サンリオ、ROE49%  「キティ」国内外で知財戦略2年連続2割超
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250530&ng=DGKKZO89019720Z20C25A5DTB000
【コメント】
  • 日本企業のROE(純利益/株主資本)が改善してきているようです。改善の要因は単純で、分母が増加し分子が減少しているからです。
  • 分子は言うまでもなく利益水準が向上し純利益が増加していること、また分母はここ最近株主還元(特に自社株買い)が進み減少してきていることです。
  • 潜在的に、低資本で高利益を上げられる業種がROEには有利です。記事にあるように、サンリオはバランスシートに計上されていない過去に確立したキャラクター商品で利益を上げていることが功奏しています。またZOZOは「受託販売」と言う大きな投資を必要としないビジネスモデルで効率的に利益を稼げています。また生成A Iなど世の中の流れにのった製品を生み出せたアドバンテストなどが高収益をあげ高ROEを計上できています。
  • 日本企業でROEが10%を超えている企業はたった150社、上場企業の平均は9%。欧米の20%程度からすると大きく見劣りし、これが日本株上昇の足枷の一つになっています。
  • ただ裏を返せば、日本企業のROEはまだまだ大きく改善する余地は残されており、今後日本株が上昇する余地が充分にあるとも言えます(投資は自己責任で!)。
【記事概要】
  • 日本企業が資本効率を意識した経営を強めている。代表指標の自己資本利益率(ROE)を調べると、2025年3月期はサンリオが約49%と2年連続で2割を超えた。アドバンテスとなど半導体関連も3割前後に達し、日本企業全体の9%を大きく上回った。海外勢に見劣りするROEの改善が進めば、新たな投資マネーを呼び込む契機になる。
  • 日経500種平均株価の採用企業約310社のROEを調べた。過去3年で自己資本がマイナスだった企業は除外した。日本の上場企業全体の念願ともいえる10%以上になったのは、全体の半分の約150社だった。
  • サンリオのROEは前の期比19ポイント増の48.6%と全体で3位。新型コロナウイルス禍前の19年3月期の7%台から大きく伸びた。23年3月期の16%強、前の期の29%強と安定して高水準を維持している。SNSによるマーケティングを国内外で進めて「ハローキティ」といったキャラクターのIP(知的財産)戦略が奏功し、純利益は最高になった。資産計上がないIPを活用し効率的に利益を高められている。
  • 生成AI(人工知能)やデータセンター向けの半導体需要をとりこんだアドバンテストのROEは19ポイント増の34%と急伸し6位だった。
  • 首位は西武ホールディングスの52%で、45ポイント以上伸びた。複合ビル「東京ガーデンテラス紀尾井町」(東京・千代田)の売却などが押し上げた。ZOZOは前の期から低下しても、なお49%強と高い。アパレル各社から服飾品を預かり、梱包や出荷作業を代行する「受託販売」で効率的に利益を稼げている。ROEを構成する重要な要素の一つである売上高純利益率は20%を超える。
  • 各社に共通するのは、成長投資や株主還元をバランスよく強めてきたことだ。ROEは株主のお金である自己資本からどれだけの利益を生んだかを示す指標で、純利益を自己資本で割って算出する。各社は強みの事業を伸ばして「分子」の純利益を増やしつつ、配当や自社株買いなどの還元を通じて「分母」の自己資本の増加を抑え、ROEを高めている。
  • ROE上昇は株高にもつながる。利益を効率的に伸ばせれば成長投資や還元の余地を拡大でき、それが投資家の評価を引き上げるという好循環を生むからだ。ROEは理論上、東京証券取引所が企業に求めている「PBR(株価純資産倍率)1倍未満からの脱却」を促す効果が見込める。PBRは、ROEとPER(株価収益率)に分解でき、ROEの上昇はPBRを改善させる要因になる。
  • 日本企業のROEの重要性を説いた「伊藤レポート」から10年超が経過した。上場企業のROEは足元で9%台とゆるやかに上昇してきたものの、10%超えは定着せず、欧米企業の2割前後から見劣りする。
  • それでも資本効率の改善を意識しROEを向上させようとする企業が増えている意味は大きい。サンリオは先日、中期でもROE30%水準という目標を立て、最大300億円という追加の株主還元の検討を公表した。26年3月期は他の企業でもこうした動きが一段と強まる見通しで、成長を重視する長期マネーをさらに呼び込むきっかけになり得る。