のムダ排除によるコスト削減も進めば、財政赤字の撲滅になります。
- トランプ政権のやろうとしていることは決して間違いではなく、これが完遂されれば「強いドル」が維持できるのだと思います。再度ドル高の時代が早晩やってくる予感がします(投資は自己責任で!)
【記事概要】
- トランプ米政権の通商政策にはその是非は別として誤解も少なくないように思える。
- トランプ政権が志向するのは保護貿易ではなく、自由貿易であろう。他国が関税を引き下げ、非関税障壁を取り除くとき、米国は相互関税を取り下げる。そこにあるのは自由貿易である。他国が「自由貿易を守ろう」と団結する様子はちぐはぐに思える。
- また、トランプ政権が目指す貿易赤字の削減は重商主義ではなく、「米国が他国からお金を借りてまで消費を拡大しない」という全世界向けのメッセージと読み取れる。
- 戦後、とりわけ1980年代以降、世界経済は米国の消費に依存して拡大してきた。
- 米国の貿易赤字は、米国が他国からお金を借りて他国のモノを消費することを意味する。主語を入れ替えれば、他国は米国にお金を貸して他国のモノを米国に消費させている。
- 相互関税もドル安誘導もそうだが、米国では物価が上がる。これら2つはいずれも、トランプ政権の言葉で言えば付加価値税(VAT)、われわれの言葉で言えば消費税の引き上げと似た効果を持つ。
- 歳出削減と関税で歳入増加を目指す政府部門を含め、米国は財政再建と製造業の復活の両立を目指している。
- ある人が筋肉質になることは個人の問題だ。他方で、その人に糖質と脂質の多い食事を掛け売りで提供していたレストランは不満だろう。
- 話を前に進めよう。トランプ政権が財政再建を貫徹するなら、世界経済史上、最大の与信たる米国への与信が収縮する。スーパー・クレジット・サイクルの終わりである。
- もちろん財政再建は容易ではない。米政府効率化省(DOGE)の歳出削減は期待外れに終わっているようだ。社会保障も削らなければならない。また、失業という痛みもハードルとなるだろう。