投下資本利益率 合格ライン接近 低採算事業から撤退進む
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250829&ng=DGKKZO90971880Y5A820C2DTB000
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250829&ng=DGKKZO90971880Y5A820C2DTB000
【コメント】
- 日本企業の資本効率が改善しているという記事です。
- ROICスプレットという指標に注目している記事ですが、ROICスプレットとは「ROIC-WACC」です。つまりROIC(企業の資本利益率)とWACC(企業の資本調達コスト)を比較し、ROICがWACCをうわまわっていれば、企業価値を醸成しているということになります。
- 直近のデータとして23年度の数字を記事では使っていますが、ROICスプレットはマイナス0.07%で、2020年から0.88%ポイント改善していたようです。日本企業が資本効率を意識した経営を加速している証左であるといえます。
- ROICスプレットを改善するには、①事業の収益性を改善すること(→ROIC向上) ②高コストの資本を減らし低コストの借入を増やす(→WACC低下) の二つの方法があります。
- 近年、日本企業は株主還元強化に力を入れておりこれがWACC低下につながっています。一方で、日本企業は採算性の低い事業を終息させている傾向がありROICの改善を図っています。これらがROICスプレットの改善につながっています。
- しかし、まだROICスプレットはマイナス(マイナス0.07%)です。これは企業が自らの価値を毀損している状況ですので、特に事業ポートフォリオの入れ替えによるROICの改善加速が必須です。
(参考)
ROIC=ROIC = 税引後営業利益 ÷ 投下資本(資本+借入金)
WACC=資本コスト × 資本/(資本+負債) + 負債コスト ×(1-税率) × 負債/(資本+負債)
ROIC=ROIC = 税引後営業利益 ÷ 投下資本(資本+借入金)
WACC=資本コスト × 資本/(資本+負債) + 負債コスト ×(1-税率) × 負債/(資本+負債)
【記事概要】
- 日本の主要企業の資本効率が「合格ライン」に迫っている。2023年度に投下資本から利益を稼ぐ効率を示す投下資本利益率(ROIC)は資金提供者が期待する水準よりわずかに低い水準まで改善した。企業が資本効率への意識を一段と高め、低採算事業からの撤退を加速できるかが投資マネーをひき付けるカギになる。
- KPMGジャパンが主要上場企業321社を対象に調べたところ、ROICから加重平均資本コスト(WACC)を引いた「ROICスプレッド」(中央値)は23年度がマイナス0.07%だった。マイナス幅は20年度から0.88ポイント縮まった。
- ROICは投下資本から利益を生み出す効率のことで、WACCは株主や債権者が求めるリターンのことだ。ROICがWACCを上回るとROICスプレッドがプラスとなり、企業は価値を創造しているとみなせる。PBR(株価純資産倍率)も1倍を超える傾向がある。
- WACCは直近5年の株価の変動や、有利子負債と時価総額の比率などを基に個社ごとに算出。ROICとの差を調べた。ROICはROICスプレッドとあわせて評価することが重要だ。KPMGジャパンによると、自動車・輸送機業はROIC(中央値)が6.4%と17業種中で3番目に高い。一方でROICスプレッドはマイナス1.3%と15位にとどまる。
- 全体のスプレッド改善をけん引したのが23年度時点でROICスプレッドが5%以上の企業群だ。同企業群の23年度のROICスプレッドは7.82%と、20年度から約4ポイント改善した。
- ROICスプレッドが大きい企業の特徴は事業再編の有無だ。KPMGジャパンが対象企業をROICスプレッドで(1)5%以上(2)0%以上~5%未満(3)マイナス――の3グループに分け、最高財務責任者(CFO)向けのアンケート調査の結果と組み合わせて分析した。
- 資本収益性が低い事業について聞くと(1)の企業は「資本収益性が低い事業は抱えていない、または撤退済み」との回答が4割あった。一方(3)の企業で同回答だった比率は1割強だった。
- 事業の撤退が進まないのは社内で決定の仕組みが整備されていないのが大きな要因の一つだ。ROICスプレッドが低い企業ほど「撤退の意思決定のための基準やプロセスが設けられていない」と回答する比率が高く、(3)の企業では約4割あった。
- 日本経済新聞が個別企業のROICスプレッドを調べたところ、資本コストを考慮した事業撤退プロセスを設けている企業でROICスプレッドが高い場合が多い。
- KDDIは資本コストの基準を下回る事業などの売却や撤退を検討するプロセスとして、事業部門が過去4年分の出資案件を評価し毎年取締役会に報告する。重要性の高い案件は取締役会で今後の方向性を議論する。
- キリンホールディングスは各事業のROICが事業ごとのWACCを上回ることを事業継続の基本とし、改善が難しければ撤退を視野に入れる。花王も低収益性事業を見直すためのガイドラインを持つ。これにより、中国におけるベビー用紙おむつの現地生産を終了し、茶カテキン飲料「ヘルシア」に関する事業を譲渡した。
- あずさ監査法人の土屋大輔パートナーは「事業撤退基準を設ける企業はまだ少なく、あったとしても資本コストを織り込んでいるケースはほとんどない。日本企業の資本コスト経営が次の段階に上がるための課題だ」と指摘する。