以前こちらの記事で、「税金面からみる適切な法人化のタイミング」をご紹介しました。
上記にて、一定の所得額を超えた場合、および消費税の免税期間を踏まえた法人化タイミングについてご紹介していますが、法人化により様々なデメリットも発生します。
今回は法人化することによるデメリットを紹介いたします。
ご自身の事業の状況を踏まえ、法人化するか、個人事業主として業務を行うかを総合的にご検討ください。
目次
【法人化のデメリットは、費用の増加と事務手続煩雑化の2点がポイント!】
法人化した場合のデメリットは、大きく分けて以下の2点です。
Ⅱ 事務作業の煩雑化
【Ⅰ費用の増加:①設立初期費用がかかる!】
法人設立には設立費用25万円と資本金の払込が必要となります。
(※株式会社の場合)
設立費用の内訳(約25万円)
・公証人役場で必要な費用
定款印紙代40,000円+公証人への定款認証手数料52,000円
・法務局で必要な費用
登録免許税150,000円
・その他
会社の印鑑作成費用、個人の印鑑証明書取得費用、設立後の謄本(履歴事項全部証明書)、法人の印鑑証明書取得費用等
設立に必要な登記手続きについてはこちらをご確認ください。
資本金の払込
2006年の商法改正の一環で、資本金の最低金額制度がなくなり、
1円の資本金でも株式会社の設立が可能となりました。
しかし、資本金は、「資本金と資本準備金の違いって?払込金額の1/2は資本準備金へ! ~経営者が知っておきたい、資本金の話~」にて記載している通り、事業を行うための元手です。
資本金は、法人登記簿に記載される金額であり、誰でも確認することができます。
そのため、企業の規模や体力の目安になり、金融機関からの融資を受ける際や、取引先との取引に際し、信用力に大きく影響します。
よって設立時資本金が1円では金融機関や取引先からの信用力が低く円滑な事業活動を行うことが出来ません。また、設立後に資本金額を増額することも可能ですが、その際には、別途手続きと最低3万円の登録免許税が発生します。
そのため、設立時資本金は、最低でも1,000,000円を確保することをおすすめしています。
また、設立手続きを専門家に依頼する場合には別途報酬が発生します。
個人事業主として事業を開始する場合は、税務署への開業届出等の提出のみで完了するため、手間も少なく費用も掛かりません。
【Ⅰ費用の増加:②毎年の固定費が増加!】
法人化すると、固定費として住民税均等割、税理士への支払報酬、社会保険料等
が発生します。
住民税均等割(約7万円/年)
法人税、事業税及び住民税(法人税割額)は所得≒利益に課されるため、赤字の年はこれらの税金が発生しません。
一方、住民税の均等割額は事務所や事業所が所在することで課税されるため、赤字でも払う必要があります。均等割額は自治体によって異なりますが、年額約7万円です。
なお、事業所が異なる自治体に複数ある場合には、それぞれの自治体ごとに当該均等割額約7万円が発生します。
なお、資本金額が1億円を超えると、赤字でも事業税の外形標準課税が発生します。
(参考:東京都主税局HPhttps://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/info/gaikei-01.html)
一方、個人事業主であれば事業が赤字でその他の収入がなければ、所得税・住民税ともに発生しません。
税理士への支払報酬
個人事業主の場合も確定申告を行う必要がありますが、法人の場合はより複雑な様式の申告が必要となり、多くの場合は、税理士へ決算申告手続きを依頼することになります。
確定申告の場合は事業主自身で申告業務を行うことが可能ですが、法人化した場合は作業が困難ですので固定費として発生するものと考えたほうがいいでしょう。
社会保険料等(人件費×約15%)の発生
法人化すると、役員のみの場合でも、従業員が一人しかいない場合でも、
役員のみの場合は以下①のみ、
従業員を雇っている場合は以下①~③への加入が必要となります。
- 健康保険、厚生年金保険、介護保険(40歳以降発生)→会社が約半分を負担
令和2年4月以降の料率はこちらをご確認ください。
- 雇用保険→会社が一部を負担
令和2年度の料率はこちらをご確認ください。
- 労災保険→会社が全額を負担
令和2年度の料率はこちらをご確認ください。
個人事業主においても国民健康保険、国民年金は発生しますが、法人化することで厚生年金保険への加入や事業主負担の社会保険料が発生することは事業主にとって大きなコスト増となります。
【Ⅱ事務作業の煩雑化:①経理業務、人事・労務業務が増加!】
上記にも記載しましたが、法人化すると決算申告手続きが複雑化するため経理業務が増加します。
また、社会保険等の加入義務が発生し、従業員の変動や報酬額の変動、本店移転等の都度、関連する手続きが必要となります。
なお、これらの業務は専門家に依頼することで削減可能ですが、費用が発生します。
【Ⅱ事務作業の煩雑化:②廃業手続が複雑!】
個人事業主の場合、廃業手続きは税務署へ廃業届を提出するだけで完了します。
一方法人化している場合は、会社法に従い、株主総会の特別決議(解散の承認・清算人の選任)、法務局の法人登記を抹消する登記手続、税務署等への解散の届出、官報への解散公告、従業員を解雇した場合は雇用保険や社会保険の手続き等、様々な手続が必要となります。
その費用は、専門家への報酬を含め40万円~50万円程となることも少なくありません。
※廃業ではなく、「休眠」させたい場合は税務署等へ休業届を提出することになります。
廃業のような解散登記が不要のため上記費用はかからず、自治体によっては法人住民税の均等割額(約7万円/年)も発生しませんが、休眠中であっても納税義務がなくなるわけではないので、税務申告が必要になります。さらに、休眠中の場合でも役員の任期満了時には役員変更登記が必要となります。
【まとめ】
法人か個人事業主か、というテーマでは前回「税金面からみる適切な法人化のタイミング」というブログを掲載しました。
こちらでは、一定の所得額を超えた場合、および消費税の免税期間を踏まえた法人化タイミングについてご紹介していますが、法人化することによるデメリットがあるのも事実です。
法人化するか、個人事業主として事業を継続するか、総合的な判断すると良いでしょう。
Takeoffer会計事務所は会計処理から税務相談まで幅広いアドバイスを行っております。
何かありましたら、お気軽にご相談ください。