【コメント】
- テレビなどでもご覧になった方は多いと思いますが、改めて今朝の朝刊で、この石破首相の発言にいての論説がありましたので掲載します。
- 首相は悪い人ではない(むしろ純粋)と感じますが、交渉下手としか言いようがありません。
- 善悪の議論は分かれますが、安倍さんがご存命だったら事態はもう少し改善していたのではないかと感じます。
【記事概要】
- 石破茂首相は9日、参院選の街頭演説で、日米関税交渉について「国益をかけた戦いだ。なめられてたまるか」と発言した。トランプ米政権が日本に対して25%の関税を課す方針を示したことに対するもので、首相は、同盟国であっても日本の国益を守るために妥協せず、正々堂々と主張すると述べた。
- トランプ政権に対する石破首相のこのような反応と国民とのコミュニケーションは、違和感が拭えない。首相として適切な対応とは言い難い。
- まず、トランプ政権が各国に対して行っている要求は、関税に焦点が当たっているものの、それは一部に過ぎない。大きくはこれまで米国が担ってきた「グローバルな公共財」(ミラン米大統領経済諮問委員会委員長)の供給見直しへの協力の求めである。ここで「公共財」として想定されるのは、第一に安全保障、つまり米国による防衛力の供給であり、第二に、準備通貨としてのドルの供給である。
- 後者は、米国が自国市場を開放することで各国がドルを稼ぎ、それを国際取引のインフラとして使用し、各国が経済成長を遂げてきたことを指す。このことが米国の産業にダメージを与えてきたとの考えから、自国産業を保護するために各国に対し関税を課すとの発想につながっている。
- つまりこれは、従来リーダーが多めに負担してきた国際的な枠組みの見直しを、各国に求めているようなものだ。「なめられてたまるか」という反応はこうした文脈を十分に考慮していないように映る。
- 石破首相が行うべきだったのは、米国の要求を理解した上で米国に納得感のある日本の「協力」を議論し、それについての国民の理解を正面から求めることではなかったか。
- 石破首相は参院選を前に、一部国民の抵抗の強い防衛費増額の問題を国民に提示することを避け、「それは日本が決めること」との立場を強調してきた。だが米国はしびれを切らし、台湾有事の際の日本の協力を求めてきている。コメ価格の高騰は、米国からのコメ輸入を、安全保障の強化の文脈で論じる好機であったが、その機会も逸した。
- 今となっては遅きに失した感がある。参院選後に予想される政権の弱体化は、国民との難しいコミュニケーションの余地をさらに狭め、この政権と米国との交渉は一層難航することだろう。