債務圧縮は高成長頼み 「官民370兆円投資」政府戦略  過去15年は不発https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260625&ng=DGKKZO97137440V20C26A6EA2000

【コメント】

  • 高市政権の「経済財政運営と改革の基本方針」が7月に公表される予定ですが、先立って人工知能(AI)・半導体などの戦略17分野に2040年度までに官民で総額370兆円超を投資する計画をまとめたと報道されています。
  • ただ、この370兆円の内の官からの投資額は、財政規律の観点での論証ができていないようで開示されていません。
  • 2011年度以降にも数回、財政支出によるGDP(国内総生産)の向上目標を政府が発表したことがありますが、いずれも実績は目標を大幅未達となっており、国の借金だけが残ったという結果になっています。
  • 投資が実ってGDPが目標通り改善し税収が増加すれば良いのですが、過去の実績からすると金利上昇下で国債の発行残高が増加するリスクがあります。これにより円・株・債券のトリプル安を招く可能性があります。財政からの投資を否定するわけではありませんが、国民の人気取り政策で無駄な支出をせず、メリハリと付けた支出を実行すべきかと感じます。
  • 昨日ふと思い出したのですが、2020年に「オペレーションZ」というドラマがWOWOWで放映されていました。日本の財政が破綻し悲惨な結果になる様子を描いたドラマです。現在Amazon Primeに入会していれば視聴可能ですので興味がある方はご覧ください。

【記事概要】

  • 政府は24日、2040年度までの財政試算を示した。投資のてこ入れで国内総生産(GDP)の伸びが加速し、対比で国・地方の債務が低下する姿を描いた。デフレ以前のような生産性の飛躍的な上昇を前提とする皮算用の構図は例年と変わらない。成長シナリオが実現しなければ債務だけが膨らむリスクがある。
  • 同日公表した「日本成長戦略」は人工知能(AI)などに向こう15年間で累計370兆円超を投資する計画だ。経済を左右する重要分野に国ぐるみで力を注ぐ産業政策は世界的な潮流でもある。
  • 明治大学の飯田泰之教授は「国内の製造拠点を回復し、成長につなげる重要な政策転換だ」と期待を寄せる。
  • 企業からも歓迎の声が上がる。小型衛星を開発するアクセルスペースホールディングスの折原大吾取締役は「リスクのある技術開発には大事な資金となる。事業を伸ばす段階での支援にも期待したい」と話す。

GDP比で改善

  • 内閣府は成長戦略の効果が十分に出る場合、実質GDPの伸び率が2030年代に1%台後半に高まるとはじいた。財政健全化の目安となる基礎的財政収支は28年に黒字に転換し、高市早苗政権が重視する債務の名目GDPに対する比率は年々下がり続ける。
  • 問題は実現性だ。試算をまとめた内閣府も24日の首相官邸での会議に提出した資料に「不確実性を伴うため相当な幅を持って理解される必要がある」と書き添えている。
  • 過去15年の年平均の実質成長率は0.7%にとどまる。この間、アベノミクスで財政支出を拡大し、金融緩和を続けてきたにもかかわらずだ。
  • 政策効果を楽観するシナリオはこれまで実現せずにきた。15年前の11年夏の財政試算は経済の地力を示す潜在成長率が15年度に1.8%まで高まると想定した。その後の試算も似たり寄ったりだ。実際は0%台半ばで低迷が続く。
  • 今回の試算も潜在成長率が36~40年度に1.8%になるとみている。技術革新を反映する「全要素生産性」が高まり、労働力の減少を補うイメージだ。生産性は日本経済がデフレに突入する前の1980~90年代並みのペースで上昇するのが前提で、実現は容易ではない。
  • 野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「試算通りに民間投資が増えなければ、この成長軌道は絵に描いた餅に終わる」と指摘する。

供給制約に直面

  • 数字が現実離れしていると映れば、市場の信認は揺らぎかねない。3月の経済財政諮問会議では米マサチューセッツ工科大学のブランシャール名誉教授は「政府内部の試算は投資家が懐疑的になりがち」と説いた。
  • 日本は政策効果の試算や財政の見通しの検証を中立の立場で担う「独立財政機関」がない。主要7カ国(G7)では唯一だ。2019年に経済同友会、この4月には経団連が国会などへの設置を提言してきた。
  • 日本経済は労働力などの供給制約に直面しており、財政が民間投資の呼び水にならない懸念もある。ある造船会社トップは深刻な人手不足に「正直、厳しい」と漏らす。「ドックを掘ってクレーンを設置すれば(船の建造が)できるわけではない」
  • 内閣府は成長戦略の効果が十分に出ないケースの見通しも示した。潜在成長率も実質成長率も0%台前半で停滞する。足元で低下傾向の債務GDP比は30年代に右肩上がりとなる。
  • 自民党の財政改革検討本部は23日にまとめた提言案で、財政目標として基礎収支の単年度の黒字を機械的には追わないよう提起した。まずは投資の促進を求める構えだ。
  • 法政大学の小黒一正教授は「過去にも経済対策は繰り返されてきたが、実質成長率は想定ほど伸びなかった」と指摘する。「挑戦は重要だが、実質成長率が想定通り高まるかを不断に検証し、歳出入の管理を徹底する必要がある」と訴える。