美術品は、時の経過によっても価値のかわらない資産の一つです。

では美術品は減価償却対象とならないのでしょうか?

また、節税になるのでしょうか?

 

今回は美術品の会計処理について、説明していきます。

 

【減価償却とは?どうして節税になるの?】

減価償却とは、資産の価値を帳簿上減額させていく手続きです。

資産の構造、材質等に応じて、一定期間にわたり徐々に帳簿上の資産額が減額され、当該減額分は経費(減価償却費)として所得金額から控除することが可能です。

以前「個人向け!不動産所得について ①~不動産投資のポイント!節税という言葉に注意!~」の記事でも紹介していますが、この減価償却費はキャッシュアウトを伴わない経費であることが特徴です。

そのため、キャッシュアウトがなくても収入から経費を控除することによって算出される所得額が少なくなり、支払う税金が減る=節税効果があるといわれています。

 

 

【美術品の取り扱い】

では美術品の取り扱いは税法上どのように定められているのでしょうか。

ポイントは、

①1点あたりの取得価額がいくらか?

②時の経過によって価値が減少するかどうか?

の2点です。

①1点あたりの取得価額がいくらか?

1点あたりの取得価額が100万円以上の美術品は原則、非減価償却資産(資産の価値が変わらないもの)として、減価償却を行いません。そのため、節税にはなりません。

一点当たり100万円未満のものは、減価償却対象となり、それぞれの美術品の構造や材質等に応じて一定期間にわたって減価償却されます。

例えば、対象の美術品が「器具及び備品」の室内装飾品に該当する場合は、

金属製のもの・・・15年、その他のもの・・・8年の期間に応じ減価償却されます。

(参考:国税庁HP

💡取得価額のポイント
なお、絵画の場合は一般に額縁も絵画の一部として取得価額に含まれるものと考えられています。
また、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税等その資産の購入のために要した費用や据付費等も美術品の取得価額に含まれることになりますので、これらを合わせた取得価額が100万円を超えるかどうか、で判断する必要があります。

 

💡30万円未満の美術品は全額その期の費用に!

また、中小企業者等に該当する法人の場合は、1点あたりの取得価額が30万円未満の美術品等について一括償却=取得価額全額を、

年300万円を限度にその期の費用とすることが可能です(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)。

詳細はこちらのブログをご覧ください。

 

②時の経過によって価値が減少するかどうか?

①にて、「1点あたりの取得価額が100万円以上の美術品は原則、非減価償却資産(資産の価値が変わらないもの)として、減価償却を行いません。」と記載しましたが、

例外として時の経過によって価値が減少することが明らかなものについては減価償却対象となります。

では、時の経過によって価値が減少することが明らかなものとは具体的にどのようなものをいうのでしょうか。

国税庁は例として、次の全てを満たす美術品を、時の経過によって価値が減少することが明らかなものとして挙げています。これらの事項を参考にし、その美術品の実態を踏まえて判断することになります。

(引用元:国税庁HP

1 会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として取得されるものであること。

2 移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること。

3 他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。

 

①と②のまとめ

上記の①、②の事項をまとめると、以下のようになります。

時の経過によって価値が減少しないことが明らかなもの 時の経過によって価値が減少することが明らかなもの
1点あたり100万円以上 減価償却しない 減価償却する

(15年or 8年)

1点あたり100万円未満 減価償却する

(15年or 8年)

1点当たり 30万円未満 一括償却可(全額、取得した期の費用)

 

 

【節税手段としての美術品購入の留意点】

美術品は、購入額によって減価償却対象となりますが、

以前「個人向け!不動産所得について ①~不動産投資のポイント!節税という言葉に注意!~」の記事でも紹介したとおり、減価償却=課税の先延ばしです。

減価償却により利益を圧縮してもその分帳簿上の資産額(帳簿価額)は減ります。

売却時には課税される「譲渡益」は「収入額-帳簿価額」で算出されることになるため、売却時に課税が生じます。

減価償却費計上時の税額は減るものの、売却時には売却益に対する税金を支払う必要があるため、節税の手段としてはあまり効果的であるとは言えません。

詳細な購入後の会計処理については、顧問税理士等の専門家にご相談ください。

 

【まとめ】

美術品を節税目的で購入する際は、購入価額について留意しましょう!

1点あたりの取得価額が100万円以上の美術品は、節税効果がありません。

また、あくまで課税の繰り延べである点にもご留意ください。

 

Takeoffer会計事務所は会計処理から税務相談まで幅広いアドバイスを行っております。

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