会社の利益は収益から費用を差し引いて計算されますが、この利益がプラスであれば「黒字」、マイナスであれば「赤字」となります。

一般的に会社は利益を出すために、日々の経営努力を行っていますが、利益がマイナスとなる「赤字」の場合のメリットもあります。

今回は黒字と赤字のメリット・デメリットについて解説します。

 

 

 

黒字のメリット

金融機関からの融資

黒字のメリットとしては、金融機関からの融資が受けやすい点があります。

銀行は貸し付けたお金が無事に回収できるかどうかを判断しますが、その際に貸付先の会社が安定的に利益を計上しているかに着目して判断します。

 

株式価値の向上

黒字のメリットは、企業の所有者である株主の保有する株式価値の向上も挙げられます。

株主は株式価値の向上を期待して投資を実行しており、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の出資を受け入れている場合は、業績について厳しくチェックされることになります。

また、創業者以外の株主が存在しない場合でも、黒字経営が継続して会社に利益が蓄積していれば、配当の形で創業者に還元することも可能です。

なお、黒字は収益から費用を差し引いた利益がプラスであることを意味しますが、経営が順調である企業にとって黒字にすることは比較的簡単です。

黒字にするために最も取り組みやすいのは、事業にとって不可欠な支出とはいえない費用を削減することです。交際費や会議費、消耗品費等は比較的削減しやすい場合が多いです。

また、役員報酬についても中小企業の場合は比較的自由に設定することが可能であるため、役員報酬を削減することで黒字を達成しやすくなります。

 

利益指標には売上総利益、営業利益、税引前当期純利益等がありますが、よりキャッシュフローに近い概念としてEBITDAが利用されることも多いです。

 

 

(参考)EBITDA銀行や投資家が着目する利益指標として「EBITDA」というものがあります。これはEarnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization(利払前・税引前・償却前利益)の略であり、経常利益に支払利息と減価償却費を加算した利益指標になります。

 

黒字のデメリット

法人税の負担

黒字のデメリットとしては計上した利益(課税所得)に対して法人税の支払が発生することです。法人税率は23.2%(資本金1億円以下で所得のうち800万円以下の部分は15%)のため、計上した利益の約2割程度は法人税を納める必要があります。

また、法人税以外にも地方法人税や法人事業税が課されることから、利益の約3割程度は税金が発生することになります。

 

 

 

赤字のメリット

赤字のメリットとしては以下の3点が考えられます。

法人税が発生しない

赤字のメリットとして、法人税が生じないことが挙げられます。

法人税は利益(課税所得)に対して税率を乗じることで計算されるため、赤字の場合は法人税がゼロになります。(所得に対する課税ではない住民税の均等割は生じますため、東京都の場合は最低でも70,000円は税金負担が生じます。)

 

還付金の請求

中小企業にて前期は黒字の会社が当期に赤字となった場合は、還付金を請求することができます

還付の請求をすることができる金額は以下の計算式で算出されます。

(計算式)前期の法人税額×当期の欠損金額/前期の所得金額=還付金額

当期の欠損金額は前期の所得金額が上限となる点に留意が必要です。

適用要件等の詳細は国税庁のHPをご参照ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htm

 

繰越欠損金の利用

赤字のメリットとして欠損金の繰越控除の適用を受けられる点も重要です。

赤字が発生した翌年以降10年間にわたって、過去の損失額を当期の所得から差し引くことができます。(中小法人以外の場合は当期の所得の50%が限度)

所得が減額されることで、税金負担が減ることは大きなメリットといえます。

 

赤字のデメリット

金融機関からの融資

赤字のデメリットとしては、黒字のメリットで記載した金融機関からの融資が受けにくくなる点があります。赤字企業の場合、将来の借入金の返済能力が疑われることがあるため、留意する必要があります。

 

債務超過のリスク

また、赤字が継続することで会社のキャッシュが目減りしていき、債務超過(純資産がマイナス)となる可能性があります。債務超過となった場合は、銀行からの融資は赤字の場合よりもさらに難しくなるため、会社の運営資金が枯渇し、倒産するリスクが高まります。

 

 

まとめ

今回は黒字、赤字の場合のメリット・デメリットについて解説しました。

以下は黒字・赤字のメリット・デメリットをまとめた比較表になります。

 

黒字 赤字
メリット ・銀行からの融資が受けやすい

・株式価値の向上による株主還元

・法人税が発生しない

・還付金の請求が可能

・繰越欠損金の利用

デメリット ・法人税の支払いが必要 ・銀行からの融資が難しい

・債務超過リスク

 

 

黒字決算にするのか赤字決算にするのかで税務面、資金調達面で影響が生じます。

短期的に外部からの資金調達の予定があるかなど、自社の状況を踏まえて当期の決算を黒字にするか赤字にするかの判断をすることが必要です。

 

Takeoffer会計事務所では、幅広い会計・税務のアドバイスを行っております。

 

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