進次郎流「フォワードガイダンス」は成功するか コメ市場と神経戦
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA29C710Z20C25A5000000/
自民幹事長「生産持続できるコメ価格を」 野村元農相は小泉氏に苦言
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA310EM0R30C25A5000000/
小泉農相、元農相の苦言に反論 備蓄米「党に諮れば大胆な判断できず」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA010DW0R00C25A6000000/
「ドンキ」社長、コメ流通の可視化提言 「消費者の心配が怒りに変わる」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC011ID0R00C25A6000000/
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自民幹事長「生産持続できるコメ価格を」 野村元農相は小泉氏に苦言
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA310EM0R30C25A5000000/
小泉農相、元農相の苦言に反論 備蓄米「党に諮れば大胆な判断できず」
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「ドンキ」社長、コメ流通の可視化提言 「消費者の心配が怒りに変わる」
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【コメント】
- 今朝の記事は、米、コメ、米です。
- 先週末から、早速主要な大規模流通業者が備蓄米を2000円前後で販売開始し始めました。どこも直ぐに完売状態だったそうです。
- 日曜日のバラエティ番組では、新米と古々米の食べ比べを放映していましたが、味の違いがつかないとのことでした。おそらくそうなのだと思います。最近は格段に精米技術と炊飯技術が進化していて、米そのものが多少古くても口に入れるときには差が感じられないほどにできてしまうのでしょう。
- ドンキの社長曰く、米の流通経路は複雑でなんと5次卸まであるそうです! 農家の出荷時からどのくらいのマージンが乗って消費者のもとに来ているのでしょうか?精米や保管・輸送経費など必要最低限のコストとそれに伴う適正なマージンは許せますが、既得権益でただ流通経路に入っている卸業者も少なくないと推察されます。「推察」という単語がキーで、実態が農水省にもはっきりわからないのだと感じます。
- 81歳の元農林水産大臣が、小泉進次郎農相が随意契約による備蓄米放出を党農林部会に諮らなかったことに苦言を呈したようです。「自分で決めて自分で発表してしまう。ルールを覚えてもらわないといけない」と発言したとか。なんとまあ前近代的な感覚の発言をするのだと呆れます。まさに守旧派自民党政治の弊害の現れです。
- これで備蓄米の2/3の放出が終わったようですが、残りの1/3は国民全員の半月分だそうです。備蓄米には限りがありコメ政策の抜本改革は待ったなしです。個々人によってどのコメを食べるかは基本的に自由です。牛肉も、高価な神戸牛を好む人もいれば、リーズナブルな価格の輸入牛で充分という人もいます。コメも全く同じだと感じます。ブランド米から輸入米まで、個々人が価格と味の観点から自由に選択できる構造改革が必要と感じます。
- 美味しいお米の生産者は高い付加価値をつけているのですから神戸牛と同様に高値で出荷し多額の利益を上げても何の問題もないと感じます。価格は18世紀の経済学者アダム・スミスが提唱した「見えざる神の手」により需給によって決まるのですから。
- 日本は自然な需給関係に政府が介入しすぎて、それにより価格が歪み経済成長も阻害されてしまうと感じます。族議員の大きな弊害です。
【記事概要】
