【コメント】
- 先週末、石破首相は消費税減税を行わないことを明確にしました。これまで同氏は消費税減税には否定的な論調で国会で答弁を繰り返していましたが、ここにきてキッパリと否定をしました。
- 消費税減税は現実的には赤字国債で補う可能性が高いですが、これでは記事のタイトルにあるように国会議員の失職回避の無責任な公約です。
- ただでさえGDP比で巨額の国家債務を抱える日本が、単純にこの減税を行えば取り返しのつかない借金大国に成り下がります。
- 別途低所得者への短期的な支援は必須と思われますが、日本全国一律の減税はいかにも選挙対策としか見なされないと感じます。
- ここで何度も述べさせていただいているように、議員定数削減や政府外郭団体の廃止など無駄な費用を大至急カットし、巨額債務の返済を少しでも行なっていくことが必須です。
【記事概要】
- 自民・公明両党の幹事長らが夏の参院選までに新たな経済対策を示すことで合意した。事実上の選挙公約となる公算が大きい。
- すでに主な野党が消費税の減税策を競うなか、見過ごせないのは政権を担う公明党や参院自民党にまで減税論が広がっていることだ。政策効果や財源の議論抜きに選挙目当てのバラマキに走るようでは「責任政党」とはいえない。
- 公明党は食料品を中心とする物価高対策としての減税を訴える。減税実現までのつなぎ策として現金の給付も唱えている。自民党では党執行部こそ減税に慎重なものの、参院議員の8割が消費税減税を望んでいる。近く党税制調査会の勉強会を開き、税率を下げる場合の課題を整理する。
- 野党第1党の立憲民主党では13年前に消費増税を主導した野田佳彦代表が食料品の税率を1年間ゼロにする方針に転じた。延長も1回できるという案だ。党内の減税派に押し切られ、政策の一貫性も損なった。日本維新の会、国民民主党も減税をめざしている。
- そもそも減税が必要な局面なのか。3月の全国消費者物価指数によると、確かにコメは1年前の2倍近くと高い。食料全体としてならしても7.4%上がっている。所得が低く、収入の多くを食費に回す人ほど消費税の負担が重く感じられる面はあろう。
- だからといって消費税を下げればいいというのは短絡的だ。食品に掛かる8%の軽減税率をゼロにすれば約5兆円の財源が必要になる。石破茂首相が「高所得の方も含めて負担が軽減される。低所得の方が物価高で一番苦しんでいるのにどうなのか」と認める通り、再分配策としての効率も悪い。備蓄米の出し方の改善や加工用米の転用など、コメ価格の抑制に打てる手ももっとあるはずだ。
- 「トランプ関税」は物価高対策の口実にならない。需要が弱まるならば物価は下がる方向に働くからだ。日銀が1日に公表した展望リポートによると、生鮮食品を除く消費者物価指数の上昇率は2026年度が1.7%上昇で目標の2%を下回る。エネルギー価格の高騰も一服し、減税をしなくても物価は落ち着く兆しがある。
- 消費税は医療・年金・介護・子育て支援など社会保障や地方の財源となる基幹税で、下げたら容易に戻せない。次の選挙のために次の世代にツケを回さないか。政治家も有権者も問われている。