ふるさと納税、昨年度1.2兆円 5年連続で過去最高 物価高、返礼品はコメ集中
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250801&ng=DGKKZO90394550R30C25A7EP0000
仲介サイトに1656億円 自治体支払い 寄付額13%相当
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250801&ng=DGKKZO90394620R30C25A7EP0000
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仲介サイトに1656億円 自治体支払い 寄付額13%相当
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250801&ng=DGKKZO90394620R30C25A7EP0000
【コメント】
- ふるさと納税実施、今年は9月に集中かもしれません。
- ふるさと納税は毎年増加の一途を辿っており、特に昨年度は物価高騰で過去最高を更新したようです。
- 一方でこの制度の弊害がいくつか見られます。
- 一つは都市部自治体の税収が減少していることです。都市部には相対的に高額所得者が住んでおりふるさと納税額が多く、その分都市部の税収が減少し地域サービスに影響が出始めているようです。
- もう一つは経費です。今年9月に納税が集中する理由は10月から各運営業者のポイント付与が禁止されるからです。このポイントを含めた運営会社経費はふるさと納税額の13%を占めているようで、返礼品コストを含めると、自治体に残る金額は寄付額全体の約半分だそうです。
- また寄付は魅力的な返礼品を扱う自治体に集中しているようで、1700自治体のうち100自治体に寄付額の半分が集中しているそうです。
- さて、皆さんは今年のふるさと納税はいつ実施しますか?
【記事概要】
- ふるさと納税が拡大している。総務省が31日発表した2024年度の寄付額は計1兆2727億円と前年度比で14%増え、5年連続で過去最高を更新した。物価高を受けて家計の負担軽減のため始める人が増えており、コメを返礼品とする地方自治体への寄付が伸びた。
- 自分が応援する自治体に寄付すると、2000円を超える分を居住地に納める住民税や国の所得税から控除できる仕組みとなっている。自治体がお礼として地元の特産品などを贈る。返礼品目当ての利用も多く、仲介サイトでポイントを得られるため、ネット通販化しているとの指摘がある。
- 寄付件数は前年度比で微減の5878万件と、08年度の制度開始以来初めて減った。物価高で返礼品の調達費用が上がり、返礼品1件あたりの寄付額を引き上げる動きが相次いだためとみられる。
- 24年1~12月の寄付により25年度に住民税の控除を受けられる人は8%増の1079万人で、個人所得にかかる住民税の納税義務者のおよそ5人に1人となっている。
- 節約のために始める人は多い。仲介サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンク(東京・品川)が6月に実施したアンケート(複数回答可)によると、25年に始めた理由として「ポイントが付与される」(55.6%)や「家計の助けになると思った」(51.1%)が多かった。「故郷や応援したい自治体があった」は4.4%にとどまった。
- 24年度はコメの価格高騰の影響が目立った。「コシヒカリ」などを返礼品とする新潟県南魚沼市への寄付額は24%増の71億円で、全国の自治体で18番目に多かった。ふるさとチョイスでコメ全体の寄付額は4割増えた。
- 寄付額首位の自治体は兵庫県宝塚市で256億円だった。市立病院に向けた市民2人からの約254億円の寄付を含む。同市以外は人気の返礼品を扱うランキングの常連が上位を占めた。2位はイクラやサーモンなどを返礼品とする北海道白糠町(211億円)で、前年度から順位を2つ上げた。3位は大阪府泉佐野市(181億円)、4位は宮崎県都城市(176億円)だった。
- 寄付で潤う自治体は偏っている。ふるさと納税に参加する全国約1700自治体のうち、寄付額の上位100団体が総額の5割弱を占めた。消費者受けする返礼品の有無で寄付額に差がつきやすく、自治体への応援という制度本来の趣旨はかすんでいる。
- 10月1日から仲介サイトによるポイント付与が禁止される。寄付の申し込みは例年12月に集中するが、今年は9月に増える見通しだ。
- ふるさと納税は寄付額の増加に伴い、制度のゆがみも大きくなっている。総務省によると、2024年度に地方自治体が仲介サイト側に支払った費用は1656億円で、寄付額の13%に上った。返礼品の調達など他の経費を差し引くと、自治体の手元に残るのは寄付額の半分程度にとどまる。
- 総務省が仲介サイトに関連した費用を公表したのは初めて。負担の実態を明らかにし、サイト運営会社に過剰な手数料をとらないよう促す狙いがある。
- 24年度の募集にかかった経費総額は前年度比で9%増の5901億円だった。寄付額に占める割合は46.4%と2.2ポイント低下したものの、寄付の半分ほどが返礼品やサイト運営会社などに流れる構図が続く。
- 都市部ではふるさと納税による税収の流出が拡大した。25年度の市町村民税の控除額合計の全国1位は横浜市で、控除額は13%増えて343億円、控除適用者は7%増えて47万人だった。控除額に対して寄付の受け入れ額は小さく、差し引きで大幅な減収となった。2位は名古屋市の198億円、3位は大阪市の192億円だった。
- 都市部の税控除額が大きいのは、ふるさと納税を利用するメリットの大きい高所得者が多いためだとみられる。高所得者はもともと税負担が大きいため、より多くの金額を寄付して高額な返礼品を得ようという考えになりやすい。
- ニッセイ基礎研究所の高岡和佳子主任研究員はふるさと納税の弊害を抑えるには、募集経費の上限引き下げや税控除の縮小といった対策が必要だと指摘する。「まず国は利用者や関与する企業を含めた業界構造を把握すべきだ」と訴える。