- 小泉進次郎農相が高騰するコメ市場と神経戦を繰り広げている。政府備蓄米を「無制限に出す」と繰り返し、外国産米の輸入拡大も否定しない。浮かぶのは金融政策のように人々の将来の期待に働きかける狙い。進次郎流「フォワードガイダンス(先行き指針)」は成功するか。
- 小泉氏は5月21日の農相就任以降、2段構えでコメ価格の抑え込みに動いた。
- まずは市場にコメを急いで供給し、足元の需給を緩めること。随意契約で大手小売業に20万㌧余りの備蓄米を直接売り渡し、31日から店頭にコメを並べ始めた。3月に入札した備蓄米はまだ2割しか小売や外食などに届いていないため、JAグループなどの集荷業者や卸売業者を飛ばす荒療治に出た。
- 次は将来の「期待」への働きかけだ。小泉氏は「需要があれば備蓄米を無制限に出す」と繰り返す。備蓄米の在庫は平時の3分の1となる約30万㌧まで減る見通しだが、自民党内で反対が強い外国産米の輸入にも含みを持たせる。
- 小泉氏はその狙いを5月28日の衆院農林水産委員会で率直に語っている。「備蓄米を活用して、マーケットに強烈にメッセージを伝えている」。コメ市場の参加者に照準を合わせ「コメ価格は今後下がる」という期待を醸成しようというのだ。
- 集荷業者や卸売業者は昨夏以降に高値でコメを仕入れた。安値で売れば損失が出かねず、一部の業者はコメを抱え込んでいるとされる。
- 逆に市場に値下がり期待が広がれば、売るのが遅れるほど損失も膨らむので、在庫を早く放出するのが合理的。結果的に在庫が吐き出され、コメ市場の需給が改善し、実際に値下げが進むというわけだ。
- この手法は金融政策を参考にしたフシがある。人々の期待に働きかける金融政策で知られるのは黒田東彦・前日銀総裁だ。2013年4月に大規模金融緩和を導入し「市場・経済主体の期待を抜本的に転換させる」と意気込んだ。
- 黒田緩和も2段構えだった。まず足元のマネー供給量を大幅に増やした。次に「物価目標を安定的に達成するまで金融緩和を続ける」と宣言した。人々の将来の期待に働きかけてデフレマインドの払拭を狙った。小泉氏の「無制限放出」もコメ価格が下がるまでやめないと思わせるところに意味がある。
- ただ、コメ市場と金融市場は異なる。ある農水官僚は「コメは金融のようなバーチャルな世界ではない」と語る。金融は口座から口座へデジタルデータが移転するだけだが、コメは実物を動かさなければならない。在庫量の上限があり、精米能力やトラックの輸送能力もボトルネックとなる。
- 参院選が今夏に迫り、小泉氏が取れる手段にも制約がある。自民党の森山裕幹事長は5月13日の記者会見で「足りないから輸入するという話にはならない」と述べ、コメの輸入拡大を否定した。小泉氏も28日の衆院農水委で「生産者の思いと消費者の立場が一致するところを見いだす」と農家への配慮を忘れなかった。
- 備蓄米という「米びつ」は底がみえてきた。放出を続けるには、自民党を支持してきたコメ農家が打撃を受けかねない外国産米の輸入拡大がいずれ必要になる。市場が「農業票を失う輸入拡大などできない」とたかをくくれば、値下がり期待はしぼむ。
- 外国産米の輸入という「劇薬」を飲んででも備蓄米放出を続けるのか。市場は小泉氏の覚悟を瀬踏みしている。
- 自民党の森山裕幹事長は31日、コメ価格は農家が生産を持続できる水準を保つ必要があると訴えた。鹿児島県鹿屋市での講演で「農家が頑張ってコメを作ろうという気持ちでいないと食料安全保障は成り立たない。小泉農相にもしつこく言っている」と述べた。近年は価格低下が続いていたと強調した。「薄い利益で農業団体が頑張っていることを正しく理解しなくては間違った世論になってしまう」と話した。低価格の随意契約で放出した政府備蓄米は31日には一部の小売店で5キロ2000円ほどで販売が始まった。森山氏は講演後、記者団に「価格は新しいコメとは違うわけだから、そこは(農家に)ご理解をいただかないといけない」と語った。講演には野村哲郎元農相も出席した。野村氏は小泉進次郎農相が随意契約による備蓄米放出を党農林部会に諮らなかったことに苦言を呈した。「自分で決めて自分で発表してしまう。ルールを覚えてもらわないといけない」と発言した。
