対トランプ関税、日本のカード定まらず 通商戦略後手に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA289RB0Y5A320C2000000/
【コメント】
  • いよいよ4月1日からトランプ関税第二弾である自動車への25%の追加関税が実施されます。
  • これまで日本政府は日本は適応除外になるのではないかと思っていたようですが、トランプ大統領は当初から「例外なく」と言っており、どうして日本だけが例外になるのか疑問でした。
  • 昨日、経産大臣が事務方から「日本が除外となる確認が取れていない」との報告を受けたようですが呑気な話と感じます。具体的な強力な交渉上の対抗案があるならば別ですが、それも無いまま経産大臣が「よろしく」と言うために渡米しても全く意味がありません。企業側ももはや政府に頼ることは諦めているようです。
  • 日本の自動車産業の裾野が広いことは既知ですが国際競争力は低落傾向にあります。未だトヨタが販売台数首位を維持していますが他の日本メーカーはジリ貧です。最近は中国メーカーの台頭が目立っています。アメリカの高率関税の危機感を強めることも大切ですが、そもそもの製品競争力の強化が必須であると思います。
  • 効率関税が適用されても、米国人が日本車を買いたいと思える製品を作ることが基本で、フェラーリはすでに関税上昇分を米国内で値上げすることを発表しています。フェラーリのユーザーは富裕層であり、25%程度の値上げで買い控えをすることはないと思われます。
  • 5月には各国と他の製品に対する相互関税率が米国では適用されるとされており、自動車だけでなく日本からの様々な米国向け輸出品に高い関税がかかってくる可能性もあります。日本メーカーは、高関税がかかっても米国民が買いたいと思える製品を開発し続けること、および販売対象セグメント(所得層別)ごとに魅力的な製品を輸出することが重要と感じます。そもそも製品競争力があれば、強力な交渉カードになりますので。
【記事概要】
  • トランプ米大統領が2期目に就任してから2カ月が経過し、日本の経済外交が後手に回る場面が目立ち始めた。日本経済の屋台骨である自動車への25%追加関税が発表され、産業界には政府交渉への諦観も広がりつつある。
  • 「我が国の除外を確認するに至っていないという報告を先ほど事務方から受けた」。武藤容治経済産業相は28日の閣議後の記者会見で、トランプ関税を巡る日米の事務方協議が不調に終わったと険しい表情で明らかにした。協議には次官級の松尾剛彦経済産業審議官や赤堀毅外務審議官が参加した。
  • 協議の実施は武藤氏が11日にワシントンを訪れ、ラトニック商務長官らと合意したものだ。日本側は武藤氏の訪米から間髪を入れずに事務方による協議を求めていた。にもかかわらず、実現したのは米国が日本も含めて自動車関税の対象になると発表した後だった。武藤氏は今後の交渉方針について「必要な対応を粘り強く行う」と述べるにとどめた。力点は「関税発動後」に向き始めており、「国内産業や雇用への影響を精査し、資金繰り対策などに万全を期す」と強調する。
滑り出しは「百点満点」だったが…
  • トランプ氏就任後の2月7日、石破茂首相とトランプ氏の首脳会談は経済外交の順調な滑り出しを印象づけた。
  • すぐにほころびが見え始めたのはその直後だった。トランプ氏は2月9日、USスチール買収に関して「(日鉄が)過半出資することはない」と発言し、ボタンの掛け違いが明らかになった。一時は日鉄首脳とトランプ氏が早期に直接協議するとみられたものの実現せず、計画に進展はみられない。
  • 関税措置では、鉄鋼・アルミニウムに続き、日本の基幹産業である自動車への適用除外も得られなかった。経団連の事務方幹部は「首脳会談でトランプ氏と握れたのは安全保障の認識で、結果的に経済は成果につながらなかった」と肩を落とす。
トランプ2.0対策見えず
  • 経済界にはもはや政府の外交努力には限界があるとの諦観が広がる。経済同友会の新浪剛史代表幹事は21日の記者会見で「米国はどの国に対しても例外措置を取らないスタンスで、(経営者は)回避できないことを前提にプランを練るべきだ」と述べた。
  • 政府内で意見不一致も
  • 政府が一枚岩になりきれていない面もある。
  • たとえば、トランプ氏が関心を寄せるアラスカのLNG開発事業への日本企業の参加について、政府内には交渉カードの一つと見る向きもある。ただ、経産省の中でも資源エネルギー庁の幹部は「交渉材料として切って捨てるほどではないが、開発の難易度や高いコストといった懸念が拭えない」と難しさを吐露する。
  • 「ポーズだけでも対抗する姿勢を見せるべきだ」(経済官庁幹部)。関税の適用除外に向けて、事を荒立てまいと米政府に下手に出続ける外交姿勢には政府内で不満もくすぶる。
  • 首相は自動車の追加関税の発表をうけて27日、林芳正官房長官や岩屋毅外相、経産省幹部らを官邸に呼び、関係閣僚と協力・連携して政府を挙げて対応することなどを指示した。