再分配の迷走示す「消費税1%」 なぜ改革に逆行するのかhttps://www.nikkei.com/article/DGXZQODK186Q60Y6A610C2000000/

【コメント】

  • 昨日ついにドル円が162円台に突入しました! 39年半ぶりです。
  • 39年前の162円台は日本経済が成長期で200円以上の水準から徐々に円高になっていった過程でした。しかし今回の162円台は残念ながらその逆です。日本経済が劣化し、円の価値がどんどん弱くなっていっている過程です。利上げを急がねば円安是正はできませんが、利上げをすれば企業も消費者も痛みます。難しいですね。
  • 記事は日経の論説委員のかたのコメントです。
  • 先日私は短絡的に、首相の公約として言ったのだから「早く消費税を下げて欲しい」と書きましたが、消費税は社会保障制度の財源として重要な役割を果たしていることをこの論説で再認識しました。
  • そもそも高市政権は、現役世代の税と社会保障費の負担を軽くすることを目的に、3年先には給付付き税額控除を実施しようとしています。
  • しかし来年から2年間、社会保障費を担っている消費税の一部(食料品)を9%減税しようとしています。消費税の減税は現役世代だけでなく引退世代や富裕層にもベネフィットが生じてしまいますので、この論説が指摘しているように、政権の思想と実務が乖離しています。
  • 消費税減税を行うと財政はさらに痛みます。これにより円安がもっと進み輸入物価の上昇を招くかもしれません。
  • また論説にあるように、一度下げた税率を元に戻すときには、相当な増税感がついてまわり、本当に元に戻せるのか不透明です。
  • 食料品の消費税減税は本当に行うべきなのでしょうか?賛否意見はさまざまだと思いますが、さてどうすべきでしょうか?

【記事概要】

  • 高市早苗政権が2029年秋の導入を目指す所得連動型の新しい給付金制度は、中低所得の勤労者の社会保険料負担を軽減するのが目的だ。
  • 政権発足当初に掲げた、控除と給付を組み合わせて精緻な再分配を行う給付付き税額控除からは後退した。それでも、少子高齢化で負担が重くなっている現役世代を救う理念は変わっていない。
  • 新型コロナウイルス対策などで頻発した一律給付のバラマキに比べれば、課題は残るものの前進と言っていい。
  • 問題は首相が悲願とする食料品の消費税減税が、新制度導入までの「つなぎ」と位置づけられている点だ。
  • 引退世代を含む全世帯の負担を軽くする消費税減税と、中所得の勤労者を支援する給付金では政策のターゲットが大きく異なる。バラマキ色が強い減税を29年4月に終了して本丸の給付金制度に移行する際に、支援対象者の縮小が反発を招かないだろうか。
  • 何より気になるのは、社会保険料負担を軽減する新制度を導入する前段で、社会保障制度の安定財源である消費税を切り崩すちぐはぐさだ。
  • 年金、医療などの社会保障給付は26年度予算ベースで144兆円。財源は労使が支払う保険料で6割、国と地方が支出する公費で4割を調達している。消費税を全額(約26兆円)充てても公費部分(約56.6兆円)は賄いきれず、不足分は国債発行という借金で穴埋めされている。
  • 減税が2年間で終わらずに国債で穴埋めする事態になれば、将来世代にツケを回す構造が強まる。これが財政規律を重視する視点からの減税反対論だが、危うさはそれだけではない。日本が少子高齢化を乗り切るために不可欠な、負担の構造改革に逆行する懸念があるのだ。
  • 高齢者医療や介護は、現役世代が保険料から支援金を拠出して引退世代を支える世代間扶養が基本。少子高齢化が進行すると現役世代1人あたりの負担は増えてしまう。
  • 生まれた時代によって生涯に得る給付と負担のバランスが崩れるのは保険の姿から逸脱している。人口構成の変化に起因して給付費が増える分は税財源による再分配で手当てするのがあるべき形だ。
  • ところが介護保険は創設から四半世紀が経過しても、国と自治体による公費投入の割合は5割で変わっていない。08年度にできた後期高齢者医療制度も5割のままだ。
  • このため、それぞれ制度ができた当初と現役世代1人あたりの拠出額を比べると、後期高齢者医療で約1.7倍に増え、介護保険(40〜64歳)は3倍超に膨らんだ。これは保険料に依存した再分配のゆがみにほかならない。
  • 影響を強く受けたのが中低所得の勤労者だ。保険料は集団内の助け合いという特性から所得に対する逆進性があり、中低所得者ほど負担が重くなる。給付付き税額控除が政治課題として急浮上したのは、拠出額の増加でいよいよ放置できなくなったためだ。
  • 問題の本質を考えれば、新型給付金は目先の痛みを抑える対症療法に過ぎない。真に目指すべきは高齢者医療や介護への税投入を増やし、保険料に依存した再分配構造からの脱却を進めることである。
  • ただ社会保障に投入する税財源は何でもいいわけではない。数十兆円という規模を考えれば基幹三税が中心にならざるを得ない。このうち所得税では勤労者依存の構造を変えられない。事業主としての保険料拠出が増えている状況で法人税を上げるのも違う。
  • 消費税は引退世代や、社会保険が未適用の零細企業を含め、すべての国民や団体が負担する。少子高齢化という国家的な難題にオールジャパンで向き合う形になる。
  • 勤労者に集中する負荷を軽減するために必要なのは、高齢者を支える財源を保険料から消費税に置き換えていく改革だ。それなのに消費税減税をつなぎとするのは、大局観の欠如と言わざるを得ない。
  • 年齢に関係なく負担能力に応じて弱者を支える「全世代型社会保障」は、現政権も含めた令和以降の全政権が引き継いできた改革理念だ。それをあっさりほごにしかねない「消費税1%」は再分配政策の迷走を示している。