トランプ相互関税、崩れる自由貿易 戦後秩序の転機に 日本24%、想定上回る
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250404&ng=DGKKZO87813630U5A400C2MM8000
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【コメント】
- 昨日、トランプ大統領は相互関税を公表しました。4月9日より実施されます。
- 日本も想定外の24%という高い関税率を提示されました。すでに実施に移されている鉄鋼や自動車以外の米国への輸出品にこの関税率は適用されます。この相互関税により、日本はもとより米国経済に大きなマイナスの影響が想定されます。
- 第二次世界大戦後、米国が率先して進めてきた自由貿易体制は昨日で終わった感があります。カナダ、EUなど西側諸国は怒りをあらわにし報復関税に踏み切る可能性を示唆しています。米国は、報復されればさらに再度関税率を引き上げる姿勢を見せており、西側諸国内でも危うい局面になりかけています。中国は近々確実に報復に出るとの噂がありますが、そうなってくると米国/中国/西側諸国のみつどもえの混乱が始まり、感情が昂ぶれば戦争に発展する恐れも否定できません。
- 米国以外の他国が説得してもトランプ大統領は持論を曲げないと思われます。方針転換を促する唯一の方法は、米国民が高関税による高インフレに耐えられなくなりトランプ大統領にNOを突きつけることです。
【記事概要】
- トランプ米大統領は2日、 全世界を対象にした相互関税を発表した。各国に一律10%の関税を課したうえで、国・地域ごとに異なる税率を上乗せする。米国は第2次大戦後、率先して関税を引き下げ、世界の貿易と経済をけん引してきた。今回の措置によって米国が主導してきた自由貿易体制は崩れ去り、世界秩序は転機を迎えた。
- 原則すべての国に課す10%の「基本税率」は5日、国ごとの「上乗せ税率」は9日にそれぞれ発動する。日本に計24%の税率を適用する。各国との報復の応酬につながる可能性がある。
- 相互関税は自由貿易の概念に真っ向から反する。関税を下げて貿易を促す「自由化」に加え、すべての国を同様に扱う「無差別」が原則だが、相互関税は高い関税を国ごとに個別にかける。
- 米国は戦前の保護主義やブロック経済が不況や戦禍を招いたとの反省から、戦後は自由貿易の旗を振ってきた。ブレトンウッズ体制の柱として世界貿易機関(WTO)の前身である関税貿易一般協定(GATT)を1947年に創設した。米国の平均関税率は当時の約8%から最低1%台まで低下した。
- 「相互互恵主義の原則を掲げながらも、米国と相手国の貿易関係は特に近年、著しく不均衡なものだった」。大統領令は戦後の自由貿易体制をやり玉に挙げた。トランプ氏は(1)米国が関税を下げれば貿易相手国も下げる(2)豊かになった国は米国経済にも利益をもたらす(3)米国に貿易赤字は生じない――という前提がすべて誤りだったとの持論を展開した。自由貿易が米国経済を繁栄させるどころか悪影響を及ぼしたとトランプ氏は認識する。北米自由貿易協定(NAFTA)によって500万人以上の雇用が失われたと副作用を訴えた。
- 自由貿易は軍事力と並んで米国主導の国際秩序をつくりあげた。米国が巨大市場を開放したことは、大戦で傷を負った日本を含む西側諸国の経済復興を後押しし、民主主義陣営の拡大と勝利につながった。
- 経済と安保で米国主導の秩序が変われば、中国やロシアなど権威主義国家を利することになりかねない。「米国第一」を貫く超大国とどう向き合い、新たな秩序を見いだすのか。日本を含む各国は重い宿題を抱え込んだ。