円「最高値」から30年 安いニッポン返上へ債券自警団も応援
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB049G70U5A600C2000000/?type=my#AAAUAgAAMA
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB049G70U5A600C2000000/?type=my#AAAUAgAAMA
【コメント】
- 日本の長期金利が上昇しています。日本の政府債務増加が止まるところを知らず危機的状況にあるからです。
- また円の実質為替レートが1995年の約180が2024年には約64まで低下、つまり円が非常に弱くなってきていますが、今年4月には約71に回復してきたと報じています。ここ30年、日本はデフレで海外から見れば日本の財やサービスが非常に安くなっている状況が続いてきていましたが、ここ数年のインフレへの転換基調で少しだけ実質為替レートが改善したようです。
- 円高傾向になってくれば、海外(特にドル圏)投資家の自国通貨の利回りは上昇します。日本の財政問題で日本の長期国債の金利が上昇していけば、金利収入は増加しますが購入した債権価格は下落します。ただし円高が進行すれば、債権価格下落を吸収する効果が発揮され、全体では比較的高くなる金利収入が手元に残るということも想定できます。日本は、政治経済が比較的安定していることもあり、債権価格が極端に暴落(ただ同然)になることが考えづらいことも海外投資家にとっては有望な投資先と映るのでしょう。再度、円・日本株・金利が上昇していくこともあるのかもしれません。
- では、我々日本人はどうするべきか? 長期債の金利が高いと感じる時に、少し長い債権を購入し満期まで持ち続けるということも安定的な資金運用として一考の余地があると思われます。株式投資ほど面白さはありませんが笑。(投資は自己責任で!)
【記事概要】
- 日米で財政規律の緩みを警戒する金利上昇、いわゆる「債券自警団」が徘徊(はいかい)している。日本の政府債務が危機的なのは論をまたない。しかし、いたずらに不安をあおるだけでは逆効果だ。円安に転じて30年。日本は経済構造を抜本的に変革するラストチャンスを迎えている。
- 国際決済銀行(BIS)によれば、円の総合的な対外購買力(実力)を示す実質実効為替レート(2020年=100)は1995年4月に178.85の最高値を付けた。その後、長期金利の後を追うように下げに転じ、24年6月は64.18と64%下落した。実に60年近く前の水準だ。主因は物価下落だ。日本だと100円で買えるモノが海外では200円するとしたら、円の対外購買力の弱体化にほかならない。長年出口の見えなかった「安いニッポン」に、一筋の光が差してきた。実質実効レートは直近4月に70.9と1年9カ月ぶりに70台を回復した。
- 渡辺努・東大名誉教授は国際通貨研究所が5月に開いたウェビナー(オンラインイベント)で「賃金が上がれば実質為替レートの円高化に寄与する」と指摘。物価と賃金の正常化と実質レートの円高化は名目為替レートの円高化を示唆すると解説した。
- 長期金利も上昇(債券価格は下落)に転じた。とりわけ償還までの期間が10年超の超長期金利が目立つ。それを単純に「債券自警団の反乱だ」と捉えると実態を見誤る。
- 3つの理由がある。第1に新たな資本規制に備えた保険会社の対応だ。支払いまでの期間が長い負債(保険契約)と運用期間の短い資産の年限差を縮めなければならず、超低金利下で泣く泣く超長期国債を買い続けた。過去10年の買越額の累計は約44兆円に上る。ところが昨年以降の金利の急上昇(債券価格の下落)で含み損が拡大。会計上は負債の時価評価も下がるので影響は限られるが、超長期国債の需要は一気に冷え込んだ。
- 第2に日米金利差の修正だ。10年物日本国債から同米国債を引いた利回り差は直近でマイナス2.9%。23年10月のマイナス4.0%から縮小したが、過去25年の平均(マイナス2.4%)と比べるとまだ「米国高・日本低」という関係にある。
- 第3に長期金利と政府総債務残高の多寡は必ずしも一致しない。世界32カ国のケースを点描するとメキシコやブラジル、コロンビアのように金利の高い国は、経常赤字や高インフレの影響の方が大きい。
- 金利上昇には良い面もある。日本の長期金利や超長期金利が上がり、いままでなかった投資妙味が増せば、米国に流れていた長期運用のマネーが米国債を売って日本国債に戻る。
- 海外投資家は、こうした構図にいち早く目を付けた。日本の超長期国債の買越額は過去10年で約24兆円に上るが、とりわけ25年は4月までに6兆円あまり買い越した。円高・ドル安が進めば、利息と償還差益と為替差益からなるドルベースの「総合利回り」は大きく上昇するという読みがある。
- 日本は世界最大級の対外純資産を保有し、民主主義の安定度もトップクラスだ。しかも株価には割安感が残る。一部の海外投資家の目には、こうした日本の姿が世界の「安全地帯」のように映る。
- 株式市場は日本の構造変化を一足早く織り込み始めている。円相場と東証株価指数(TOPIX)の関係を5年刻みで統計分析すると、1970年代から2004年までは正の関係(円高なら株高)、05年から19年は負の関係(円安なら株高)だった。ところが、20年以降は無関係(TOPIXの為替感応度はゼロ)になった。製造業の為替ヘッジ能力の向上に加え、土地の値上がりや人件費の価格転嫁による企業向けサービス価格の上昇で内需企業の存在感が高まっている。
- 財政規律の緩みに長年警鐘を鳴らしてきたBNPパリバ証券の中空麻奈チーフクレジットストラテジストは新著のタイトルを「金利上昇は日本のチャンス」とした。財政健全化は待ったなしだが、補助金依存の企業の淘汰は進み、継続的な賃上げを通じて日本全体の生産性の底上げや高齢者サービスを担う人材の確保につながるという。なにより人々の働き方が変わり、終身雇用や年功序列といった現代社会の活力を奪う就労制度が打ち破られれば、競争が蘇り、経済は再び勢いを取り戻すと呼びかける。
- 債券自警団には2つの顔があるのを忘れるべきではない。表の顔はポピュリズム(大衆迎合主義)によるばらまきを戒める検査官。裏の顔は資源配分の効率化を後押しする応援団だ。