- 小泉進次郎農相は1日、東京都品川区の「イオンスタイル品川シーサイド」を訪れ、備蓄米を発売した店頭を視察した。小泉氏は「予想を上回るスピードで民間事業者が対応してくれた」と感謝を述べた。視察後に記者団の取材に応じた。小泉氏は今後の備蓄米放出について「次の30万トンをどのように活用すべきか、並行して考えている。需要があれば全部出す。そういった強い思いで何とかこの価格の高騰を抑えたい」と強調した。
- 元農相の野村哲郎氏は前日の5月31日、随意契約による備蓄米放出を党農林部会に諮らなかったことに苦言を呈した。これについて小泉氏は「大臣がやることなすこと一つ一つを党に諮っていたら、誰が大臣になってもスピード感をもった大胆な判断が出来ない」と反論した。「大臣の裁量内で決められることは私は党に諮らず決める。ご指摘があれば国会の中でいただく」と述べた。野村氏は5月31日の鹿児島県鹿屋市での講演で、小泉氏の備蓄米放出について「自分で決めて自分で発表してしまう。ルールを覚えてもらわないといけない」と発言した。
- ディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するPPIHは5月28日、小泉氏にコメ流通に関する意見書を提出した。これについて小泉氏は「流通を透明化し、改善すべきことがあれば見直す」と話した。
- ディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するPPIHは1日、都内の店舗で政府備蓄米の販売を始めた。吉田直樹社長は報道陣の取材に対し、「コメの流通経路は際だって前時代的だ」と述べ、コメがどこにあるかを把握できるようにするべきだと強調した。主なやり取りは以下の通り。
- 「盛況なのはありがたいが、それだけ消費者の皆さんが心配しているということだ。PPIHは1万5000トンを確保しているが、その半分程度は6月中に行き渡るように努力する。農林水産省にも働きかけをしているところだ」
- 「PPIHは8月までに約300万袋を用意するが、当然備蓄米だけでは足りない。生鮮をはじめ、物価高が現実問題としてあるので我々も努力しないといけない。コメは必ずどこかにあるので、出てくるように努力する」
- 「(流通経路の問題は)消費者からすると関係のない話で、コメは店頭にあるべきものだ。まずは問題提起をすることが必要だと考えた。砂糖や魚、野菜などと比べ、コメは流通経路が際だって前時代的だ。将来的に魚や穀類も圧倒的に不足すると言われており、これは前哨戦だ。提言した内容が実現するか分からないが、小売業者の一人として全力を尽くして皆さんと一緒に考えていきたい」
- 「流通経路をシンプルにして、需給が分かるようにしてほしい。例えばメキシコ料理チェーンの米チポトレ・メキシカン・グリルは何千という農家と契約しているが、RFID(無線自動識別)を使い、どこのモノがどこにあるかを把握している。コメもいまの技術を使えばどこに何があるか分かる世界をつくれるはずだ」
- 「農家と小売業者が接触するのはなかなか難しい。流通経路がシンプルになって滞らないことや、食のプロフェッショナルが卸に入ることが極めて重要だ。コメは主食なので一定の管理体制も必要だ。JAグループと協力していく必要があるし、JAも消費者にコメを届けるということが一番大事なミッションだ。一緒にやっていきたい」
- 「一定の数量を販売しており交渉力はあるので、ステークホルダーにしっかりと働きかけていく。消費者が一番困っているのは食品の価格高騰だ。実際に弁当と一緒に買う飲み物をやめて、弁当だけ購入するというパターンが増えている。リーズナブルな価格を提供していく」
- 「今回の備蓄米は正当な価格だが、今後出てくる銘柄米や新米が2000円台というのは難しいかもしれない。ただ、消費者は同じコメがなぜ2倍の価格になるのかという疑問を当然持つだろう。それをしっかりと政府や関係者に届けていきたい。今は消費者は心配している段階だが、これを超えると怒りに変わっていく。それまでに与えられた時間は少ない」