オルツ粉飾「経営陣が関与」 第三者委報告、社長は辞任 監査法人・VCも見逃す
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250729&ng=DGKKZO90311810Y5A720C2TB2000
【コメント】
  • 粉飾会計をしていたオルツの第三者委員会が不正会計を断定しました。
  • 循環売上という手口で、広告代理店に架空発注し現金を動かし、その現金を販売パートナーへ持っていき、売上に対する現金と見せかけて販売パートナーから受け取っていたというものです。
  • この規模の会社で100億円以上の粉飾がどうして監査法人や上場幹事証券会社が認識できなかったのか疑問です。財務諸表やエビデンスの表面だけを舐め、ビジネス実態の確認を怠った極めて典型例だと感じます。
  • IPO前後の企業の中には、このような例が他にも隠されている気が個人的にはします。
【記事概要】
  • 人工知能(AI)開発のオルツは28日、第三者委員会による調査報告書を公開した。売上高の過大計上による影響額は約119億円にのぼる。同委員会は「極めて不適切な行為。強い非難に値する」とし、経営陣の主体的な関与を指摘した。米倉千貴社長(48)は同日付で辞任した。監査法人やベンチャーキャピタル(VC)も粉飾決算を見逃したとされ、新興市場の上場審査の信頼性が揺さぶられている。
  • 米倉氏の後任に、日置友輔・最高財務責任者(CFO、34)が就任する。第三者委の調査結果によれば過大計上による水増し額は最大で公表した売上高の9割にのぼり、日置氏も不正会計に関与していたと指摘する。
  • 米倉氏は「決算の内容を大幅に修正せざるを得ない状況に至ったことを踏まえ、辞任すべきであると判断した」とコメントした。日置氏は「自身の進退を含めた抜本的な組織改革を早急に進める」としており、暫定的な社長就任となる可能性が高い。
  • 今回公表した報告書では、循環取引の手口や経営状況が明らかになった。オルツは広告宣伝費として広告代理店4社に約138億円、研究開発費として事業者2社に約16億円を支出。その後、広告代理店を経由して「スーパーパートナー(SP)」と呼ばれる販売業者から架空の売上代金を回収する「循環取引」をしていた。
  • こうした経営手法に頼る一方、主力サービスで稼げていなかったという実態が浮かび上がる。オルツはサブスクリプション(継続課金)型で議事録サービス「AI GIJIROKU」を提供し、2024年12月時点で有料会員数は2万8699件としていた。今回の報告書によれば8万4615件のアカウント数のうち、有料会員数は5170件にとどまり大半が無料会員だった。
  • オルツの会計監査を22年まで担当していた監査法人は循環取引を指摘していたが、現任の中小監査法人のシドーに交代以降、オルツ側が示した広告宣伝費の発注書などを受けて循環取引を認識できなかった。第三者委は当初担当していた監査法人の社名を明らかにしていないが、大手監査法人の1社とみられる。
  • オルツ株は28日、値幅制限の下限(ストップ安水準)となる前週末比30円(33%)安の60円まで下げた。オルツは東京証券取引所から、有価証券報告書の虚偽記載や新規上場申請における宣誓事項に重大な違反を行った恐れがあるとして、上場廃止基準に抵触する恐れがある「監理銘柄(審査中)」に指定された。
  • オルツは24年10月に東証グロース市場に上場したばかり。新規株式公開(IPO)時に東証などを通じて市場に公開した決算数値のほとんどが虚偽だったことになる。報告書ではオルツが「適切な外形を取り繕うかの対応に及んだ」と指摘し、「資本調達の円滑性にも悪影響を及ぼす。誠に遺憾」と踏み込んだ。
  • 主幹事の大和証券は「一般論として、主幹事を務めた案件については適切な審査手続きを行っていると認識している。依頼があれば各種調査に協力する」としている。