外国人規制どうする
推進派「住宅高騰など問題視」 慎重派「成長への逆風を懸念」
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250715&ng=DGKKZO90025030U5A710C2EA2000
【コメント】
  • 20日の参院選で外国人規制がクローズアップされています。
  • 外国人規制が盛り上がっている主な理由は、投資目的の不動産購入や社会保険料未払い、外国人の免許切替による交通事故多発などがあります。
  • 参政党を始め、自民党、維新、国民民主などが、運転免許問題や不動産購入などに規制をかける方針を表明。一方立民、公明、れいわが共生の立場をとっています。ただ突き詰めればどの党の政策は五十歩百歩と思われます。
  • 各党は、インフレ対応政策が明確になったことから、異なる論点で票集めに奔走している感があります。
  • 外国人に対し過度に閉鎖的になる政策は良くありませんが、不動産投資や交通事故対策などは明確な方向性を示し規制を徹底すべきと感じます。
【記事概要】
  • 20日投開票の参院選で外国人規制が争点に急浮上している。与野党は外国人の不動産購入規制を導入したり、社会保険料の未払いを防ぐ制度を整えたりするよう訴える。人口減少下の日本が成長を維持するため、政府は観光立国や海外からの高度人材の受け入れを進めてきた。過度な規制は成長への逆風となる。
  • 外国人規制を主導するのが新興政党の参政党だ。「日本人ファースト」を公約の柱に掲げて「行き過ぎた外国人受け入れに反対」と記す。単純労働者の受け入れを制限し、外国人による土地購入や生活保護制度の利用を厳しくする。
  • 支持集める参政
  • 参政党の神谷宗幣代表は「行き過ぎたグローバリズム」を問題視する。13日の千葉県内の街頭演説で「貧富の差が広がった。中間層はどんどん貧しくなった」と話した。6月の都議選で保守層の支持を集め、3議席を得るサプライズを起こした。既成政党からは「排外主義を訴える勢力にはくみしない」(公明党の斉藤鉄夫代表)と警戒の声があがる。それでも各党は外国人規制を意識せざるをえなくなった。保守層の取り込みを巡って、憲法改正や夫婦別姓の維持、防衛力強化に並ぶ主要テーマとなっている。「保守」を掲げる政党は参政党に追随する。
  • 石破茂首相(自民党総裁)は10日のBSフジ番組で規制強化を進める意向を示した。自国の運転免許証を日本のものに切り替えた外国人が交通事故を起こす例に触れ「(日本)国民が不安になり、取り扱いが不公平だという思いを持つ」と話した。自民党は免許切り替えの審査厳格化を公約に掲げる。首相は8日の閣僚懇談会で在留外国人の犯罪などに政府が一体で対処するため内閣官房に事務局組織を設けると表明した。自民党が公約に記した内容を選挙中に実現した。自民党は公約に「違法外国人ゼロ」を明記して対策をアピールする。
  • 日本維新の会は公約で「外国人の無秩序な増加や地域摩擦の弊害」への対応を取り上げた。外国人の受け入れ数に制限を設ける。一部の査証(ビザ)の発給条件も厳しくする。訪日外国人が対象の消費税の免税制度を念頭に「あり方を再検討する」とうたった。
  • 国民民主党は投機目的で不動産取得する外国人に「空室税」を課すと公約に掲げる。住宅価格や家賃の高騰を問題視し、空室税が投機を防いで価格を下げれば、家計支援につながると提唱する。
  • 自民党幹部は外国人規制に関し「費用対効果が高い政策だ」と説明する。巨額の予算をかけずに規制の実効性を高められ、有権者の関心も集めやすいとみる。
  • 立民は共生訴え
  • 一方で、過度な規制への懸念の声も相次ぐ。立憲民主党の野田佳彦代表は12日、仙台市の街頭でSNSを通じて演説テーマを募ったところ最も多かったのが「共生社会・人権」だったと明かした。物価高対策と並ぶ「新しい争点が生まれている」と話した。野田氏は「外国人を排斥して得点を稼ごうとする政治勢力があれば私は断固として戦う」と強調した。参政党が念頭にある。「働く現場では外国人がいないとやっていけない人手不足だ」と話し、外国人労働者らとの共生を唱えた。
  • 公明党も12日発表した追加公約で外国人との共生を訴えた。新しい司令塔を設けて在留外国人の規制に目配りしつつ「秩序ある共生社会」を実現すると明記した。
  • 参院選で外国人規制が争点となる状況に、日本で暮らす外国人から不安の声が漏れる。都内のコンサルティング会社で働く韓国出身の女性(27)は「外国人全体に偏見や差別の目が広がらないか」と語る。日本のドラマや音楽が好きで8年前に来日し、永住権も申請した。「今後も住み続けたい。でも排外的な雰囲気が広がれば気持ちは変わるかもしれない」と明かす。
  • 都内の人材会社で働くインドネシア国籍の女性(30)は「街頭の選挙活動などで声高に外国人規制を主張しているのを見ると、外国人が日本にいてはならないのかなと思わされる」と不安を漏らす。
  • 米欧で移民や在留外国人の排斥を唱える反グローバリズムの主張が勢いづく。トランプ米政権は不法移民の国外強制送還を看板政策に掲げる。欧州も反移民を訴える極右政党が存在感を強める。こうした潮流が日本に及んできた面もある。
  • 参政党の神谷代表は3日の日本外国特派員協会での記者会見で、親近感を持つ政党に、移民排斥を訴える「ドイツのための選択肢(AfD)」やフランスの極右政党、国民連合(RN)を挙げた。街頭演説でトランプ米大統領らと「課題意識は一緒だ」と主張する。
  • 政府は成長戦略の一環で、高度な専門知識や技能を持つ外国人や訪日外国人の受け入れ拡大をめざしてきた。日本経済にとって、止まらない少子化が潜在的な成長率を押し下げる要因となっている。外国人材の活用で労働人口を補い、成長を支えようとの狙いだ。過度な外国人への規制はこうした流れに逆行する。日本の成長にとってマイナスに働く可能性がある。