強権トランプ氏、力を誇示 首都34年ぶり軍事パレード 中東緊迫さなか、兵器供給不安も
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250616&ng=DGKKZO89378250V10C25A6FF8000
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【コメント】
- 米国時間14日、靖国政府は首都ワシントンで軍事パレードを開催していました。1991年の湾岸戦争後以来34年ぶりの大規模なものだったそうです。日本の日曜日のニュース番組もこれを大きく報じていましたので、ついみてしました。
- 世界の戦争の歴史のダイジェスト版という意味で、見せ物としてはよくできていたパレードでした。費用が約65億円かかっていたそうです。
- 最大の話題は、トランプ大統領の誕生日に挙行されたことのようで、トランプ氏の権力を誇示する目的が色濃く出ているとの解説が多くありました。
- ロシアや北朝鮮/中国などの「独裁国家」の軍事パレードはよく目にしますが、民主主義国家の軍事パレードはフランスを除けばあまり例がありません(フランスも政治思想的には中国と似ているところがあります)。
- イスラエルとイランでミサイルの撃ち合いが始まったこともあり、この米国の軍事パレードを見ていると、第三次世界大戦の予感が。
- 日本は米国と軍事同盟を結んでいますが、日本が戦争に巻き込まれた場合には米国人が命がけで日本人を守ってくれるのか?大きな疑問です。米国兵士の母親は「なぜ他国のために我が子が危険にさらされなければならないのか?」との疑問を強く持っているそうです。第二次世界大戦後とはすでに状況が異なっているので、当たり前の疑問だと感じます。
- 多額の国債発行残高や低成長経済よりも、ある意味での「平和ボケ」が現在の日本の最大のリスクと思い始めてきました。
【記事概要】
- 米政府は14日、首都ワシントンで軍事パレードを開催した。陸軍創設250周年の節目の日を記念したイベントで、トランプ大統領の79歳の誕生日と重なった。軍事パレードの首都での開催は34年ぶりと異例で、国内外にトランプ氏が力を誇示する狙いがある。
- ワシントンの名所であるリンカーン記念堂近くから、ホワイトハウスの南方までの約1.4キロを行進した。
- およそ6700人の兵士や150台の軍用車両、50機の軍用航空機が参加したとみられる。主力戦車エイブラムスや装甲車ストライカー、歩兵戦闘車ブラッドレーなどが登場。中東などの軍事作戦で使用されてきた軍用ヘリコプター、ブラックホークが上空を飛んだ。
- 1775年の独立戦争や第2次世界大戦、朝鮮戦争などで米陸軍が着用した軍服を再現した部隊も練り歩いた。過去の「偉大な時代」や勝利を想起させ、愛国心をくすぐる演出とみられる。
- トランプ氏はホワイトハウスの庭から観覧した。パレードの最後に演説し「米国はまもなく歴史上最も偉大な国となる」と語った。
- 過去の米国の軍事パレードは戦争終結を祝うものが多かった。前回は湾岸戦争が終わった91年6月に当時のブッシュ大統領(第41代)が行った。
- 中国や北朝鮮は国内や米国に軍事力を示すために軍事パレードを使う。
- 中国は2019年に米本土を射程に含む大陸間弾道ミサイル(ICBM)や極超音速兵器を搭載できる中距離弾道ミサイルを披露。北朝鮮も23年7月のパレードで、核搭載を想定した各種ミサイルや無人機などの新型兵器で米国を威嚇した。
- トランプ氏は14日、ワシントンで演説し「米国民を脅かす者は我が軍の兵士が戦う。米兵は決して諦めず、降伏しない。彼らは戦い、勝利する」と訴えた。国内に向け、自身の強権ぶりを訴える一環との見方もある。
- 34年前は冷戦が終わり、米国が世界の秩序を形成した時だった。中国の台頭で米国の力は相対的に弱まり、逆に軍事力を誇示しないといけなくなった事情も映す。
- 2つの戦争は想定通りに停戦交渉が進まない。仲介するウクライナとロシアの応酬がやまず、イスラエルとイスラム組織ハマスの交渉も停滞する。12日にはイスラエルがトランプ氏の制止を振り切ってイランの核関連施設などを攻撃し、中東で描いてきた和平構想は暗礁に乗り上げている。
- ヘグセス米国防長官は14日、米FOXニュースでウクライナのドローン(無人機)を中東に移動させたと明かした。「防衛環境は変化している」と指摘。ウクライナと中東の紛争に当面関与せざるを得ず、米軍の限られた軍事資源に優先順位をつける必要に迫られる。
- 米軍はウクライナ支援へ在庫を取り崩したため、兵器の供給に不安を抱える。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は155ミリりゅう弾砲を22年2月に始まったウクライナ紛争前の水準に戻すには最短で4年、りゅう弾砲の弾薬は5年かかると試算する。
- 米国防総省は予算増で生産能力を立て直しているが、一朝一夕ではできない。背景には冷戦終結に伴い軍事費を抑制してきた構造要因がある。世界銀行がまとめた国内総生産(GDP)に占める米国の国防費の割合をみると、80年代は6%台だったのに対し、23年は3.3%に低下した。
- 軌を一にして米国の造船業や鉄鋼業が衰退した。中国は国家プロジェクトで造船業振興を進め、世界の造船受注の7割を占めるようになった。トランプ氏は製造業を守ることが国防に直結すると主張する。
- 米国家防衛産業協会(NDIA)によると、防衛産業の労働者は85年の300万人から21年には110万人と3分の1になった。米国防総省の主要取引先は90年の10分の1に縮み、武器の供給力は低下した。
- しわ寄せは現時点で戦火がない台湾におよぶ。米防衛専門誌によると、主力戦闘機などの納入に遅れが生じている。ロシア、中東、中国の「3正面」への対応を迫られる米国にとって、日本など同盟・有志国との協力が重みを増す局面にある。
- にもかかわらず、トランプ氏は同盟国を含む世界の国を標的に関税引き上げに走る。「仲間」であるはずの同盟国の経済・産業を毀損すれば、自らも傷つきかねない。