消費税収増は誰のもの? 4兆円、医師賃上げ圧力 診療報酬改定の争点に
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250707&ng=DGKKZO89851080W5A700C2NN1000
【コメント】
  • 参院選を前に、この土日は各党党首を中心とした論戦が始まっています。
  • その中で消費税の問題が大きな争点となっていますが、自民党の厚生労働族議員が変な気炎をあげています。
  • 消費税はインフレなどによって毎年税収増となっていますが、この増加部分を医師の賃上げに充てるべきだという意見です。理由はそもそも消費税は社会保障に充当される税であり、医療も社会保障の枠組みに入っているからということです。
  • 理屈は理解できますが、現状を踏まえ相対的に医師の賃上げに充てることが本当に正しいのかを自民党の厚生労働族議員は真面目に考えているのでしょうか?
  • 記事にもあるように、「病院の勤務医の年収は約1460万円、開業医は約2630万円と水準は高い」です。普通のサラリーマンがらすると羨むほどの高額な年収です。中には自己犠牲により社会貢献をしている尊敬すべき医師はいますが、大多数を大金持ちです。
  • 一方、社会保障のもう一つの要である介護従事者や少子化対策を担う保育士の年収はどうでしょうか?医師とは比べものにならないくらい低賃金です。
  • このような現状をわかっているはずの自民党の厚生労働族議員が「消費税増税分を医師の賃上げに!」と主張することは、まさに失職予防策としかうつりません。
  • 国会議員は、日本全体を見渡した政策を提言すべきで、このような主張をする国会議員は不要だと私は感じます。
【記事概要】
  • 4兆円に上る消費税の増収分を医師らの賃上げに充てようと医療界や厚生労働族議員が気勢をあげている。「消費税は社会保障財源」との原則を強調し、減税での国民への還元は難しくても「医療分野には回せるはず」と主張する。年末の2026年度診療報酬改定の争点の一つになる。
  • 消費税の税収は税率が8%から10%になった効果が通年で出た初年度(20年度、国税分)は21兆円だった。財務省が2日発表した決算概要によると、24年度は25兆円に達した。25年度は予算で24.9兆円だが、上振れする可能性が高い。
  • 政府が毎年公表する消費税の使い道を示した資料によると、伸びた税収の7~8割が財源不足の補填など「国債発行による次世代の負担」を減らすために使われている。
  • 消費税法は税収を年金や医療、介護に関する社会保障給付と少子化対策に充てると定める。国民医療費の4割は公費(税)で賄っている。
  • 日本医師会は「経済成長の果実である消費税の増収分を社会保障に活用すべきだ」(松本吉郎会長)と訴える。6月の自民党内の会議でも厚労族議員を中心に医師会に同調する意見が相次いだ。
  • 税収が増えても高齢化などで伸びる社会保障費に追いついていない。財務省の25年度予算に基づいた説明によると、国の社会保障の経費は34兆円ほどだ。消費税収24.9兆円のうち、自治体に回る分を除くと20.1兆円で13.9兆円不足する。
  • 医師の賃上げのために診療報酬を大幅に上げると、それに連動して患者の窓口負担が増えたり、会社員らが払う社会保険料率の引き上げにつながったりする可能性もある。与野党ともに訴える「現役世代の保険料負担の軽減」に逆行する。
  • 物価上昇などの影響で医療機関の経営が厳しいのは確かだ。全国の病院でつくる6団体が3月に公表した調査では、対象とした1700ほどの病院の61%が赤字だった。
  • 厚労省の23年度の医療経済実態調査によると病院の勤務医の年収は約1460万円、開業医は約2630万円と水準は高い。だが同省の賃上げ調査によると、24年の医療・福祉業の賃金改定率は2.5%と全産業の4.1%を下回った。
  • 今年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)には医療現場の賃上げに関し「経済・物価動向などを踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と書き込まれた。
  • 財務省幹部は「賃上げや病院の経営安定に必要な対応は検討する」と語るが、消費税の動向と結びつけた議論には否定的だ。「社会保障の充実」は医療だけでなく、介護や少子化分野でも要求があり得る。年末までの社会保障に関する予算編成では増えた消費税収の扱いが重要な伏兵となる。