働き方が多様化し、独立を考える方も増えてきました。
そこでよく質問をいただくのが、「社会保険料」についてです。
「国民健康保険がいいの?」
「任意継続がいいの?」
「新しく設立する法人で入るのがいいの?」
「奥さんor旦那さんの扶養に入るのがいいの?」
今回は独立後の社会保険料について解説していきます!
目次
社会保険とは?
社会保険といっても様々な保険がありますが、独立において考える社会保険は下記4点です。
以降では、簡便的に自営業者(個人事業主等)が加入する国民健康保険・国民年金を「国保」、
会社員が加入する健康保険・厚生年金保険を「社保」と記載する形とします。
誰が加入? | 健康保険 | 年金保険 |
自営業者等が加入 | 国民健康保険 | 国民年金 |
会社員が加入 | 健康保険 | 厚生年金保険 |
国保と社保
では、国保と社保で何がちがうのでしょうか?
国保は個人事業主等が加入する保険、社保は会社役員や会社員が加入する保険です。
独立後の選択をする前に、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
<国保の特徴>
・扶養の概念がない
→国保には扶養の概念がありません。
そのため、会社員時代に扶養していたご家族分も国民健康保険料が発生します。
健康保険料の金額は世帯ごとの収入によって計算されます。
・国民年金の1階建て
→国民年金保険料は一人あたり月額16,610円です。(※令和3年4月~令和3年3月分)
厚生年金保険の場合は国民年金と厚生年金分の2階建ての年金が積み上がるのに対し、
国民年金の1階建て部分のみなので、将来的に得る年金は社保に比べ低くなります。
<社保の特徴>
・扶養の概念がある
→一定の要件を満たすご家族の健康保険料を、自身一人分の健康保険料で扶養できます。
また、配偶者を扶養に含めている場合には、配偶者分の国民年金を支払う必要がない一方で、配偶者分の年金は支払い済としてカウントされます。
・労使折半といって、会社が半分負担してくれる
→後述の任意継続の場合は負担してくれないため、全額を自分で支払う必要があります。
・国民年金と厚生年金の2階建て
→厚生年金保険に加入していると、国民年金分、厚生年金分の2階建てで積み上がるので、支払う年金額も多いですが将来得る年金額も多くなります。
独立後の選択肢
独立後の社会保険について、選択肢として下記4つがあります。
①国保に加入
②現在の会社の社保に任意継続
③設立する新会社の社保に加入
④配偶者の社保の扶養に入る
では一体、どの選択肢が自身とってお得なのでしょうか。
以下でシミュレーションをしてみましょう。
年収600万円の人が退職した場合、どう変わる?
年収600万円の人が退職した場合、家族構成別に「世帯」での社保・国保負担額がいくら変わってくるのか確認してみましょう。
(前提)
東京都・渋谷区在住のサラリーマン 30歳。
サラリーマン時代の年収は600万円(月額50万円)で、独立を予定
独身 | 妻を扶養 | 共働き
(妻も会社員で年収600万円) |
|
① 国保に加入 | 626,242円
(内訳) 保険料:426,922円 年金 :199,320円 |
877,562円
(内訳) 保険料:478,922円 年金 :398,640円 |
1,470,442円
(内訳) 保険料:426,922円 年金 :199,320円 妻社保:844,200円 |
② 社保の任意継続 | 553,560円
(内訳) 保険料:354,240円 年金 :199,320円 |
752,880円
(内訳) 保険料:354,240円 年金 :398,640円 |
1,397,760円
(内訳) 保険料:354,240円 年金 :199,320円 妻社保:844,200円 |
③ 設立後の新会社で社保に加入※ | 330,926円
(内訳) 保険料:115,718円 年金 :215,208円 |
330,926円
(内訳) 保険料:115,718円 年金 :215,208円 |
1,175,126円
(内訳) 保険料:115,718円 年金 :215,208円 妻社保:844,200円 |
④ 配偶者の社保の扶養に入る
※年間所得見込みが130万円以下であることが必要 |
× | × | 844,200円
(内訳) 保険料:0円 年金:0円 妻社保:844,200円 |
※設立後の役員報酬を10万円/月に仮定。なお、会社負担分も含めた金額を記載。なお、役員報酬の決定についてはこちらのブログもご参照ください。
どれが一番有利?
上記シミュレーションのように、家族構成によって変わってきますが、優先順位は大きくは変わりません。
④が一番有利となり、③→②→①の順に不利となります。
(個人事業主の場合や、役員報酬を0円に設定した場合は③を使えないので④→②→①)
配偶者がお勤め先で社保に加入している場合は④から順に検討しましょう。
なお、この場合は年間の所得見込が130万円以下であることが前提です。
④配偶者の社保の扶養に入る(年間の所得見込が130万円以下であることが前提)
↓
③設立する新会社の社保に加入
↓
②現在の会社の社保に任意継続
↓
①国保に加入
※自治体や所得額によっては①と②の順番が前後することがあります。ご了承ください。
加入時期に注意!
<法人設立時期・加入時期に注意!>
「③設立する新会社の社保に加入」できるのは、新会社の設立登記が完了し謄本取得後です。
退職から新会社の設立登記が完了するまでの期間が長いと、その期間は「①国保に加入する」か「②現在の社保に任意継続」する必要が出てきます。
手続が煩雑となってしまうので、起業(法人設立)をお考えの方は退職日より前に法人設立登記を完了させ、
退職日翌日=新会社での社保の加入日となるよう、前もって準備しましょう。
<現在の会社の社保に任意継続する場合に注意!>
②現在の会社の社保に任意継続するには、退職日の翌日から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を協会けんぽor自社の健康保険組合へ提出する必要があります。
加入できる期間は2年間のため、2年経過後は上記選択肢の
「①国保に加入」、「③設立する新会社の社保に加入」、「④配偶者の社保の扶養に入る」のいずれかを選択する必要があります。
保険証が届くまでに病院に行った場合はどうすればいいの?
申請してから保険証が来るのに数週間かかる場合があり、「病院行きたいけどいけない。」という場合があるかもしれません。
その場合、年金事務所に「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」を申請すると、保険証のかわりとなる証明書を交付してくれます。
郵送でも窓口でも受け付けているので、必要な場合は申請するとよいでしょう。
また、病院で全額を支払い、国保の場合は区役所等、協会けんぽの場合は管轄の協会けんぽ支部で申請をすることで、
後日自己負担しすぎている分を返金依頼することも可能です。
まとめ
いかがでしょうか。
今回は独立後の社会保険の選択肢について紹介しました。
ご自身の状況に合わせ、判断の参考にご使用ください。
なお、会社設立後の社会保険加入手続についてはこちらもご参照ください。
Takeoffer会計事務所では、
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