くすぶる「石破おろし」 自民内に続投反対の声 選挙3連敗、揺らぐ政権
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250722&ng=DGKKZO90165470S5A720C2EA2000
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【コメント】
- 昨日、参院選を受けた石破首相の記者会見がありました。
- 会見前から取り沙汰されていた「首相続投」が正式に会見でご本人から表明されました。これに対し、野党のみならず自民党内からも批判の声明が出ています。
- 石破首相は「国民から比較第一党の立場を頂いた」と述べていますが、詭弁との声が多くあがっています。
- 石破首相の真意は計りかねますが、8月1日を期限とする米国との関税交渉に責任感をもってやりきりたいという思いがあるように感じられます。ただレイムダックになっている首相に対し米国側がまともに相手にするのかは疑問です。また首相みずからの「なめられてたまるか」発言も米国側にネガテイブにはたらいています。
- しかしだからと言って、8月1日に向け石破政権に代わって関税交渉を行える体制は整っていないことも事実です。
- 石破首相は、首相の地位に固執するような人物ではないと見受けられますが、国政を第一に考えるならば選挙前から関税交渉の方向付けをしておくべきだったと感じます。それとも、石破首相は水面下で既に手を打っているのでしょうか?
- 関税交渉に逆転ホームランは望みにくく、石破首相に代わって引き受ける人物はいないのではないかと思われます。この点も踏まえ、石破首相は辞任表明で無責任に放り出すことはせず、一旦続投を表明したのではないかと思います。
- いずれにしても、残された時間はあと1週間です。一旦25%の関税発動となるとの予測もできてしまいます。
【記事概要】
- 石破茂首相は参院選から一夜明けた21日の記者会見で続投を表明した。日米の関税交渉や物価高の「国難」を理由に挙げた。自民党内では続投に批判の声が出始めており、「石破おろし」の動きもくすぶる。政権の足元が揺らげば政策推進力は弱まる。
- 首相は自民党本部で総裁として参院選を総括する記者会見に臨んだ。「責任」という言葉を10回用いて続投の考えを説明した。大敗の責任をとって首相の座を退くのではなく、国政を停滞させないために続投するのが責任だと淡々と語った。
- 「これから先はまさしくいばらの道だ。より真摯に丁寧に他党との議論を深め、赤心報国の思いで国政に当たっていく」と訴えた。真心を持って国のために尽くすという意味の四字熟語を持ち出した。
- 2007年の参院選後の両院議員総会では当時の安倍晋三首相に辞任を迫った。今回は立場がかわり正反対の行動をとっているようにも見える。首相はこの経緯を質問され「なぜ続投するのか、国民の理解を得る必要があるだろうと申し上げたものだ」と18年前を振り返った。
- かつての自らの言葉との整合性を意識し、辞めない理由を丁寧に説明したと強調した。自民が「比較第1党」だと触れ関税、物価高、自然災害への対応に責任を持つと断言した。
- 壇上に並んだ自民幹部は一様に硬い表情で首相の記者会見を聞いていた。参院選に敗れ2024年10月の衆院選、25年6月の東京都議選に続く3連敗となった。
- 首相の続投意欲とは裏腹に党内の不満を抑えきれるのかといった問題がある。記者会見に先立ち自民の臨時役員会では首相続投への批判が出た。
- 出席者によると、福田達夫幹事長代行が20日の投開票後に同僚議員から20本ほどの電話を受けたと話した。「若手は不平・不満がたまっている。お含みおきください」と伝えた。首相からその場で明確な返答はなかった。
- 首相が森山裕幹事長ら党執行部を全員続投させると明言したことにも疑問の声が出ている。
- 河野太郎選挙対策委員長代理は21日、辞表を木原誠二選対委員長に提出した。自身のX(旧ツイッター)で明かした。河野氏は「関税交渉の最中に首相がお辞めにならないのは理由があるにせよ、幹事長がまだ辞表を出していないのはおかしい」と投稿した。
- 政府高官は「安倍さんが参院選で負けたとき、あれだけ退陣を迫った人が衆参負けて首相を続けるのは果たしていいのかという気持ちはある」と吐露した。
- Xでは「#石破総裁の退陣を求める」のハッシュタグが広がり始めている。東京都や福島県、山口県などの自民の地方議員も使っている。「今こそ一区切りが必要だ」「選挙3連敗で続投などありえない」などと書き込んでいる。
- 自民の高知県連は21日、参院選敗北の責任に関し、党総裁の早期退陣を党本部に申し入れる方針を決めた。副会長を務める尾崎正直衆院議員や梶原大介参院議員の名前で文書をまとめた。
- 党内で「石破おろし」の動きがうねりとなって強まる可能性はある。
- 自民の麻生太郎最高顧問と茂木敏充前幹事長は21日、都内で会談した。参院選大敗を踏まえて石破政権や党内情勢に関して意見を交わした。岸田前政権で要職を務めた両氏はいま非主流派とみられている。
- 麻生氏は20日夜に都内で鈴木俊一総務会長ら派閥幹部とも会っていた。
- 首相は09年の麻生政権で閣僚ながら「麻生おろし」に加担した。両者の溝はいまも埋まっていない。唯一派閥として残る麻生派が首相退陣を求めれば政権運営が行き詰まりかねない。
- 自民の小林鷹之元経済安全保障相は21日、参院選での大敗について「国民から最後通牒(つうちょう)をつきつけられた思いだ」と述べた。千葉県内で記者団の質問に答えた。
- 首相は31日に両院議員懇談会を開く考えだ。24年の衆院選後に開いたのと同様の会合で、参院選の敗北を受けた「ガス抜き」の場とする算段だ。党則35条に定める両院議員総会とは異なり、物事を決める場ではない。
- 一方でこれらの場で不満の声が強まれば、首相も無視し続けるのは難しくなる。党則6条には都道府県連の代表と国会議員の過半数の要求があれば総裁選を前倒しして開催できる規定もある。
- 8月1日にはトランプ米政権による相互関税25%の発動期限を迎える。首相が続投の大義に掲げる関税交渉がうまく進まなければ「石破おろし」の口実になりかねない。