資産管理会社というものをご存じでしょうか?

資産管理会社は、不動産や資産形成を行っている人が、

自身の資産を管理する目的で設立する会社のことをいいます。

自身で設立し、自身の保有する資産を効率よく運用・管理するためだけに業務を行うため、「プライベートカンパニー」と呼ばれることもあります。

 

では、資産管理会社には、いったいどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

 

今回は資産管理会社のメリット・デメリットを中心に解説していきます!

 

どんな人が作る?

資産管理は個人でも可能ですが、税制面や後述のメリット(後述)を踏まえると資産管理会社を設立・活用することで多くのメリットを享受できます。

そのため、下記に該当する方は資産管理会社の設立を検討することをお勧めします。

✓不動産事業等の資産運用を行っている方

✓相続の発生が見込まれる資産家の方

 

メリット

では、具体的に資産管理会社の設立により、どのようなメリットがあるのでしょうか?

主なメリットは、以下3つです。

・税率面

・所得の分散

・相続面

 

【税率面】→法人化により税率が低くなる!

 

個人の儲け=所得にかかってくる所得税は、

超過累進税率といって「所得が多くなるにつれ、税金を高く!」という制度が採用されています。

そのため、個人の場合は所得額が多くなるほど税率が高くなり、住民税を含めると最大55%の税率がかかります。

一方、法人の場合は所得に対し、最大33%程度で済みます(※資本金1億円以下、東京都の場合)。

そのため、「ある一定の所得額」を超えると所得税額より法人税額の方が低くなります。

所得額が概ね700万円を超える人は、こちらの税率面でのメリットを享受できます。

また、経費面についても個人事業主では計上できなかった旅費日当が計上できる等、法人設立によるメリットがあります。

 

詳細はこちらのブログもご参照ください。

 

【所得の分散効果】→家族への給与支払で税額が低くなる!

前述の通り、所得税は所得が多くなるにつれ、税金負担が増加します。

そのため、1人の所得に寄せるよりも、家族に給与を支払う等、

数名に所得を分けたほうがトータルの税負担額は少なくなります。

この点、個人事業主でも一定の手続きを行うことで、家族に給与を支払うことができます(専従者給与)。

しかし、専従者給与を支払った場合は扶養控除が利用できず、

また、1年のうち6ヶ月超事業に専ら従事していることが要件に求められます。

白色申告 青色申告
経費として認められる額 配偶者の場合:86万円

配偶者でない場合:一人につき50万円

支払った給与額全額
事前届出 不要

(確定申告時に、確定申告書にて必要事項の記載)

「青色事業専従者給与に関する届出書」を、

その年の3月15日までに税務署に提出

要件 以下全てに該当する場合

・白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。

・その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。

・その年を通じて6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること。

以下全てに該当する場合

・青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。

・その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。

・その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。

 

一方、法人の場合、会社と経営者は別々と考えられ、

家族への給与は原則として経費にでき、所得税において配偶者控除も使用できます。

そのため個人事業主(青色申告)のように事前届出等は不要となります。

また、家族への給与を支払うことで、ご家族は給与を相続税納税資金に充てることができます。

 

ただし、家族を役員とした場合には注意が必要です。

役員報酬については毎月同額or事前確定届出を提出していないと、法人税法上損金にできません(国税庁HP)。

この月は60万円、翌月は20万円というような変更はできませんのでご注意ください。

また、不相当に高額の場合は税務調査で否認される可能性もありますのでご注意ください。

詳細はこちらのブログもご参照ください。

 

 

【相続面】→遺産分割協議が円滑に!

資産家の方にとって、最も関心があるものの一つが相続です。

 

相続税評価額上、現金は実態通りの評価がなされる一方で、

不動産は実勢価格よりも低い価格で評価されるため、資産家の方の資産構成は不動産の割合が多いです。

資産を個人で保有されたまま資産家の方がお亡くなりになりますと、

お亡くなりになってから10か月以内という短い期間内に遺産分割協議を取りまとめる必要があります。

遺産の多くが不動産の場合は、分割しにくいことや、

現金を相続しているわけではないので不動産を相続した際に生じる相続税を支払えない等の理由から、遺産分割で揉めることが多いです。

 

この点、不動産等の資産を資産管理会社で保有している場合、

遺産分割対象になるのは資産管理会社の株式であるため、分割は不動産よりも容易であることが多いです。

また、前述の通りご家族を従業員として給与を支払うことで、

給与を受け取った側は株式を相続した際の相続税の納税資金にあてることができます。

 

また、相続対象が不動産の場合よりも、資産管理会社の株式のほうがさらに低い価格で評価することが多いです。

(資産管理会社株式の相続税評価額についてはここでは割愛させていただきます。)

デメリット

一方、法人設立によるデメリットもございます。

具体的には下記2点です。

・法人設立に費用が発生

・赤字でも生じる均等割や税理士等への顧問報酬の発生

こちらは下記ブログをご覧ください。

 

資産別!個人と資産管理法人、どちらで運用するのがいい?

