新興の「創業期」 細る投資マネー 昨年42%減、VCの選別強まる 新規上場社数の減少でhttps://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260605&ng=DGKKZO96713270V00C26A6MM8000

【コメント】

  • 日本のスタートアップに資金が集まりにくくなっているとの記事が掲載されています。
  • 東証グロース市場での新規株式公開(IPO)が減少傾向にあり、投資家が投資先を厳選している表れです。
  • これまでIPOがやや乱立していた傾向でしたが、上場基準の厳格化により、創業期に投資をしIPO時にリターンを得るという構図が成立しにくくなっていることが影響しています。
  • やみくもに創業企業に投資資金をばら撒くといった投資手法は控えるべきですが、真に力があり価値醸成が期待できる企業には積極的に投資する環境を維持することは、近年ニュービジネス創出が低調な日本にとって重要だと思います。
【記事概要】

  • 創業から間もない時期のスタートアップに資金が集まりにくくなっている。2025年の資金調達額は24年比42%減の199億円に急減し、過去10年で最低だった。東証グロース市場で新規株式公開(IPO)が減り、投資家による選別が強まっている。
  • 日本経済新聞社が出資する投資家向けサービスのケップル(東京・港)が国内未上場新興の新株発行に伴う資金調達を集計した。資金調達時についた企業価値が5億円未満だった企業を創業期、20億円未満を事業立ち上げ期、50億円以上を成長期とした。
  • 事業立ち上げ期の25年の資金調達額は29%減の932億円、成長期は8%減の3844億円だった。全体の調達額は14%減少した。成長力の見極めが難しく、リスクが高い創業期の落ち込みが目立つ。
  • 従来、ベンチャーキャピタル(VC)は創業期や事業立ち上げ期のスタートアップに投資することが多かった。事業の可能性を見極めにくく株価が低い時期に投資し、成長してIPOに至った際に高値で株を売って売却益を得る戦略だ。
  • 東証グロース市場で上場を維持するための時価総額基準は30年に従来の40億円以上から100億円以上に引き上げられる。小粒な上場企業を減らす狙いだが、この影響でIPOの数も減り「成功の方程式が崩れて資金調達が難しくなっている」とデロイトトーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬社長は話す。
  • 創業期や事業立ち上げ期は先行投資で赤字が続くことが多い。金利の上昇で将来の利益を割り引いた現在の株式価値が下がり、調達金額も伸び悩みやすい。人工知能(AI)開発のオルツの不正会計事件で上場審査の確認項目が増え、VCもスタートアップ投資に慎重になっている。
  • VCの投資余力が細っていることも一因だ。産業革新投資機構(JIC)によるとVCが投資家から集めた資金のうちまだ出資先を決めていない残高は、25年末時点で推計約1兆3000億円と24年比12%減った。IPO市況の低迷でVCがリターンを出しにくくなり、次のファンドの組成が難しくなっている。
  • 不確実性が高い創業期への投資を避け、成長期の有望企業に資金を集中させる傾向が強まっている。成長期の調達が全体に占める割合は60%と、直近10年の中で最も高い。
  • 上場維持基準の厳格化などでエグジット(出口)環境は大きく変わる。投資家による選別が厳しくなり創業期へのマネーが細るなど短期的には痛みが先行している。こうした状況が続けば国のスタートアップ創出計画にも影を落とす可能性がある。