日本型人材育成の課題 忖度生む教育やめよhttps://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260907&ng=DGKKZO98610940W6A900C2CK8000

【コメント】

  • 今日は教育の話題をピックアップしました。日本の成長にとって根源的で重要な問題です。
  • 「日本は子どもの学力は高いのに経済は伸び悩んでいる」、、、これが切実な命題です。
  • 日本の教育は、「有名小学校から大企業へのベルトコンベヤーシステム」「速く正解すると上がる偏差値」「生徒は塾の先生の教えを疑わず、野性味を失い、会社に入った後も忖度(そんたく)人材化」「批判的に考える教育が弱い」とのことです。
  • 世界のフィールドで戦わなければならなくなって長い時が経過していますが、日本は厳しい局面にあります。
  • 日本の教育で強化すべきは、「白黒がはっきりした非常にダイレクトな英語力を強化しコミュニケーション力をつける」「形式知はAIに任せ、経験、洞察力、感情、思い、信念などの暗黙知を鍛えること」だそうです。
  • これらを勘案すると、早い段階からインターナショナルスクールに通わせるのも一つの選択肢かもしれませんが、、、莫大な授業料がかかります。
  • 日本の教育内容を維持しつつ、英語力や暗黙知を鍛えれば鬼に金棒です。こういった教育は公立学校でも充分に可能と思いますので、日本の教育の根幹を早期に是正してほしいものです。

【記事概要】

  • 日本は子どもの学力は高いのに経済は伸び悩んでいる。競争力の回復には、そんな「残念な」日本型人材育成をどう変えればよいか。経営学者で米ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)と一橋大の双方で長く教えた竹内弘高・国際基督教大(ICU)理事長に聞いた。
――日本は子どもの学力では世界トップクラスですが国の経済成長率は低い。教育システムに問題があるのではありませんか。
  • 「よい塾に通い、よい大学に進み、日本の大企業に入るというベルトコンベヤーのようなシステムが完全に時代遅れになっている。今やプレイングフィールド(競技場)は世界なのに、世界で戦えない子どもを育てている」
  • 「この日本型システムは正解ありきだ。速く正解すると偏差値が上がる。生徒は塾の先生の教えを疑わない。野性味を失い、会社に入った後も忖度(そんたく)する人に育ってしまう」
  • 「経済協力開発機構(OECD)の2024年の調査で、日本は中学生に批判的に考える必要がある課題を与える教員の割合が調査対象国・地域の中で最も少なく、ガラパゴス状態になっている。つまり批判的思考をさせていない。この問題は間違いなく大きい」
――競争力を取り戻すには教育をどう変えるべきでしょう。
  • 「経済全体は低成長だが例外はある。例えば、ユニクロを展開するファーストリテイリングの売り上げは30年間で400倍になった。最近の稼ぎ頭は海外事業だ。世界を相手に挑めば成長につながりうる」
  • 「ファストリの柳井正会長兼社長は『忖度して挑戦しない経営から脱せよ』と説いている。忖度を生む教育もやめるべきだ。海外でビジネスをするには英語力も大事だ」
――人工知能(AI)による翻訳の精度が高まり、英語を学ぶ必要性が薄れるとの見方もあります。
  • 「HBSの修了生はほぼ7割がスタートアップを目指すようになった。彼らにとって一番大事なのは世界中にいる投資家を説得することだ。それには投資家の共通言語である英語力が欠かせない。エレベーターピッチといって、目的階に着くまでの15秒間に投資家をがむしゃらに説得しようとする」
  • 「英語が標準語になった理由の一つは、白黒がはっきりした非常にダイレクトな言語だからだ。レトリックも大事で、それにユーモアを組み合わせることで勝ちパターンのコミュニケーションが成立する」
――学校の英語教育を変える必要はありませんか。
  • 「学校も変わってきた。私が子どもの頃は数校だったインターナショナルスクールが今は100校以上ある。学費は高いが奨学金を用意する学校もある。充実した英語教育を求めるなら、選択肢はAIを駆使したツールを含め、たくさんある」
  • 「国際的な舞台で蚊帳の外にならないためには英語は必須だ。文部科学省や保護者はそれを分かっているだろうか」
――米国では大学と大学院が新産業を生む成長のエンジンになりました。
  • 「一橋大の商学部で教員をしていた頃、日本の大企業の人事担当者に『学生を白地でください』と言われた。入社後に我々が教育するから、よい学生をそのままくださいという意味だ。そのため大学4年間をろくに勉強せずとも卒業できる傾向は今でも続いている」
――学部教育の密度の濃さが違う気がします。
  • 「ハーバードの学部は学生に24時間体制で関わる。学生は予習し、終日授業を受ける。全寮制なので、寮に戻るとハウスマスターという指導者が授業で生じた疑問に答えてくれる。大食堂で夕食を取った後、スポーツなどの課外活動に行くと優れたコーチに教わる」
  • 「学生が様々な場で共に過ごすことで、全員がリベラルアーツの神髄である真善美を学ぶ」
――大学院はどうですか。
  • 「HBSでは世の中や未来を良くするために必要な問題解決力を身につける。具体的には企業の経営課題や意思決定を詳述したケースを教材にして学ぶ。2年間で約800のケースを議論する。教科書はなく正解もない。学生は仲間と脳から汗が出るほど議論する中で、自分にとっての問題解決法を体得する」
  • 「米国の大学と大学院は卒業後も学生の成長に関わり続ける。卒業生を頻繁に集め、選ばれた最高の教員が話をする。そこで多額の寄付が集まり、ハーバードでは全体で数兆円規模の基金になる。大学に恩義を感じての遺贈も多い。日米の最大の差だ」
――日本の教育機関にはまねできないのでは。
  • 「そんなことはない。徳島県にある神山まるごと高等専門学校は全寮制で、手を動かして学ぶ創造的な教育をしている。多くの有力企業が資金を提供した。人を育てるミッションが明確なら民間の力でできる。官にばかり頼っていては駄目だ」
――AI時代の大学教育は何を大事にすべきでしょう。
  • 「ノウイングからドゥーイングへの転換だ。知識には形式知と暗黙知がある。数値やアルゴリズムといった形式知はAIに任せていい。経験、洞察力、感情、思い、信念などの暗黙知が大事だ」
  • 「暗黙知は実践と行動を伴う。そしてビーイングすなわち自分自身を知ることにつながる。生き方はAIには教えられない。大学はそこに力を入れるべきだ」
  • ――具体例はありますか。
  • 「HBSは11年から学生を海外の現場に送り出し、問題解決に取り組む授業を始めた。ケースでノウイングを学ぶだけでなく、現場でドゥーイングを学ぶ教育にした」
  • 「2年目から選択科目になったが毎年約200人が参加する。現場の一つが日本で、東日本大震災の被災地に行く。農家などに張り付き、問題の解決策を提案する。最近では著名ブランドのヨウジヤマモトやアニメの会社の問題解決にも携わるようになり、最も人気のある授業になった」
  • ――日本の大学も変わる必要があります。
  • 「ICUは全寮制を検討している。今年度からの中期計画に寮の拡充と、全寮制の可能性を含む長期ビジョンの策定を盛り込んだ。もともと建学時に全寮制の理念を掲げていた」
  • ――中学受験から就職までのベルトコンベヤーの解体は容易ではありません。
  • 「国の一大プロジェクトになる。だが『変革か死か』という危機感を持って取り組むべきだ。それだけ緊急性のある課題だと思う」