さて、一概に資産とはいっても様々なものがあります。

ここでは以下3点にわけて、個人で運用する場合と、法人で運用する場合の相違点を整理していきます。

・株式の場合

・不動産の場合

・仮想通貨の場合

 

【株式の場合】

→税率面でみると個人所有に軍配!年度末の評価替えも不要!

個人の場合、株式の譲渡益にかかる税率はどんなに所得が多い方でも一律20.315%※です。

※上場株式の場合

個人で株式を運用する場合、所得税が課されるのは実現した譲渡益です。

そのため、実現していない利益(いわゆる含み益)に税金は発生しません。

そのため、法人と違い、年度末の含み益を所得にいれる「評価替え」は不要です。

 

この点、法人で運用する場合の税率は33.58%です(資本金1億円、所得800万円超の場合)。

また、含み益に対しても課税されるため、実際に売却しておらず手元にキャッシュがない中での納税が必要となり、評価替えも必要になります。

法人での株式運用 個人での株式運用
税金面 メリット ・他の所得と損益通算可
・繰越欠損期間が長い(10年)
・税率が低い(約20%)
・評価損益は課税対象外
デメリット ・税率が高い(約33%)
・評価損益を税務上も所得計算に反映
・他の所得と損益通算不可
・繰越欠損期間が短い(3年)
手続き面 メリット なし ・確定申告不要
・損益集計不要
・口座開設に制限なし
デメリット ・確定申告必要
・損益集計必要
・口座開設に制限ある場合あり
なし

 

 

詳細はこちらのブログをご覧ください。

 

【不動産の場合】

→相続や、税金面をふまえると法人保有に軍配!

個人の場合、不動産所得が赤字であれば給与所得と相殺ができ、所得税額が少なく済むというメリットがあります※。

※ただし、赤字の要因が減価償却費等のキャッシュアウトを伴わない経費によるものでない限り、資産構築としては売却する等の検討が必要になるかと思います。

ただし、不動産による所得が発生している方で所得額が多いかたは、不動産所得に対し最大55%(住民税含む)の税率が課されます。

また、短期(購入から5年)で売却した場合には譲渡益に高い税率が課されます。

 

一方、法人の場合は33.58%です(資本金1億円、所得800万円超の場合)。

また、相続面においては前述の通り資産管理会社で保有していた方が遺産分割協議面や相続税評価の面で有利です。

 

不動産所得についてはこちらのブログもご参照ください。

 

【仮想通貨の場合】

→税率面で見ると法人所有に軍配!

仮想通貨により生じた所得は、個人の場合、雑所得として総合課税の対象になります。

つまり、所得により最大55%(住民税含む)の税率が課されます。

また、損失が発生した際は雑所得内での相殺にとどまるので、不動産所得のように給与所得と相殺できません。

 

この点、法人の場合は33.58%です(資本金1億円、所得800万円超の場合)。

また、法人で生じている他の所得と相殺することが可能です。

仮想通貨による雑所得が毎年700万超見込めるようであれば、仮想通貨の運用を目的とした資産管理会社の設立を検討するといいでしょう。

 

資産の種類 個人所有or法人所有?
株式 個人
不動産 法人
仮想通貨 法人

設立時は個人の譲渡所得に注意!

さて、資産管理会社の設立に際は、自身の資産を法人に移管することになります。

方法としては、「売却による所有権移転」と「現物出資による所有権移転」がありますが、

「現物出資による所有権移転」は会社法上様々な規制があり、また、税制面でもあまりメリットがないのでここでは割愛させていただきます。

 

 

売却による所有権移転

資産管理会社※への売却による所有権移転の際に重要なのは、「いくらで売るか」です。

※資産管理会社は同族会社であることがほとんどですので、以降は資産管理会社=同族会社として説明していきます。

 

個人が法人に不動産を売却する際は、原則「時価」で売却する必要があります。

 

仮に時価よりも低い金額で売却した場合には、法人側で、時価と売却額の差額に法人税が課され、個人でもみなし譲渡として所得税が課されます。

また、時価よりも高い金額で売却をした場合には、役員の場合は役員賞与として課税、役員出ない場合には一時所得として課税されます。

 

そのため、個人が法人に不動産を売却する際、「時価」で売却することをお勧めします。

ここでいう時価とは各種ありますが、

実務上、

土地:相続税評価額を0.8で割り戻した価額や直近の近隣取引相場、

建物:帳簿価額(帳簿価額が1円等の場合は固定資産税評価額)を用いる形となります。

ただし、保有する不動産の金額が多額である場合や、特殊な土地である場合には、

不動産鑑定士による鑑定評価額を合わせて活用することをおすすめします。

 

売却価額と簿価に差額が発生している場合には、確定申告を忘れないようにしましょう。

まとめ

いかがでしょうか。

今回は資産管理会社のメリット・デメリットについてまとめました!

不動産は金額規模が大きくなりやすいので、

資産管理会社の設立には顧問税理士等の専門家への相談をお勧めしています。

 

Takeoffer会計事務所は会計処理から税務相談まで幅広いアドバイスを行っております。

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