日米関税交渉、為替がカードに 財務相同士で議論へ 円安是正の思惑一致か
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250409&ng=DGKKZO87909640Y5A400C2EA2000
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【コメント】
- 昨日、日本株は大幅に反発しました。一方昨晩の米国株は冴えない展開でした。今朝6時現在の日経先物は昨日の終値より下がっていますので、再度32,000円を割れてくる時間帯もあると予想できます。
- 日米双方の株価の今後を予想する際に、過去の暴落時と現在を比較することが現在の下落のレベル感を測る上で一つの参考になります。過去の下落局面とは、ブラックマンデー、ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックです。
- まず米国株(S&P500)ですが、過去4回の暴落時と比較すると、下落率は過去4回に比べまだ低いです。過去は30〜60%の下落率でしたが、現在はたった14%です。またPER(株価収益率=企業の年間利益に対し株価が何倍か(何年分の利益が株価に織り込まれているか))も過去は下落後は10〜15倍であったのに比較すると現在はまだ22倍と高率(=株価が高い)です。またPBR(株価純資産倍率=企業が解散した価値と現在の株価の比率)も過去は1〜2倍でしたが、現在は4倍でこれも相当に高いレベルです。こういった指標から見るとS&P500はまだ下落余地が充分にあると言わざるを得ません。これまであまりにもS&P500が買われすぎてきた結果といえます。株の神様のバフェット氏が早々に一定の米国株を売却した先見性にはやはり脱帽です!
- 一方日経平均を過去の暴落時と比較すると、現在の下落率は18%と過去の25〜60%と低いですが、下落後の現在のPERは12倍、PBRは1,2倍程度で正常値といえます。下落率がさほどでもないにも関わらずPERとPBRが正常値となっている理由は、S &P500と比較すると日経平均はここ数年あまり買われてこなかった(上昇していなかった)からだといえます。下落率から見ると日経平均はまだ少し下落余地はありそうですが、今後下落していけばいくほど「割安」が際立ってくると思われます。今後の企業業績にもよりますが、いわゆるデイフェンシブセクターなどは関税影響は少ないと推察されますので、配当利回りの良好なデイフェンシブセクターの個別株の買い場が到来すると思われます。(投資は自己責任で!)
- 株予想の話が長くなりましたが、日本時間の今日午後から米国の新関税率が実施されます。今後日米間で関税問題の交渉が始まりますが、交渉材料の中にドル円為替レートがあるようです。ここ数年ドル高円安が進行しすぎたという日米の認識の一致があれば、政策的に円高ドル安誘導が起こる可能性があります。為替を政策的にいじっていくことになれば、関税政策とともに、自由主義(人為的な介入はせず価格や為替は市場に任せる)を否定する動きになります。交渉はここ数ヶ月(1〜2ヶ月?)で終わるのではないかと予想されますが、どうなることやら、、、です。
【記事概要】
- 日米関税交渉の材料に為替が浮上した。米国側が交渉の主導役に指名したベッセント財務長官は8日、非関税障壁などと並んで「通貨問題」を議論する構えを示した。日本は円安によるコストプッシュ型のインフレが続く。水準是正で思惑が一致する可能性がある。
- 日本側は8日、関税を巡る交渉で赤沢亮正経済財政・再生相を担当閣僚に起用した。ただ為替問題はこれまで通り、加藤勝信財務相が担う方針だ。日米の財務相同士で議論する体制を続ける。
- 米側の担当には米通商代表部(USTR)のグリア代表も含まれる。日本の財務省幹部は「ベッセント氏も例えば自動車のことは所管していない。通商は通商、為替は為替という形だ」と解説する。
- トランプ大統領は、米国の製造業の輸出競争力を低下させるドル高・円安をかねて問題視する発言をしてきた。日本は22~24年にかけて、日米金利差や投機筋の円売りを背景とした過度な円安を抑えるため、円買い介入を断続的に実施してきた。輸入物価の上昇を緩和するために、円安是正で折り合う余地はある。
- 日米で協調介入をしたとしても、為替市場は規模が大きく効果は見通せない。なにより「ドル安」誘導は、恣意的な為替誘導を禁じた主要7カ国(G7)の合意に抵触する。
- 20年に発効した自由貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」では、為替レートの操作を避けるといった条項がある。今後の交渉でこうした取り決めが参考とされる可能性もある。
- 一方でベッセント氏が交渉相手となったのは日本にとっては好都合な面がある。ベッセント氏は長官就任前はヘッジファンドの幹部を務めており、為替相場や債券市場などに明るい。かつては頻繁に来日し、日本の金融機関の幹部との面識もある。為替問題を財務相同士の議論に限定できれば、日本側の意向を反映しやすくなる。
- 実際に円安・ドル高を是正することになれば、日銀の金融政策にも好影響を及ぼす可能性がある。日銀は円安による国内の物価上昇に追われるように金融正常化を進めてきた。日銀内には円安是正でインフレの速度が緩やかになれば「利上げを判断する時間的な余裕が生まれる」との声がある。輸入物価の上昇を通じた物価高が和らげば、国民の負担や企業の仕入れコストの上昇が抑えられる。過度な円安傾向が是正され、実質賃金のプラス定着につながれば消費にも好影響を与え、日銀が目指す賃金と物価の好循環の方向性と一致する。
- もっとも日銀内には「程度問題」として過度な円高に進むことへの懸念もくすぶる。ある関係者は「為替は国際政治そのものだ。日米間の金利差は一因ではあるが、そんな単純なものではない。一気に何十円と円高が進む可能性はある」とみる。
- 財務省内にも「過度な円高になれば、企業の経営計画や業績の予見可能性が失われる」と危惧する声もある。円安による輸出企業の収益を押し上げる効果も剥落すれば、米国の関税引き上げとあわせてダブルパンチとなる。賃上げの機運もしぼみ、内需成長に向けた好循環が遠のく。