【コメント】
- 先の参院選挙で外国人排斥運動的な主張を繰り広げた参政党が大きく議席を伸ばしたのは記憶に新しいと思います。
- その真因は昨今の「円安」にあるとの論評が朝刊にありましたので掲載します。
- 真実を突いている論旨ですが、その解決策に悩みます。
【記事概要】
- 先月の参院選では「日本人ファースト」という政治スローガンがヒットした。この国では外国人が不当に優遇されているという認識には誤解がありそうだが、その政党が国会内に勢力を得たからには立派な「民意」である。「危険なポピュリズム」などと一概に否定すべきではあるまい。
- ただし実際問題として今さら外国人観光客抜きには、わが国の個人消費は立ち行かない。建設や介護など、エッセンシャルワークの多くを外国人労働力に頼ることも、少子高齢化の進展を考えれば不可避であろう。今さら「日本人だけの日本」には戻れない。既にわが国総人口の3%は外国人が占めているのである。
- 重要なのはこの国全体を不要に排外主義的な方向に向かわせないことであろう。外国人による凶悪犯罪の被害を受けたという人はそんなに多くはあるまい。ただ「オーバーツーリズム」の被害は誰でもわかる。日本人が不利益を被っているという被害者意識を放置しておくべきではない。
- デフレの頃の日本経済は苦しくはあっても「消費者余剰」があり、要は「お値打ち商品」があった。それが昨今はインバウンド(訪日外国人)需要に奪われ、外食からホテル料金までが値上がりしてしまった。外資により不動産価格が上昇し、若い世代には手が届かなくなっている。
- しかるにこれらの問題はほとんどが円安に起因するものではないか。「弱い円」は今のコストプッシュ型インフレをもたらし、われわれの実質的な購買力を減少させている。
- それだけではない。かつては世界で強烈な存在感を誇ったわれらが通貨「円」が今では長期低落傾向から抜け出せない。ドル換算した日本人の平均所得は今や東南アジア諸国の高所得層に及ばない。この無力感こそが排外主義に力を与えている元凶であろう。
- 新型コロナウイルス明け後の世界では海外旅行がブームになっている。だからこそのインバウンドの活況であるのだが、わが国のアウトバウンドは今もピーク時の3分の2程度だ。昨年のパスポート取得率は17%と、米国の50%や韓国の40%を下回っている。
- 真に恐れるべきは外国人ではなく、われわれの通貨の価値が減じていることだ。かかる為替の心理的効果を、政策当事者は軽く見るべきではない。円安のコストは想像以上に重いのである。