企業の関税警戒感和らぐ 製造業景況感、2期連続改善 日銀利上げに追い風 9月短観https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20251002&ng=DGKKZO91669240R01C25A0EA1000
【コメント】
- 日銀から全国企業短期経済観測調査(短観)が昨日発表されました。
- 大企業は製造業・非製造業ともに好調のようです。
- 今後の見通しはお決まりのようにやや弱気の数字となっているようですが、実績は常に見通しを上回っていることを考えると、先行きも大きな問題はないとの見方が一般的なようです。
- この好調な景況感を受けて、日銀が利上げを行うかどうかがポイントです。自然に考えると企業の景況感は良く、インフレも加速しているので、利上げ実施ということになります。
- しかし、賃上げがインフレに追いついておらず実質賃金がデフレ時代よりも低い状況となっており、これが利上げ検討の一つの大きなポイントになります。
- 今のインフレは、需要が大きく価格が高くなっているわけではなく、人口減による労働力不足により供給不足が原因です。この状況を打開するために、利上げがはたして効果的なのかは疑問です。利上げは企業の投資を減らし供給がさらに低下する恐れがありますし、利上げにより住宅ローンなど各種ローンの負担感が高まり一般消費者の需要マインドが低下する可能性もあります。
- 現状は、大企業は値上げで好調、一方で一般消費者は賃金がインフレを克服するほど上がらず負担感を押し付けられている状況だと感じます。この状況下で10月の利上げはあるのでしょうか?
【記事概要】
- 米国の関税政策に対する過度な警戒感が和らいでいる。日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)で大企業製造業の景況感は改善し、大企業非製造業も高水準を維持した。金融政策を判断するデータの一つとなる短観が堅調だったことで、利上げに追い風との見方も出ている。
- 今回の短観は日米政府が合意した内容で関税が適用されてから初めての調査結果となった。
- 最近の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業の製造業で前回2025年6月調査(プラス13)から小幅に改善しプラス14だった。改善は2四半期連続。交渉の行く末がわからなかった6月調査時点より不確実性は低下した。
- 企業は関税への対応に動いている。関税コストの吸収に向け、米国での価格を上げる動きが広がる。マツダは9月3日から北米で多目的スポーツ車(SUV)「CX-5」など一部車種の価格を引き上げた。「購買動向や競合環境、関税を含む業界全体の様々な要因を考慮した」(同社)という。
- コマツは北米で8月受注分から建機や鉱山機械の価格を引き上げた。値上げ幅は平均4%。7月時点で関税影響が26年3月期の営業利益(米国会計基準)を900億円強押し下げると試算していたが、「130億円程度は抑えられる見通し」(堀越健・最高財務責任者)だ。
- サプライチェーン(供給網)も見直す。コマツはカナダや中南米向けの製品は日本から米国を経由して輸出していたが、日本からの直送に切り替える。
- シチズン時計傘下のシチズンマシナリーは26年10月までに約40億円を投じて、ドイツの販売・サービス拠点を2倍に拡張する。米国以外の国での販売を強化する。
- もっとも、景気の先行きへの懸念は根強い。日本自動車工業会(自工会)の片山正則会長(いすゞ自動車会長)は9月18日の記者会見で「自動車産業へのインパクトは依然として大きく、メーカーのみならず供給網全体に影響が及んでいる」と指摘した。
- SUBARU(スバル)は米国販売が全体の7割を占め、他社と比べ依存度が高い。米国販売の約半数は群馬県にある工場から輸出してきた。同社関係者は「非常に厳しい状況であることに変わりない」と話す。
- 今回の短観では大企業非製造業の最近の景況感を示す業況判断DIは6月から横ばいのプラス34だった。
- 西武ホールディングス傘下の西武・プリンスホテルズワールドワイドは8月の客室稼働率が79%と前年同月から8ポイント上昇した。「インバウンド(訪日外国人)需要は底堅い」とみる。日銀もインバウンド需要は引き続き堅調との見方だ。
- 日本チェーンストア協会(東京・港)によると、8月の全国スーパー売上高(既存店ベース)は前年同月比2.1%増と6カ月連続で前年同月を上回った。コメを中心とした食料品の販売価格の上昇が売上高を押し上げるが、消費者の節約志向が強まっているという。
- ヤオコーの川野澄人社長は「物価が高騰し価格に誰しも敏感になるなか価格対応はマスト」とし、販売戦略で「安さを感じてもらえるカテゴリーをさらに増やす必要がある」と話す。
- 市場では10月29~30日の金融政策決定会合で日銀が利上げを判断するとの観測が出ている。
- 東短リサーチと東短ICAPによると1日午後時点で市場が織り込む利上げ確率は10月会合が62%と最も高く、12月会合が20%、26年1月会合が15%となっている。
- 岡三証券のチーフエコノミスト、中山興氏は「9月短観で企業の業況や財務が総じて堅調を維持していることが再確認できたことは、10月の政策金利引き上げをサポートする追加材料だ」と指摘する。
- 日銀は米関税の影響はこれから本格的に及ぶとみる。関税の影響を受ける企業の収益計画は上期よりも下期の減益幅が大きいためだ。日銀は国内外の情勢を見極め、利上げを判断する方針だ。