今回は、特に若手(20代、30代前半)の公認会計士に、皆さんの『キャリア』や『働き方』について考えて頂くため、監査法人を辞め会計事務所で働き始めた私が今感じている『キャリア』や『働き方』を紹介します。
【会計士のキャリアと働き方】
会計士試験に合格すると多くの方が、監査法人に入社しますが、その後の会計士キャリアは非常に幅広いです。
皆さんも考えたことがあると思いますが、具体的には下記の様なキャリアがあります。
✓ 監査法人でパートナーを目指す
✓ 事業会社の経理や経営企画
✓ 会計事務所や税理士事務所
✓ FAS(M&A関連)
✓ ベンチャーキャピタル(VC)や投資ファンド
✓ ベンチャーCFO
✓ コンサルティングファーム
✓ 会計士予備校の教師等
そして、『キャリア』と同時に考えるべきは『働き方』です。『働き方』という面でも複数考えられます。
✓ 常勤、非常勤等の従業員として働く
✓ 業務委託として働く
✓ 独立する
さらに言えば、一つの『キャリア』や『働き方』に縛られず、上記で記載した『キャリア』と『働き方』をそれぞれ複数組み合わせることも可能でしょう。
例えば、監査法人での非常勤勤務と会計事務所での業務委託を組み合わせて、キャリアを積むといった事も考えられます。
今では、〖会計士の履歴書〗といった、様々なステージで活躍している公認会計士の方々のキャリアが見れますので、気になった方は参考にしてみてください。
ちなみに、簡単に筆者の職歴を紹介いたします。
大学卒業後に監査法人に入社し、3年弱(大学生の非常勤時を含めると4年弱)監査業務に携わりました。
その後、独立系FASに転職。1年弱M&A関連業務(フィナンシャルアドバイザリー(FA)、デューデリジェンス(DD)や企業価値評価(valuation)業務)を経験しました。
今は、Takeoffer会計事務所で業務委託として働き、この後は会計系コンサルティングやM&A関連業務を行っている会社で働く予定です。
性格が飽きっぽいという事もあり、大きく分けても「監査」「M&A」「税務」と3つの業務を経験しました。
【会計事務所 体験記】
『会計事務所の業務内容』(実はコンサルティング業務に近い?)
皆さんは、会計事務所や税理士事務所の業務に、どんなイメージを持っているでしょうか。
月次では、領収書を入力し月次PL・BSを作成。法人の決算期になれば申告書の作成・提出。年始から2、3カ月は個人の確定申告で繁忙期を迎える。
私は、こういった業務を毎年繰り返している、『ルーティーンワーク』のイメージを持っていました。
このイメージは、実際に働いてみて感じたのですが、会計事務所の業務は『ルーティーンワーク』だけではなく、会社から様々な相談を受けそれを手助けする『コンサルティング業務』があります。
割合としては、3:7ぐらいでしょうか。どちらが7割かというと、『コンサルティング業務』の方です。
※会計事務所の規模や特色によって異なると思いますが、弊社(Takeoffer会計事務所)では、このぐらいの割合です。
これは、弊社のような顧問税理士業を行う大規模でない会計事務所のクライアントは、基本的に中小企業の経営者や個人事業主のためです。
どういう事かというと、中小企業の経営者たちは、税務や会計に関する疑問以外に日々会社運営に関する不安や悩みに対し、気軽に相談できる相手が、なかなかいないんだと思います。
こういったときに、税務や会計に関する知識はもちろん、様々な会社と関わりがあり、ビジネスや会社運営に関する知識もある、顧問税理士が相談を受けています。
つまり、顧問税理士には、税務や会計に関する質問以外の多くの質問が来るのです。
一例ですが、以下のような質問が来たりします。
✓ 会社の事業を大きく方向転換したいが、意見を聞きたい・適切な役員報酬の額が知りたい
✓ 出資をしたいと知り合いに言われたがどうするべきか
✓ 従業員の給与体系や社会保険の加入に関する手続きが知りたい
✓ 会社を設立したいが出資の割合や銀行口座の開設方法などが知りたい
監査法人が『ルーティーンワーク』の業務が多く、飽きてしまった私にとっては、『実はコンサルティング業務』に近い、この仕事は、日々とても楽しく、仕事の内容が会社のためになるためとてもやりがいがあります。
もちろん、顧問税務業務(月次処理や申告書の作成等)もしっかり行っているので、中小企業やベンチャー企業の役に立ちつつ、税務業務の経験も積めてお得な仕事だと思っています。
ちなみに、以下のブログで、質問に対する回答を記載していますので、気になる方はリンクから飛んでみてください。
