日本、試される競争力 車・相互関税15%、日米合意 80兆円の投資支援枠、米からコメ輸入拡大
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250724&ng=DGKKZO90217230U5A720C2MM8000
【コメント】
  • どうやら日米関税交渉がまとまったようです。
  • 25%と言われていた関税は自動車を含め15%で合意。またコメと自動車の米国からの輸入をこれまでより優遇する。加えて日本から米国への投資額のコミットなどです。
  • これ受け昨日の日本株は大幅高、再び40,000円台を超えていき、今日も小幅ながら続伸する見通しです。関税未合意という不透明感が払拭されたことを好感した株高ですが、冷静に考えると自動車を中心にこれまでより高い関税がかかることは今後の企業業績にはポジティブには作用しません。今後の株価の動きには注意する必要があると思われます。
  • 今回の合意は、対米貿易黒字が減少し、一方で対米投資が増加することを踏まえると、実質的に円売りドル買いを加速する内容であり、昨日からドル円はやや円高に触れていることも違和感があります。
  • この合意を受け、石破首相の進退が注目されます。
【記事概要】
  • 日米両政府は22日、関税交渉で合意した。米国は日本に対する自動車関税(総合2面きょうのことば)を半減させる。幅広い品目にかける相互関税は15%とし、8月1日に発動予定だった25%から下げる。それでもトランプ米政権の発足前と比べると関税負担は重い。自由貿易の秩序が崩れるなか、世界最大の米国市場で日本が勝ち抜くための産業競争力が試される。
  • トランプ米大統領と赤沢亮正経済財政・再生相は22日午後、米ホワイトハウスで70分にわたり会談し交渉を妥結させた。日本側は政策金融による最大5500億ドル(約80兆円)の資金枠を設けて、対米直接投資を拡大させると約束した。
  • 会談には日本側から山田重夫駐米大使と財務省の三村淳財務官、外務省の片平聡経済局長、経済産業省の荒井勝喜通商政策局長も同席した。米国側は交渉責任者のベッセント財務長官、ラトニック商務長官、ルビオ国務長官らも出席した。
  • 相互関税の15%という税率は対米貿易黒字国のなかでは現時点で最低水準となる。
  • 従来の税率が15%未満の品目は、相互関税と合わせて一律15%の負担となる。もともと15%以上の税率がかかる品目には相互関税をかけないことにした。15%の相互関税をそのまま既存税率に上乗せするわけではない。
  • 米国が各国・地域と貿易交渉をするなかで、この仕組みを認めたのは日本が初めてとなる。
  • 日本がこだわった自動車関税は、日本車の輸出台数に関係なく税率を12.5%とする。これまでトランプ政権は輸入車に25%の関税を課してきた。米国は自動車関税と別に乗用車に2.5%の関税をかけており、日本車の税率は計15%となる。
  • 自動車部品の関税も同様に、従来の税率と合わせて一律15%にする。鉄鋼・アルミニウム関税は合意の対象外で、今後も50%の税率がかかる。
  • 日本側は米国車の輸入が円滑に進むよう、安全性確認の手続きを簡素にする。ボーイング社の航空機を100機購入する意向も米国側に示した。
  • トランプ氏は23日、自身のSNSに「日本は数十億ドル相当の軍事装備品などの購入に同意した」と投稿した。日本の防衛費との関連は明らかにしていない。
  • 日本は農産品を巡っては関税など既存の枠組みを変えないまま米国からの輸入を増やす。輸入関税をゼロとするミニマムアクセス米は年77万トンの総量を維持し、この枠内で米国からの調達を拡大させる。
  • 米ブルームバーグ通信は関係者の話として、日本が米国産コメの調達を75%増やすことで合意したと報じた。
  • 日本側は合意に向けて、工場新設など巨額の対米直接投資も約束した。石破茂首相は赤沢氏がトランプ氏と会談する前、「『関税よりも投資』で徹底的に押せ」と電話で指示した。
  • 赤沢氏は投資計画を「ジャパン・インベストメント・アメリカ・イニシアティブ」と呼んだ。半導体や医薬品、造船などの経済安全保障に関わる分野で日本企業の対米投資を拡大させる。
  • 日本企業の投資を増やす呼び水とするため、日本政府は政府系金融機関による最大5500億ドルの出資・融資・融資保証枠を新設する。両国は投資を受けて生産した製品を、主に米国内の用途に向けることも確認した。
  • トランプ政権は日本に課す相互関税を巡り、予定していた25%から15%に下げた。それでも日本企業にとって対米輸出の負担が増すことに変わりはない。トランプ政権発足前の米国の平均関税率は3.3%だった。
  • 両国はまだ法的拘束力のある合意文書に署名していない。22日の合意には「再び関税を上げない」との条項がないという。最終合意への作業がもたつけば、トランプ氏の一存でまた税率が上がる可能性もある。
  • 加藤勝信財務相は23日、財務省内で記者団に「為替に関する内容は(合意に)含まれていない」と述べた。トランプ氏は日本が通貨安に誘導していると批判していた。