原発「脱炭素へ不可欠」  関電、美浜に新設調査発表 AI時代の電源整備
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20250723&ng=DGKKZO90193750T20C25A7MM8000
【コメント】
  • 今朝は、原発新設の記事が日経一面など数カ所の掲載されています。関電美浜に新設する意向とのことです。
  • 記事の各所にあるように、AI時代を迎え、多くの一般人がAIに話しかけ解を探る時代に加速度的に入っています。また電気自動車は現時点での普及は停滞していますが、技術の進歩が早くある時点で爆発的に普及していくと思われます。
  • これらにより今後の電力需要は旺盛ですが、一方で供給サイドは再生可能エネルギーが期待はされています。洋上風力や薄型太陽光発電(ペロブスカイト)が有力視されていますが、これだけでは需要に耐えきれません。
  • 地球温暖化は昨日も今日も我々肌身に感じる切実な問題であることから、火力系の発電は控えていくことにならざるを得ません。
  • こうなると原子力発電に本腰を入れるしか解はないと思われます。
  • 一方で、福島原発の事故やその後の廃炉遅延も忘れてはなりません。加えて使用済み核燃料の根本的処理方法も確立していません。
  • 原子力発電のコストは安いとの認識が一部にありますが、決してそんなことはありません。徹底した安全対策を施した新設コストや廃炉、使用済み核燃料の抜本的処理(再利用)にいくら費用がかかるのか誰も正確には予測できていません。これらを電気料金に正確に加算していくことは非常に重要であり、我々一般消費者は、AIやEVの快適性/利便性を享受する代償として負担する義務があると考えます。
  • とにかく「事故皆無の原発」が必須です!
【記事概要】
  • 関西電力の森望社長は22日、美浜原子力発電所(福井県美浜町)において、原発の建て替えに向けた地質などの調査を始めると発表した。新増設の具体的な動きは2011年の東京電力福島第1原発の事故後、初となる。再始動する新増設を、原発への信頼を取り戻し、人工知能(AI)時代の産業構造へ作り替える起点にしていかねばならない。(本社コメンテーター 松尾博文)
  • 森社長は記者会見で、「電力需要はデータセンターや半導体産業の急激な成長を背景に伸びていく。脱炭素を進めるためにも原子力は必要不可欠だ」と強調した。
  • 未曽有の被害をもたらした福島第1原発事故から14年。安全性を高めた新しい規制基準の下で電力会社は既存原発の再稼働を進めている。一方で電力需要増大や温暖化ガス削減に向けた脱炭素電源として、原発に対する視線は変わりつつある。
  • 電力広域的運営推進機関によれば、国内の電力需要は向こう10年で約6%増える。再生可能エネルギーを最大限伸ばす努力をあきらめてはならない。しかし、太陽光や風力発電の適地の偏りや、時間や天候で変化する出力の不安定性を考えると、再生エネだけでは力不足だ。
  • 原発には不断の安全への取り組みや、回復途上の国民の信頼という大きな課題が残る。原発の建設や運転に関わる人材が先細りしている問題もある。それでも選択肢として目を向けるときだ。
  • 既存原発の再稼働を進めても、いずれ設備としての寿命を迎える。新設に着手しても稼働開始まで20年単位の時間が必要だ。50年のカーボンニュートラル実現を約束する日本には、そんなに時間が残されていない。
  • 電力需要増大の象徴がAI普及を支えるデータセンターだ。日本ではデータセンターの9割が関東、関西に集中する。その需要増大に対応するには2つの方法がある。
  • 1つは原発や再生エネといった脱炭素電源が豊かな北海道や九州にデータセンターを集め、光ファイバーで必要なデータをやり取りする方法だ。電力の単位である「ワット」と、通信の単位である「ビット」をつなげて「ワット・ビット連携」と呼ぶ。
  • もう1つの道は、データセンター需要が集中する大都市圏で、大量かつ安価な脱炭素電力を供給する力を高めることだ。関電の美浜原発での建て替えはこれにあたる。
  • 重要なのはワット・ビット連携や、美浜原発の建て替えを、AI時代の産業構造転換に弾みをつけるために戦略的に活用していくことだ。
  • 米国では巨大IT事業者が自社のデータセンター用に原発から直接電力を買ったり、原発に隣接してデータセンターを置いたりする動きが広がりつつある。同様の取り組みは、日本では難しい。発電事業者は電力を需要家に平等に売らねばならないルールがあり、原発立地地域や特定の顧客だけに電気を安く売ることは原則できない。
  • そこでデータセンター事業者が今後、新たな原発の建設・運営に参画し、一定の電力引き取りを確約するといった選択も可能にしてはどうか。より安い地点を求め移り気なデータセンター事業者を、国内につなぎとめる材料になるはずだ。
  • こうした仕組みを整えることが、原発が立地する地域の電気料金を下げるなど恩恵を目に見える形にする早道でもある。