『監査法人とのギャップ』(クライアントと報酬面)
若手の公認会計士の方々は、監査法人に勤めている方々が大半かと思います。
監査法人も働き方改革に取り組み、昔より働きやすくなった結果、私の同期も大半が今も監査法人で働いています。
ここでは、監査法人と今私が働いている会計事務所のギャップについて、「クライアント」と「報酬(給料)と働き方」の視点で紹介します。
実際、ギャップについては他にもたくさんあるのですが、今回はブログを通じて公認会計士の『キャリア』と『働き方』を考えて頂く事が目的のため、「クライアント」と「報酬(給料)と働き方」の2点に絞って紹介します。
※会計事務所は弊社Takeoffer会計事務所のように、中小企業や個人事業主向けの会計事務所を想定して紹介しています。
「クライアント」
監査法人で監査業務に携わっている方は、主に上場会社とその子会社または、上場準備会社などの大企業がクライアントだと思います。それに対し、会計事務所の主なクライアントは、中小企業や個人事業主など小規模企業になります。
これは非常に大きな違いで、会社の事業、窓口や関与するクライアント数に影響を与えています。
まず、事業に関してですが、上場企業だと多くの会社が、子会社を持ち複数の事業を行っているのに対し、会計事務所が相手にする中小企業や個人事業主の事業は、基本的に単一かつシンプルなケースが多いです。
監査法人で、上場会社を担当しても、会社のビジネスが複雑で理解するまでに時間がかかった経験があると思います。私も1年目の時は、規模の大きい会社すぎて理解に苦しんだ経験があります。(会社の事業を理解する前に数値にばかり目が行っていました。)
一方で、弊社等の会計事務所のクライアントのビジネスは、シンプルなことが多く、会計士の皆さんであれば理解に苦しむことはないと思います。
最近は、新しいビジネスも増え、ベンチャー企業を担当すると少し戸惑う事もありますが、未知のビジネスに触れる事が出来て、とてもいい経験になっています。
また、若手の会計士にフォーカスすると、クライアントの窓口は、監査法人だと経理担当者になりますが、会計事務所だと、主に経営者になります。経営者と直接やり取りしお話しする機会が増えることはとても刺激的です。
さらに、関与するクライアントの数が違います。
監査法人だと、関与する会社は5-10社程度かと思いますが、会計事務所だとそれ以上の会社に関与することになります。
クライアントの違い
監査法人 | 会計事務所 | |
規模 | 大企業 | 中小企業や個人事業主 |
事業 | 複数かつ複雑 | シンプル |
窓口 | 経理担当者 | 経営者 |
一人当たり関与数 | 5-10社 | 10社以上 |
これらの違いは、どちらが良い悪いといった事はなく、どちらが自分に向いているかが重要だと思います。
私自身は、監査法人時代に大企業を監査できた経験は非常に有意義な経験でしたが、どちらかというと、もっと多くの小さい企業向けに仕事がしたいと思っていましたし、実際に働いてみても後者の方が向いていると感じています。
「報酬(給料)と働き方」
続いて、報酬(給料)面でのギャップについて紹介します。
監査法人で働いている方の中には、『会計事務所で税務業務の経験を積みたいけど年収が下がるだろうし、転職を決めきれない』という人も多いのではないでしょうか。
実際、報酬(給料)面でみると、監査法人から会計事務所に転職する際には年収が下がる傾向にあります。
これは、上述したクライアントの違いによるもので、会計事務所のクライアントは規模が小さい分、1社当たりの単価は低くなります。クライアントの関与数を多くしたとしても、その状況は覆すまではいきません。
では、会計事務所で働く事がおすすめできないかというと、そうは思いません。
会計事務所での税務業務の経験は、とても貴重ですし、仮に将来独立したいと考えている人にとって特に重要だとも思います。
ここで思い出してほしいのが、会計士の『働き方』についてです。
【会計士のキャリアと働き方】で、会計士の『働き方』として以下を紹介しました。
✓ 常勤、非常勤等の従業員として働く
✓ 業務委託として働く
✓ 独立する
昨今、世間ではフリーランスとして働く個人事業主が増えていますが、会計士もこういった働き方を考えていくべきですし、直ぐに実践できるとも思います。
監査法人で働きパートナーを目指すのも一つのキャリアだと思いますが、それが全てではないですし、将来独立や事業の立ち上げ、転職をする際に、監査法人以外での様々な経験を積んでおくことに越したことはありません。
