企業の海外志向、鮮明に 直接投資2年連続最高 資産目減り恐れ、家計でもhttps://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260513&ng=DGKKZO96187140S6A510C2ENG000

【コメント】

  • GW中のドル円の介入効果が減衰しています。
  • 日本政府による介入で160円台から155円台へ一気に円高へ持っていったにもかかわらず、1週間が経過した今朝は157円台半ばまで円安が進行してしまっています。
  • 原因は以前から言われている潜在的な円売り圧力です。
  • 企業は日本国内の人口減少などによる需要減を見通し、海外市場に収益確保を求め海外への投資を進めています。今後は米国への5500億ドルの投資もあります。日本市場の魅力が薄れていくので海外で得た利益の国内への還流(ドル売り円買い)は期待薄です。
  • また皆さん実感のあるように、NISAでのS&P500やオルカンへの投資が爆増しています。オルカンの残高はわずか1年強で2倍と急増しているそうです。この四半世紀で家計の円建て資産の増加率は6割だったのに対し、外貨建て資産は8倍に膨らんだそうです。
  • 円安の背景にあるのが「実質的なマイナス金利政策」の継続です。利上げのできない円を保有することが「低金利高インフレで円の価値が溶けていく」、「円で資産を保有することはリスク」との風潮が強まり、特に20代〜40代は少しでも余裕資金があると外貨建て資産の投資を行う傾向があります。
  • 高齢者が死亡し持っていた円預金が相続されると、外貨建て資産に転換していくという現象も円安を加速しているようです。
  • 利上げを実施すれば、住宅ローン負担が重くなる、新規に住宅を買いづらくなる、相対的に円預金の魅力が増し日本株が下落する、国債利払額が増加し増税懸念が高まる、など弊害も多く悩ましいところです。

【記事概要】

  • 「人口が増え、住宅不足が見込まれる米国やオーストラリアなどで住宅事業の拡大を図る。国内市場の縮小はある意味、仕方ない」。住友林業の光吉敏郎社長はこう話す。同社は2月、42億ドル(6500億円超)を投じて米住宅大手トライ・ポイント・ホームズ(TPH)を買収すると決めた。
  • 買収資金は相対的に金利の低い円建てで調達し、ドルに転換して投資するスキームを組む。為替取引上は円売り・ドル買いの需要が生まれる。
  • 日本企業が成長機会を海外に求める動きが広がっている。海外での工場建設や企業買収などの対外直接投資(実行から回収を引いた純投資額)は2025年におよそ33兆円となった。現行基準で2年連続で過去最高を更新し、10年前からほぼ倍増した。
  • 日本企業は1ドル=70~80円台の過度な円高を含む「六重苦」に悩まされていた10年代前半から海外投資を拡大してきた。当時は輸出競争力の低下を危惧した製造業の生産拠点の分散が目立った。
  • ここ数年の円安で海外投資が割高になったにもかかわらず、投資の勢いはむしろ増した。企業の顔ぶれも製造業だけでなく、住宅など内需型産業に広がる。
  • 国内では人口減が加速し、市場の縮小と人手不足という需要・供給の両面でビジネスの継続が難しくなっている。東日本大震災以降の電力不足やサプライチェーン(供給網)の国際分散といった事情も重なり、円安下でも企業の国内回帰の機運は乏しい。
  • JFEスチールは25年末、インド鉄鋼大手JSWスチールの子会社に約2700億円出資することを決めた。「経済合理性は確認していくが、長い目でみてやるべきことはやらなきゃいけない」。親会社JFEホールディングスの寺畑雅史取締役は円安下でも海外投資を続ける覚悟を示す。
  • 今後は日本政府がトランプ米政権との通商交渉で合意した5500億ドルの対米投資も実行段階に移る。ドル需要の拡大が持続的な円安を招く構図は一段と強まる。
  • 日本企業が対米投資を増やしても、稼いだドルを円に替えて国内に還流させれば一定の円買い・ドル売りが生じる。だが現状では自動車産業を筆頭に国内メーカーは米国で得た利益を再投資に回し、米工場での能力増強などに充てるケースが多い。
  • 財務省の国際収支統計によると、日本企業が対外投資で得る稼ぎのうち4割は海外にとどまる。こうした企業行動も根強い円安の根底にある。
  • 投資先の海外シフトは家計でも鮮明だ。
  • 三菱UFJアセットマネジメントが世界株に分散投資するインデックス型の投資信託、通称「オルカン」の運用残高が2月に初めて10兆円を突破した。新しい少額投資非課税制度(NISA)を追い風に、残高はわずか1年強で2倍と急増した。同社担当者は「半分以上はつみたて投資で資金が流入している」と話す。
  • みずほ銀行の唐鎌大輔氏の試算では、25年末の家計の外貨建て資産残高は130兆円と金融資産全体の5.5%を占める。この四半世紀で円建て資産の増加率は6割だったのに対し、外貨建て資産は8倍に膨らんだ。
  • 背景にあるのが「実質的なマイナス金利政策」の継続だ。
  • 日銀の政策金利の引き上げと連動し、限りなくゼロに近かった銀行の預金金利もじわじわと上昇している。2月には三菱UFJ銀行が1年物の円定期預金金利を0.4%と約17年ぶりの高さに引き上げた。
  • だが消費者物価の前年比上昇率は2%程度での推移が続く。銀行に預金を置いても物価変動を考慮した実質的な利回りはマイナスの状態で、資産が目減りすると気づいた家計は海外に目を向ける。
  • とりわけ「円依存」への危機感が強いのは現役世代だ。ソニー銀行では、外貨預金口座を持つ顧客の4割が40代以下という。27年開始のこどもNISAでは親や祖父母の円預金の一部が子や孫の口座に移り、海外資産への投資が加速する可能性もある。
  • 円安の招くインフレと実質金利の低下が預金の海外シフトを誘い、さらに円安が定着する――。そんな循環が始まっている。「現状は急性的なキャピタルフライト(海外への資本逃避)とは異なるが、マイルドな逃避が始まっている」。みずほ銀の唐鎌氏はこう警鐘を鳴らす。