海峡封鎖、経済に波乱 原油・LNGに上昇圧力 イランが報復 米国防長官「中東に部隊追加」https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260303&ng=DGKKZO94745800T00C26A3MM8000
【コメント】
- 引き続きイラン情勢です。
- 数日で収束するという予想もあったイラン情勢ですが、長期化する懸念が台頭し始めています。
- イランは約1億人の人口を有し、国土も日本の約4倍です。このような国をアメリカが統治をリードすることは実質不可能と言われています。
- また、ハメネイ氏は殺害されましたが、引き続きイラン革命防衛隊は徹底抗戦の構えを見せており、中東各国の米軍基地を激しく攻撃しています。
- 日本に対する切実な影響は原油です。記事にあるように、イランは原油の輸送ルートであるホルムズ海峡封鎖を宣言しました。ここを通過する船舶をもれなく破壊するということです。
- 原油価格は現状すでに短期間で15%上昇し70ドル台に達しています。100ドル台に達する可能性もあるとされています。
- この状況が長期化すると、ドル建てで取引される原油の購入コストが大幅に上昇し円安圧力が強まります。原油価格上昇とともに円安も加わるので、インフレ圧力が更に強まります。
- 「遠くの戦争は買い」との投資格言があるようですが、本当でしょうか?
【記事概要】
- エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡(総合2面きょうのことば)が事実上封鎖され、高騰した原油・ガス価格が世界経済の下押しリスクとなっている。米国・イスラエルとイランの衝突と混乱が長引けば、高インフレと低成長が同時に起こる「スタグフレーション」が現実味を帯びる。トランプ米政権の関税政策に揺れる世界経済は新たな試練を迎える。
- ホルムズ海峡は世界で消費される石油の2割が通過する要衝だ。イラン革命防衛隊は船舶各社にホルムズ海峡の航行禁止を伝えた。米国やイスラエルの攻撃に対する報復とみられる。安全が確保されないため、多くの船舶が航行を控える状態となっている。
- 米原油指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は2日、一時1バレル75ドル台と攻撃前の27日終値(67ドル)に比べておよそ1割上昇した。
- 英バークレイズのエコノミストは、攻撃前に1バレル70ドル台前半だった北海ブレント原油先物が近く100ドルに達すると予測する。石油輸出国機構(OPEC)などの有志国は1日、4月からの増産で合意したが「リスクのほうが大きく直ちに効果は出ない」と読む。
- 海峡の混乱が続けば液化天然ガス(LNG)の高騰も懸念される。
- 欧州調査会社ケプラーの船舶情報分析ツール「マリントラフィック」によると、ホルムズ海峡を通過したLNG船は2月28日から3月1日にかけて2隻と2月26~27日と比べて約8割減った。「世界のLNG供給量の18.5%が湾内に滞留している状態」という。原油タンカーは約5割減の28隻だった。
- 海峡封鎖に加え、エネルギー施設でも混乱が相次ぐ。カタールでは2日、工業都市ラスラファンの国営エネルギー会社カタール・エナジー施設が損傷し、LNGと随伴製品の生産を停止した。カタールによるとイランの無人機攻撃を受けた。
- ラスラファンは生産能力が年7700万トンと世界最大級のLNG拠点。報道を受け、欧州の天然ガス価格指標のオランダTTFは一時、1メガワット時あたり47.85ユーロと、前週末終値比47%上昇した。
- 需給逼迫の状況が続けば、在庫量が数週間程度と余裕の乏しい日本で電気代の上昇につながる可能性がある。米ゴールドマン・サックスは2カ月間の海峡封鎖なら欧州やアジアの指標価格が100万BTU(英国熱量単位)あたり米ドル換算で35ドルと攻撃前の3倍以上に上昇する可能性が高いと予測した。
- ケプラーのミシェル・ブルハード政策・地政学リスク部門責任者が警戒するのは、イランが近隣国への攻撃能力を保持したまま地域紛争へと発展する長期化シナリオだ。「イランは指導者1人を排除すれば終わる体制ではない。1週間かそれ以上戦闘が続く可能性がある」と指摘する。
- ヘグセス米国防長官は2日、イランへの地上部隊派遣は否定しつつ、中東地域に追加の部隊を派遣すると明らかにした。
- 日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運3社は引き続き同海峡の航行を見合わせている。
- 一般的に世界経済が減速して需要が弱くなれば、原油を含めたモノの価格には下落圧力がかかる。ただ地政学的な要因による原油高はインフレ率を押し上げる一方で、消費や投資を弱めて景気後退の可能性を高める。
- 米国がイランの核施設を攻撃した2025年6月に英オックスフォード・エコノミクスが出した試算によると、原油価格が115ドルに跳ね上がると米国のインフレ率は5.5%、ユーロ圏では3.5%に高まる。
- 26年の世界の成長率は2.0%と0.4ポイント押し下げられる。米欧日など西側諸国だけでなく、原油の輸入国である中国経済にも打撃となる。
- スタグフレーションへの対処が難しいのは、米連邦準備理事会(FRB)をはじめとした中央銀行が景気悪化に備えて素早く利下げしにくいためだ。ガソリン価格の高騰は輸送コストの上昇を通じて物価全体に影響し、早すぎる利下げはインフレ率の高止まりにつながりかねない。
- 金利先物市場は1日時点でも、FRBが4月の米連邦公開市場委員会(FOMC)まで追加利下げを見送る確率を8割程度とみている。パウエル議長が議長ポストを退任する5月までは動けないとの見立てだ。
- 米国民の生活コストに直結するガソリン価格の値上げにつながれば、トランプ政権にとっては11月の中間選挙で逆風になる可能性も強まる。
