日本製鉄、USスチール買収完了 2兆円払い込み終え完全子会社化
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1893U0Y5A610C2000000/
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【コメント】
- 個別企業の記事ですが、日本にとっても大きな話題ですねで掲載します。
- ついに日本製鉄が2兆円でUSステールの買収を実行しました。巨額です。
- 最高経営責任者(CEO)や最高財務責任者(CFO)など経営中枢メンバーを米国籍とすることに加え、米国政府が介入する権限を保有した買収です。
- USステールは、ペンシルベニア州ピッツバーグにあり、約15年前に私も同地で米国籍の原子力事業会社にCFOとして駐在していた際に同企業の施設を目にしていました。ピッツバーグは、医薬品業界の研究所が多く進出しており、昔の鉄鋼の街の様相は少し薄れてはいますが、まだまだUSステールの影響は大きい街です。ちなみにピッツバーグには、医学部で有名なピッツバーク大学に加えカーネギーメロン大学という理工系に強い有名大学があり、これがピッツバーグで製鉄業や原子力事業が発展した理由の一つでもあるようです。
- 私がCFOをしていた原子力事業会社も、米国人に経営を任せることを前提に日本企業が買収し、CFOは日本人がとりましたがそれ以外の幹部は全て米国人でした。個々の米国人はとても気さくで良い人々ではありましたが、日本の親会社への忠誠心は薄く、経営の方向性が合致しないことが都度でした。
- 日本製鉄もUSステールの経営で苦労する恐れがあるかもしれませんが、上手く運営していくことを期待したいと思います。
【記事概要】
- 日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収が18日、正式に完了した。買収に必要な全ての手続きのほか約141億ドル(約2兆円)にのぼる買収費用の払い込みを終え、USスチールは日鉄の完全子会社となった。米大統領選が絡み政治問題化したことで発表から1年半を要したが、日鉄が一貫して求めた100%子会社化で買収劇は決着した。
- 日鉄は1株55ドルで、USスチール株を全株取得した。USスチールは同日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)を上場廃止となった。USスチールは日鉄子会社でニューヨーク州の法人である「Nippon Steel North America」の傘下に入る。米東部ペンシルベニア州ピッツバーグに本社を残すほか、社名も維持する。
- 日鉄は同日、今回の買収計画を統括してきた森高弘副会長兼副社長が、USスチールの取締役会長を兼任することも発表した。あわせて米政府に発行する「黄金株(拒否権付き種類株式)」の詳細も明らかにした。黄金株は1株でも経営の重要事項について拒否権を有する種類株式となる。米政府とは「国家安全保障協定」も結んでいる。
- 日鉄によると、協定と黄金株による権利事項のなかに、米政府がUSスチールの取締役1人の選任権を持つことが盛り込まれた。最高経営責任者(CEO)や最高財務責任者(CFO)など経営中枢メンバーを米国籍とすることも定められた。
- 日鉄は今後、2028年までに総額で約110億ドルをUSスチールに投資する計画だ。日鉄は米国の競争法上の懸念を払拭するため、米鋼板製造のAM/NSカルバート(アラバマ州)の保有持ち分を合弁相手である欧州鉄鋼大手アルセロール・ミタルに1ドルで譲渡することを既に決めている。持ち分譲渡に伴い、2300億円の損失が発生する見込み。
- こうした巨額の投資に見合う収益を得られるかが、今後の焦点となる。日鉄はUSスチールを通じて米国に大規模な生産拠点を確保し、日本からの輸出に頼らず需要地で製造した高級鋼を供給できるようになる。投資で新たな製鉄所の構築も予定する。
- トランプ政権は4日に米国内産業保護のため、鉄鋼・アルミニウムの輸入品にかける追加関税を25%から50%に引き上げた。関税の影響を受けない現地拠点で日鉄の技術力を投入して、米国が大半を輸入に頼ってきた高級鋼などの需要を取り込む狙いだ。
- 日鉄は23年12月にUSスチールを買収する計画を発表した。だが、24年の米大統領選が絡んだこともあり、政治問題化した。バイデン氏は25年1月、大統領退任前に買収計画の中止命令を出した。日鉄側は中止命令を出したバイデン氏と米政権を提訴するなどし混迷が続いた。
- 政権交代し大統領に就いたトランプ氏が省庁横断組織の対米外国投資委員会(CFIUS)に異例となる再審査を指示したことで、米政府との交渉が再び動き始めた。
- 日鉄は19日午前、橋本英二会長兼CEOと森氏が出席して記者会見を開き、一連の経緯や今後の戦略を説明する。