ただし、会計事務所のみで働くと、独立には有利に働くかもしれませんが、やはり年収は下がる傾向にありますし、知識や経験・スキルも偏るというのが、実際に会計事務所で働いた私の意見です。
そこで、皆さんそれぞれの働き方が考えられますが、将来独立を考えている方や税務に興味がある方などは、監査法人や他の会社で年収も維持しながら、会計事務所で非常勤もしくは業務委託として働き、税務の経験を持つといった働き方をお勧めします。
元々知り合いの会計士や税理士が営んでいる事務所で、非常勤もしくは業務委託として働けないか聞いてみるのも良いでしょう。
ちなみに弊社(Takeoffer会計事務所)では、柔軟に働いている会計士の方を募集しているので、もし興味があればお問い合わせください。実際、監査法人や他の会社と弊社でダブルワークしている方もいます。
『監査法人で働く会計士の強みと弱み』
ここまで、会計士のキャリアや働き方、会計事務所の業務や監査法人とのギャップについて、紹介してきました。
この章では、『監査法人で働く会計士の強みと弱み』と題し、実際に監査法人を退職した私が、今感じている、監査法人で働く会計士の強みや弱みを紹介します。
転職を考えている方はもちろん、今後も監査法人で働こうと考えている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
※あくまで私が今感じている強みと弱みです。全く違うなと感じる方もいらっしゃると思いますが、ご容赦下さい。
監査法人で働く会計士の強みの一つは、分析力だと思います。
数値の検証を行う調書の多くは、過年度の数値と進行期の数値を比較し、異常な推移がないかを行う、いわゆる分析的手続きから始まると思います。
監査法人で働く皆さんは、この分析を毎四半期当たり前のように実施しており、数字の推移に違和感を覚える能力が高いと思います。
二つ目は、タスク管理の能力です。
監査法人で働く皆さんは、1年目から複数のクライアントを担当し、複数の作業をこなすマルチタスクが染みついていると思います。
この経験は、監査法人で働いている皆さんの強みです。特に、一人当たりの担当クライアントの多い会計事務所に将来入社しようと考えている方にとって、役に立つ経験です。
最後はヒアリング(質問)能力です。
前述の分析力と同じく、監査の中でヒアリング(質問)の手続きは非常に多用され、かつ有効でした。
会社担当者に質問を行うまでの入念な準備から、実際に担当者から重要な情報を引き出す能力は、監査法人で働く皆さんであれば自然に身についていると思いますし、今後どこで働くうえでも強みになります。
反対に弱みとしては、まず営業マインドの低さがあげられます。
監査が公認会計士の独占業務であり、監査法人間のローテーションもないため、監査法人で働く特に若手の公認会計士は、上から仕事が降ってきてそれをこなすのが日常になっています。
しかし、監査法人をでて独立する場合や、転職して一定の地位で働く場合、何もせずに仕事が降ってくる事はなく、自分が仕事をとる力も重要になります。
二つ目は、経営知識の乏しさです。
ここで言う経営知識とは、企業経営者の事業運営上の業務などを指します。
例えば、会社設立時の手続き、融資の手続き、従業員の社会保険加入手続きなど、監査法人にいてもあまり気にかけない業務を企業経営者は日々考えています。
将来、会計事務所で働こうと思う方は、こういった事を意識しながら今の仕事をしてみてはいかがでしょうか。
最後は発信能力の低さです。
前述のヒアリング能力など、聞いて理解する能力は強みだと思いますが、プレゼン等発信する能力は弱みです。
特に監査法人に努める若手の公認会計士の皆さんは、クライアントの前でプレゼンをする機会はほとんどないのではないでしょうか。
発信する能力も、監査法人を出た場合に、重要な能力に間違いありません。
【まとめ】
いかがだったでしょうか。今回は、『若手公認会計士の会計事務所体験ブログ ~「キャリア」と「働き方」~』と題し、会計事務所での業務を通じて感じた、公認会計士のキャリアと働き方についてまとめてみました。
監査法人で働く、若手公認会計士の皆さんが今後のキャリアと働き方を考えるうえで、当記事が少しでも参考になれば嬉しく思います。
Takeoffer会計事務所では、常勤の従業員はもちろん非常勤や業務委託で一緒に働いて頂ける方を募集しています。
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