ディズニー値上げのジレンマ OLC、営業費用コロナ前の2割増 満足度10年で3ポイント下落
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250624&ng=DGKKZO89555470T20C25A6DTB000
【コメント】
  • 中東ではイランが報復を行い荒れていますが、今朝は少し平和な記事をご紹介します。
  • 東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが、なかなか難しい経営を迫られているようです。
  • コロナ以降、入園料が目に見えて値上がりしているのがディズニーファンのお子さんを持つ皆さんは実感されていると思います。
  • 最近では、新しい施設がオープンしその減価償却が開始したことに加え物価高も同園のコスト負担を重くしていますが、度重なる値上げでカバーしており増益基調を保っています。
  • 今後も、建設費が高額な新しい施設のオープンが予定されており、この減価償却費負担も更なる値上げの可能性を秘めています。
  • 値上げにより現在では来場者一人当たりの支出額が約1万8千円に膨れ上がっています。これはもう「ちょっと遊園地に遊びにいく」といった軽い気持ちで行ける金額ではなく、小さな子供がいる一般家庭や若者達は「気合を入れて」訪問するレベルとなっています。
  • 今後ますます高齢化が進んでいく中で、少なくなる若者達が値上げに耐えられなくなった時、ディズニーは日本からいなくなってしまうのでしょうか?
【記事概要】
  • 東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(OLC)が値上げと満足度両立のジレンマに陥っている。大型投資や物価高を受けて入園料を値上げしたものの、それに見合う付加価値を生んでいないとの指摘もある。単価引き上げに頼った成長は曲がり角にさしかかっている。
  • OLCは2021年3月から東京ディズニーリゾートで繁閑に応じて価格が変動する料金体系を導入した。新型コロナウイルス禍前の19年3月期に7400円(大人)だった入園料は25年3月期に7900~1万900円(同)に上昇した。グッズ販売や飲食を含めた来園者1人あたりの売り上げは1万1815円から1万7833円と約5割高くなった。
  • 値上げは費用の増加を反映したものだ。OLC単独の損益計算書はほぼ東京ディズニーリゾートの収支を示している。25年3月期の単独の営業費用は新型コロナウイルス禍前の19年3月期比で26%増えた。減価償却費や施設更新費など来園者数の多寡に左右されにくい固定的な費用が5割増と膨らんだ。
  • とりわけ減価償却費は25年3月期に619億円と19年3月期比で75%増えた。約3200億円を投じた「ファンタジースプリングス」が24年6月に開業し減価償却が始まったことが大きい。人件費は変動的な要素が強い売上原価計上分と固定的な販管費分をあわせて18%増となった。
  • 短期的には値上げは業績回復に寄与した。25年3月期の来園者数は2755万人で19年3月期比で15%減ったものの、単価上昇の効果は大きく連結売上高は前期比10%増の6793億円、純利益は3%増の1241億円となった。いずれもコロナ前を超えて過去最高だ。
  • ただ、中長期的にみれば単価引き上げに頼った利益成長は限界がある。コロナ禍以降の東京ディズニーリゾートの1人あたり売上高の上昇率は、平均的な現金給与総額(毎月勤労統計調査ベース)の伸びを上回るペースだ。来園者の経済的負担が増すほど期待値も高くなり、従来並みの「楽しさ」では満足感を得にくくなるジレンマを抱える。
  • 日本生産性本部の24年度調査では東京ディズニーリゾートの顧客満足度指数は79.6で、14年度に比べ3.1ポイント下がった。岩井コスモ証券の川崎朝映シニアアナリストは「サービスと価格の兼ね合いが影響したのでは」とみる。値上げしたほど付加価値が高まらなければ満足度が下がり、リピート客などコアなファン離れにつながりかねない。
  • OLCは26年以降も東京ディズニーリゾートに計1000億円の成長投資を計画する。営業費用には今後も増加圧力がかかる。仮に1000億円を20年で定額償却するとして現状の固定費に加味して試算すると、現状の単独営業利益を維持するには4%程度の値上げが必要で、逆に値上げしない場合は営業利益が3%前後減る可能性がある。
  • さらなる値上げは長期的な顧客基盤を弱めかねない。可処分所得の少ない若年層が離れ、高齢化が進むからだ。15年3月期と25年3月期の東京ディズニーリゾートの年代別の来園者比率を比べると18歳未満の割合は5.2ポイント低下し24.9%となった。一方で40歳以上の割合は13.5ポイント増え、全体の3分の1を占める。
  • ジレンマ解消の手掛かりになりそうなのがロボット活用だ。25年4月には園内をよちよちと歩くスター・ウォーズの二足歩行ロボット「BDXドロイド」がお目見えした。OLCは「楽しさの提供であり、自動化・効率化と関連はない」とするが、普及すれば人手をかけず来園者を楽しませる新たな手段になる可能性を秘める。
  • 23年には調理用ロボット企業に子会社のオリエンタルランド・イノベーションズ(千葉県浦安市)が出資した。「労働集約型のビジネスを営む弊社グループにおいても省力化は大きなテーマ」と狙いを説明する。ショーや飲食調理にロボットを活用すれば人件費を圧縮できる。
  • 4月に就任した高橋渉社長は6日「単なる値上げは考えていない」などと述べ、価格見直しを示唆した。発言が伝わるとOLCの株価は一時、前日終値比8%高に急伸した。株式市場も値上げを軸にした利益成長には限界があるとみていることの表れといえる。値上げと顧客満足のジレンマを脱せるか、新社長のバランス感覚にかかっている。