事業が安定し、会社に資金が貯まってくると

「余ったお金、何に使えばいいんだろう?」

「会社から個人のほうにうつせないかな?」

という質問をよくいただきます。

 

今回は、余剰資金の使い道をご紹介します!

※当該ブログは株主=代表者のみである同族会社を前提にしています。

代表者の所得を増やす?会社のために使う?

余剰資金の使い道は、大きく分けて
「代表者にお金をうつし、代表者の所得を増やす方法」、
「会社のために使用し、事業を大きくする方法」の2つがあります。

【参考💡】役員報酬って自由に決めていいの?
代表者(代表取締役)は善管注意義務・忠実義務を負い、会社に対して損害を与えると損害賠償責任を負います。
また、役員報酬を代表取締役自身で決定することはできず、
株主総会決議が必要となります(定款の規定によることもできますが、実務上は稀です)。
この点、本記事の前提である、代表取締役が100%株主であるようなオーナー企業である場合、
報酬を決定する株主総会の出席者は100%株主である代表取締役自身です。
そのため、オーナー企業の場合は役員報酬をオーナー自身で自由に決定することができます。

 

代表者にお金をうつすことによるメリット・デメリット

代表者にお金をうつすことには、以下のメリット・デメリットがあります。

<メリット>

・代表者にお金を移すことで、個人で自由に運用できる。

※法人で証券口座等を解説する場合は手間がかかる。

 

<デメリット>

・役員報酬や配当として会社→代表者へ払い出した場合、代表者側の税・社会保険料負担が増加する。

・役員貸付(会社から代表者への貸付)※とした場合、決算書に役員貸付金が残るため、融資の際に不利に。また、認定利息の計上が必要。

※役員貸付を長期間返済していない場合、税務調査で役員賞与では?と指摘されることもあります。

 

会社のために使用することによるメリット・デメリット

会社のために使用すると、以下のメリット・デメリットがあります。

<メリット>

・従業員に還元した場合には従業員のモチベーションアップが見込める。

・広告宣伝費や必要な設備投資に使用することで事業拡大が見込める。

 

<デメリット>

・不必要な支出をした場合は収益獲得に結び付かず、利益率を低下させることに。

例:事業規模に見合わない社用車(高級車)の購入等

 

代表者の所得を増やすのと、会社のために使うのはどっちがいいの?

代表者個人の所得を増加させるのも大事ですが、

事業拡大・会社の健全な運営のためには余剰資金は会社のために使用したほうが有益なことが多いです。

そのため、余剰資金の使い道としてTakeoffer会計事務所では

代表者個人の所得を増加させるのは一定程度におさえ、会社のために使用することを推奨しています。

具体的な検討として、Takeoffer会計事務所では以下①~③の順で検討し、それでも残った場合は会社資金としてプールすることを推奨しています。
会社に資金が貯まっていれば、事業拡大や新事業を手掛ける際に動きやすくなります。

また、参考までに④~⑥もご紹介します。

①実質的にキャッシュアウトを伴わない経費計上や節税を実施(会社&個人のため)

②キャッシュアウトを伴う節税(課税の繰り延べ)等を実施(会社&個人のため)

③人件費を増加し社員に還元、広告宣伝費等に使用(会社のため)

(参考)

④会社の余剰資金を個人に移して運用を検討(個人のため)

⑤貯蓄性の高い保険商品の購入検討や、航空機リース投資の検討(会社&個人のため)

⑥法人としての株式運用(個人のため)

 

①実質的にキャッシュアウトを伴わない節税を実施

→網羅的な経費計上、旅費日当の計上、所得のないご家族への給与支払等

(効果・特徴)

所得税や社会保険料を増加させることなく、代表者世帯の手取り額を増加させることができます。

また、会社+代表者で見たときに、会社→代表者へ余剰資金を払い出しても税金増や社会保険料増といったキャッシュアウトをともないません。

なお、所得のないご家族への給与詳細はこちらをご覧ください。

 

②キャッシュアウトを伴う節税(課税の繰り延べ)等を実施

→妥当な水準までの役員報酬計上や、必要な設備投資、経営セーフティー共済等を実施。

(効果・特徴)

役員報酬を増やしすぎると、個人の所得税や社会保険料が増加してしまうため妥当な水準までにとどめることで、個人の所得と法人所得のバランスをとりましょう。

 

また、必要な設備投資に余剰資金を使用することで事業拡大を見込めます。

経営セーフティー共済は掛金を全額経費にでき、40か月以上加入すれば元本割れは生じない制度です。

解約時の返戻金は法人の収益になるので、解約と設備投資を同じ期に行うことや退職金のかわりにすることで、返戻金受取時の税金を圧縮できます。

参考:経営セーフティー共済

 

③人件費を増加し従業員に還元、広告宣伝費に使用

(効果・特徴)

人件費を増加し従業員に還元することによる従業員のモチベーション向上、

広告宣伝費に使用し事業拡大(今後の会社拡大を前提としています)を見込めます。

 

(↓以降、参考)

④会社の余剰資金を個人に移して運用を検討

(効果・特徴)

上述の通り、役員報酬で引き出す場合も配当として引き出す場合もプラスで税金が発生しますので、明確な資金使用目的がない場合はあまりお勧めできません。

それでも個人に移したい場合は、役員報酬を設定もしくは増額という形で移す形になります。

役員報酬vs配当の比較については下記ブログをご参照ください。

 

⑤貯蓄性の高い保険商品の購入検討や、航空機リース投資の検討

(効果・特徴)

貯蓄性の高い保険の経費計上は改正により制限されましたが、要件を満たすことで保険料の一部を経費計上して所得を圧縮できるものもあります。

また、航空機リース投資等は固定資産の減価償却費同様課税の繰り延べを行うことができます(あくまで課税の繰延なので、意味のない支出のものも多いです)。

 

保険、航空機リース投資については下記ブログをご参照ください。

 

⑥法人としての株式運用

(効果・特徴)

法人として証券口座を開設し、株式を運用するという方法もあります。

しかし、法人として株式を運用すると税率が高く(法人約30%、個人20%)、

また、個人と異なり含み益に対しても課税されてしまいますので、

株式投資に使用する場合は一度個人に資金を移してから個人で株式運用されることをお勧めしています。

なお、その際は「法人から役員への貸付」ではなく「法人から役員への報酬」または「配当」を取る形となります。

 

法人・個人、どちらで株式運用をするべきかは、こちらのブログをご覧ください。

まとめ

いかがでしょうか。

今回は余剰資金の使い道を紹介しました。

Takeoffer会計事務所では

以下①~③の順で検討し、それでも残った場合は会社資金としてプールすることを推奨しています。

①実質的にキャッシュアウトを伴わない経費計上や節税を実施(会社&個人のため)

②キャッシュアウトを伴う節税(課税の繰り延べ)等を実施(会社&個人のため)

③人件費を増加し社員に還元、広告宣伝費等に使用(会社のため)

Takeoffer会計事務所は会計処理から税務相談まで幅広いアドバイスを行っております。

何かありましたら、弊社のお問い合わせフォームよりご連絡ください。